201話 剣姫舞う
プラメアが宙に出現させた剣は異空間から出したもののようでそこから次々と取り出していく。どこに隠してあるかと思ったらそんな場所に収納していたのか
最後の一本を取り出したプラメアの周囲に浮遊する剣の数は十本、手に持っている剣を合わせると合計で十一本、十一刀流ということになる。序盤の小手調べが終わりここからは中盤戦、剣姫プラメアの本領発揮した姿を見れるというわけだ。一瞬たりとも気を抜くことはできない
「さぁいくぞ!」
プラメアが天に向けた手を振り下ろすと周囲に浮いていた剣が一斉にこちらへと攻撃を仕掛けてきた。十の剣が四方向へと散っていきあらゆる角度から私に襲いかかってくる。二本三本ならいざ知らず十本ともなると全てを完璧に避け切るのは難しい。おまけに一撃が鋭く重い為一本一本が致命傷になりかねない上にその剣の相手をしている私の隙を狙ってプラメア自身も攻撃に加わってくる。ただでさえ飛んでくる剣の相手だけでもギリギリだというのにプラメアまで対応しないといけないとは骨が折れる。限界まで高めた集中力を途切れないよう維持し、可能な限り最小限にダメージを減らしつつなんとか活路を見いだせないかと探ろうと試みる、しかしそうしているうちにも次第に生傷が増えていく
「どうした!ただ受けているだけでは血を流しすぎてそのうち動けなくなってしまうぞ!」
浮遊する剣と共に自由自在に飛び回るその姿は観戦している側から見たら優雅に舞う演舞かの様に感じることだろう。外野からは魅入ってしまうような動きでもプラメアと相対していた者からしたら死の舞踊とでも言った方が適切かもしれないな
確かにこのままではジリ貧でやられるのは目に見えている。プラメアの攻撃に対して剣一本で対応するのは流石に厳しい。単純な手ではあるが相手が複数の剣を使って手数を増やしてくるのならこちらも二刀流で対抗、聖剣ともう一本別に腰に提げていたもう一本の剣白蓮を抜き向かってくる剣を弾き飛ばしながら前進していく。立ち止まっていてはプラメアのペースに呑まれるだけなのでこちらからアクションを起こさない事には何も始まらない。ただ攻撃に転じるとなるとどうしても前の方に集中力を割くこととなり、その分背後への警戒が疎かになってしまうのでそこはある程度割り切らなくてはいけなくなる。多少の危険は承知の上だ
四方八方から攻撃を浴びせてくる剣を弾いては回避、突破されると判断したプラメアは浮遊してる剣を手に取りに両手に剣を持って突っ込んでくる私の勢いを殺そうと前に出てくる。けどそれはこちらが予測していた動き、プラメアが前に飛び込んできた瞬間を狙って最速の刺突攻撃を繰り出す。いくらプラメアでも動き出し直後では完全に避けることは不可能、避けたとしても肩を貫く事は必至
「あまいぞ!」
入った、心の中でそう思ったが既のところでプラメアと私の間に浮遊していた剣が割って入って来て受け止められてしまい私の剣はプラメアに届くことはなかった。これで決まるとは思っていなかったが傷位は与えたかったな
一度態勢を整えたいところだがそうなるとまたあの剣の猛撃を掻い潜らなくてはいけない。このままプラメアに接近していた方が浮遊剣の手数が減るはず。そう考えた私は距離を離されないよう攻撃の手を緩めることなくプラメアに立ち向かっていく
直後背後から密かに迫って来ていた剣が私の体に突き刺さる。傍から見たら致命傷に入ったように見えるだろう、しかし攻撃が入ったと思ったそれは直前に仕掛けておいた魔法で私の残像、本体である私はプラメアの死角となる場所に既に移動し終えており今度こそはと一撃を放つ
けれどこの攻撃もまたもや浮遊剣の介入によっていなされ、死角からの攻撃も頬を掠めた程度の傷しか与えられなかった。だがこちらの攻撃を受け止めた剣は先程の攻撃に続き今の一撃で限界を迎えたようで真っ二つに折れた。意図した結果ではないがこれでプラメアの周りにあるのはあと九本、地道ではあるがこのまま他の剣も全て破壊してしまえば勝利の道が見えてくる
「お~あぶないあぶない、剣も1本やられてしまったか。油断しておったかのぉ、傷をつけられたのは久々じゃ。じゃが次はないぞ!」
声を上げた途端プラメアの気がまた一段と跳ね上がり攻撃が激化していく。それはもう常人では目で追うことが出来ないレベルで試合状況を把握出来ている観客はごく僅かだろう。それでも熱い戦いを繰り広げているというのは伝わってきているようで会場からは割れんばかりの歓声が湧き上がっている
全方向から襲ってくる剣の相手にも徐々に慣れつつある。だがこちらの放つ攻撃はプラメアに入る直前でどうしても浮遊している剣に止められてしまう。さっきの死角外からの攻撃もいくらプラメアといえども反応して即座に剣を操っていたとは考えにくい。推測だがあの浮遊剣は攻撃時はプラメアが、防御時は自身が危険と察知した瞬間自動で敵の攻撃を受け止めるようにしているのものと考えている
やはり直接攻撃を当てるには剣を破壊していくしかないか。こちらがあれやこれやと対策を巡らしているのに対してプラメアは満面の笑みで剣を振るっていた
「楽しいのぉ!ここまで打ち合う相手と出会ったのはお主が初めてじゃぞエレナ!」
「楽しんでくれているようでなにより・・・です!」
楽しそうに剣を振るう姿は燥いでいる子供の様、かくいう私も気づいたら笑みを浮かべていた。この世界に生まれて初めて出会う同格以上の相手に不覚にも昂っていたようだ
出来る事ならずっと打ち合っていたいところだが、応援してくれている皆の期待に応える為にも決着をつけなくては。襲い来る浮遊剣とプラメアに立ち向かい私は全身全霊で剣を振るった
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