200話 剣姫VS元勇者
神託によって私が勇者エイクである事を知らされたリュミエールが私の元にやって来たあの日から数日が経過し、プラメアとの戦いの日を迎えた。隣にはその相手プラメアが上機嫌な顔で小躍りしながら戦うのを今か今かと待っていた
「楽しみじゃの~♪はよぉ戦いたくて体が疼いておるわい。お主もそうじゃろうエレナよ」
「ん?あぁそうですね、私も楽しみです」
「なんじゃお主考え事でもしておるのか?随分と余裕じゃのぉ」
プラメアの言葉に生返事で返しながら扉の方へと歩を進める。プラメアにはそういう風に見えてしまったのかもしれないが実際のところは昨日の事で頭を悩ませていただけ。先日のリュミエールとの会話の内容が頭から離れず鍛錬中も考えていた程だ
リュミエールが女神ルキナス様から受けた神託、それは以前レオンが話していた魔王の復活についてのものだった。魔王の復活の兆しがあるとのお告げをルキナス様から頂戴し、その際に私の事も伝えられて助けを乞うようにとの神託を受けたらしい
しかしこれについて疑問に思う点があった。前セレーネがルキナス様と話したという時には魔王復活の心配ないという話だったはず、魔王復活には条件があり条件が満たされない以上生まれることは無いしその心配もないとセレーネからは聞いていた。矛盾が生じている神託に私はリュミエールが帰った後観光から戻ってきたセレーネと話し合ったが当然本人も不思議に思い頭を捻らせていた。リュミエールが嘘を言っているとも思えないし一体どういう事か
ルキナス様に直接お話をお伺いをしたいところだがあちらから来ない限りこちらが話す手段はないしそれはセレーネも同様。そういった理由でどうしたものかと今日まで悩んでいたというわけだ
「なんじゃなんじゃこの人だかりは。どうしてこんなに人が集まっておるのじゃ?」
頭を悩ませている私の横で戦いを楽しみにしていたプラメアが突然慌てだしたのが目に入ってきたので辺りを見渡してみると会場には大勢の観客が入っていた。様子からしてプラメアがお膳立てした感じではないのは分かる。どうやらどこかから嗅ぎつけられてしまったみたいだな。こういう時の民衆のフットワークの軽さはどこも一緒なんだな
戦いの場を変えようにも法国で試合が行える場所はここしかなく、日を改めようにも今のテンションのプラメアを放置しておくわけにもいかないので私達は仕方なく観客付きで試合を行うこととなった
「剣姫様~!」
「エレナさん頑張って下さ~い」
「ド派手にやっちゃって下さいご主人様!」
観客席からプラメアを応援する大歓声に紛れで皆からの声援が飛び交ってくる。自由奔放でしょっちゅう国を離れているプラメアでも国民からの人気はしっかりあるようだ。対して私の方はというと当然ではあるが完全にアウェー、聖剣絡みでちらほらと知っている者もいるみたいだがそれも数える程度。けどこちらには大勢の民の声援よりも力になる仲間がいる
しかしラミアスだけは声を上げずただ傍観しているだけ。先日の一件もあってあれから会話はおろか話しかけることすら出来ず時が過ぎてしまっていた。シエルに聞いたところ観光していた時は普段の様子と変わらなかったようだが・・・
「外野が増えて予定が狂ってしまったがやることは変わらない。さぁ始めようじゃないか」
そうだ、今は目の前の相手に集中しないと。色々な件が絡み合って頭がこんがらがっているが一度全て忘れよう。余計な事を考えながら勝てる程今回の相手は優しくない
ルールは攻撃魔法や回復行為、相手を阻害するような魔法の使用禁止というだけ。魔法自体は禁止ではないがあくまで純粋な剣での戦いということだ
両社位置につき準備が整ったところで遂に開始の合図を告げる鐘が鳴らされた。開始直後プラメアが眼前まで接近してきて横薙ぎの一撃を放ってくる。先日打ち合いしていた時の様な軽い感じではなく初っ端から決めにきたような一撃。すかさず反応しプラメアの剣を払いのけてこちらも反撃、私のその剣を前傾姿勢で搔い潜って喉元に強烈な突きを浴びせてくる
この前見せてもらった自然エネルギーを使っている状態のプラメアはやはり体のキレが全く違う。序盤は互角の打ち合い、と言いたいところだが若干押され気味。けど打ち合っていく中で本気のプラメアの剣にも慣れてきた
剣姫と対等に打ち合う相手をあまり見たことがないのか観客は歓声を上げる。しかしこれはまだまだ小手調べの範疇、なぜならプラメアが使っている剣は未だ1本のみ。レオンが言うには幾つもの剣を同時に使用して戦うのがプラメア本来の戦い方。けど他に剣を所持していないところを見ると今回は1本のみで戦うのか?
いや、練習ならまだしも真剣で戦っているこの場で彼女が手を抜くとは思えない
「今日は剣1本しか使わないんですか?」
「ん?儂が剣を複数使う事お主に話しておったかの・・・?さてはレオンから話を聞いていたな、あのお喋りめ。焦らんでもこれから使うところじゃったから安心せい」
私の問いに笑みを浮かべて返答してきたプラメアは何を思ったのかこちらに向かって持っていた剣を投擲してきた。思いもよらぬ攻撃に驚きはしたがそんな攻撃が当然当たるはずもなく投げられた剣は私の後方へと飛んでいきそのまま地面へと落ちた。どういった意図かは分からないが無策でこんな行為をしてくるとは思えない
今のプラメアは剣がない無防備な状態、攻めるなら今かと思考を巡らせていると先程地面に落ちた筈の剣が突然独りでに私目掛けて飛んできた。意表を突かれる形となったが向かってきた剣を再度払い落とす、しかし今度は地面に落ちることなく私の剣を完全に受け止めた。更に死角である頭上から別の剣がこちらに攻撃を仕掛けてきた。慌てて後ろに飛び退いて体勢を整えようとするも2本の剣がまるで意思があるかのように攻撃を繰り出してくる
プラメアは先程の位置から動いていない。2本の剣の攻撃を受けながらふと目を向けたらプラメアの周りには無数の剣が宙を舞っていた
「さぁエレナよ、ここからが本番じゃぞ」
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