202話 勝負の行方
プラメアとの試合が開始されてからかれこれもう30分は経過しただろうか。あれから一進一退の戦いを繰り広げていたがお互いに決め手に欠け中々勝負が決まらず体力の消耗だけが続いた。湧き上がっていた会場内も今やどちらに軍配が上がるのかと固唾を呑んで見守っている
浮遊していた剣はあの後追加で二本破壊する事が出来たが、まだ七本もある上に操る剣が減ったせいか攻撃の鋭さが増してきているように思える
しかし戦っている間にも浮遊剣のある点に気づくこともできた。プラメアが操作している剣、宙に浮かしていたのは確かに10本だったが実際に同時に動かすことが出来ているのはその半分の5本までで動かしている間他の剣は止まっているというのが戦っていて分かった事
気づかれないよう上手い具合に隠されていたようで気づくのに遅れてしまったが仕組みが分かれば対策は立てやすい。意識を向ける数を減らせれば次どの剣を動かしてくるのかおおよその予測をつければ攻撃を躱しやすくなる
始めと違い私の動きが変わった事にプラメアも勘づいた様子だった
「プラメアさんが全ての剣を同時に動かすことが出来たならお手上げでしたけどこれ位なら対応出来ますよ」
「この試合だけで儂の弱点に気づくとは流石じゃのぉ。そうこなくてはな、ならば戦い方を変えよう」
そう言うとプラメアは残っている剣を周囲に張り巡らした攻撃のパターンを変えてきた様だが見た感じ攻撃に使う為に移動させたわけではなさそうだ
何を仕掛けてくるのかと警戒していると突然プラメアは跳躍し自身が空中に留めておいた剣の上に乗りだした。今まではただ剣を飛ばして攻撃防御のみに利用していたがそれに加え宙に舞う剣を足場としても利用し始め縦横無尽に飛び回る。プラメアなら自分の身長より大きい剣の上に乗ることは容易だろうが飛び回る姿はまるでお猿さんのようだ
なんて事を考えている暇もなく速度が一段、また一段と跳段々と上昇していく。ここに来て今までで一番速い、自然エネルギーというものの扱い方はまだ完全に理解出来ていないが、恐らくそれを応用しているのか全身に行き渡らせていた力を脚に集約させて速度を高めているのだと推測
「スー・・・ハー・・・」
これ程の速さとなると五感だけで捉えるには限界がある。私は二刀流からいつものスタイルへと戻し目を瞑って余計な情報を遮断。ユリウスさんと戦った時と同じように心眼、第六感を用いてプラメアに対抗する
最早誰も目で追うことが出来ないプラメアは限界まで加速した刹那、私の眼前まで距離を詰めて来て攻撃が放たれた。その一閃を間一髪のところで受け止める
普通に迎え撃っていたらまず間違いなくまともに食らって倒されていただろう。凄まじい衝突によって会場に剣音が響き渡り剣と剣が激しく交じり合って火花が散る
「ぐっ・・・!」
プラメアの剣が私の脇腹に入り血が地面に溢れ落ちる。自分の攻撃が受け止められると察したのか直前に剣の軌道を変えられてしまったようで完全には受け止めることが出来ず少し入れられてしまった。しかし勢いを止めることは出来たので飛び散った血の割にはそこまで深いキズにはならなかった
傷を負わされてしまったが軌道をかけたことによってプラメアにも私の剣が届きダメージを与えることが出来たので痛み分けといったところか
しかし今の攻撃を受けたせいか腱を痛めてしまったようで上手く力が入らない上に手の感覚があまりない。今の状態で打ち合えるのはもう一、二合程度だろう
次の一手で決めないと勝利はない、そう思っていた矢先にプラメアがふと私に声をかけてきた
「のぉエレナ、そろそろ互いに体力の限界が近づいてきたじゃろうし次で決めんか?」
「ふふっ、奇遇ですね。私も同じ事を考えていました。この通りボロボロですし剣も振れて数振りが限界。その提案喜んで受けましょう」
勝負している相手にバカ正直に限界を伝えるなんて真剣勝負であれば愚の骨頂、だが嫌いじゃない
今の私が使える剣技、手の感覚があまりない状態で力が必要な技は無理だ。となると・・・
「エレナ~!がんばれ~!」
「ラミアス・・・」
今まで一言も声をかけてくれていなかったラミアスが声援を送ってきた。会場中に響き渡る程の甲高い大声が体に喝を入れてくれたように力が湧いてくる
私は剣を鞘に収め柄に手をかけたまま相手へと目を向けた。川の流れに身を任せるように全身を極限まで脱力させ心を落ち着かせる
プラメアもそれを見て構えに入り一気に圧が跳ね上がる。最後の一滴まで振り絞ろうという気迫がこちらにまでビンビンと伝わってきた。もう小細工をするつもりもないのだろう、浮遊していた剣は全て地に落ちていた
互いに間合いをはかり自分の技が最も有効となる場所を探る。そして僅かな静寂が終わりを告げると最後の勝負がやってきた
「雷閃剛撃!」
「流水」
雷鳴の様な音を響かせながらこちらに向かって踏み込んで来るプラメア。先程の速度に加え威力も段違い、同じ系統の技で対抗したら歯が立たないだろう
相手の技を剛とするなら私の技は柔、相手の攻撃を利用してカウンターで仕留める技。相手の技が強力な程こちらの技もより力を発揮する。あれだけの技となると決めるのは至難の業となるだろうが
プラメアが目の前まで来て剣が振るわれるまで時間がいつもよりゆっくりと流れているようで永劫にも感じた。しかし勝負は一瞬で片がついた。僅かな差であったがプラメアの剣は私に届くことはなくこちらの剣が彼女の喉元に届いた
「はぁ~・・・負けじゃ負けじゃ!悔しいのじゃ!」
長い戦いに幕が下りるとプラメアはその場に倒れて空を見上げて悔しがっていた。私も疲労で立っているのも億劫だったのでその場に座り込む、
会場からは歓声が上がっていて応えるべきなんだろうがそんな事をする余力もなく今はただ勝利の余韻に浸った
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