198話 プラメアの能力
屋敷で一夜を過ごした翌朝、外から見える庭に目を向けるとそこには芝に胡坐をかいて座っているプラメアの姿があった。精神統一でも行っているのか凄まじい集中力を感じ小鳥が頭に止まっていても地に根を張った樹の様に微動だにしない
昨日のお茶らけた印象とは一転、小さな見た目からは想像できない程の気を感じ、気づいたら私は屋敷から出てその姿を眺めていた。これ程の気を感じたのはいつぶりだろうか、少なくとも生まれ変わってからは初めてだろう
「なんじゃ、人のことをいつまでもジロジロと見おって」
目を閉じていながらもこちらの気配にはしっかり気づいていたらしく私に声をかけてきたので傍まで歩み寄って邪魔してしまった事を謝罪した
「すみません、覗くつもりはなかったんですが凄い集中力だったのでつい魅入ってしまって。精神統一をしていたんですか」
「まぁ別に見られて困るものでもないから問題はないが。今のは自然からエネルギーを分けてもらって体内に取り込んでおったのじゃ」
「自然のエネルギー?体内?」
自然の力を体内に取り込むなんて一体どうやっているのかプラメアが行っている行為に興味が湧いたので詳しく話を聞いてみることに。聞くとこの大気中には魔力とは異なる私達に見えない様々な力が存在しているらしく、それは大地に実りを与え草木を豊かにしたり時には空から雨を降らせ生きる者達に恵みを与えたりだとか自然の様々な成り立ちの一端となっているそうだ
その自然エネルギーというのを人間が体内に取り込むと五感が鋭くなり、身体能力も上がるようで彼女はそれで自身の能力を底上げしているということらしい。プラメアにはその自然の力が幼少期から見えるらしく山に籠っていたのはそれを取り入れる感覚を磨く為で、先程のような精神統一に似た行為も特訓の一環で毎日欠かさず行っているようだ。昨日の部屋での動きやお風呂場の水中でのあの素早い身のこなし、あれだけの動きが出来ているのはそのお陰かと納得がいった。仕事も碌にしないずぼらな性格でも戦闘に関する事については勤勉だということも分かった
「それって私にも出来たりするんですか?」
「お主は魔力を保有しておるんじゃろ?自然の力を取り込むには体の中をカラッポにせんといけんから基本魔力を持っている者では会得できん。それにたとえ素質があったとしても一朝一夕で出来るものではないぞ。この儂でさえ見えていても取り込むまでに数年はかかったのじゃからな」
「そうなんですね・・・」
自然エネルギーとやら取り込むことが出来ればまた一段強くなれるかと思ったが条件が満たないのであれば致し方ない
「せっかくじゃからこのまま儂にちと付き合え」
そういうと素振りをする為に置いてあったであろう2本の木刀のうち片方を渡してきてこちらに打ってこいと手招きをしてくる。こちらとしてもプラメアがどの程度の剣の腕前なのかを知りたいと思っていたところだったから願ってもない
渡された木刀を構えプラメアへと打ち込んでいく。自然エネルギーを取り込んだ状態で動くプラメアは魔力で強化された状態の時よりもキレがあって軽く振っているようでも一撃の重さは中々のものだった。久々の同等以上の相手にお互い朝から汗だくになるまで体を動かし朝食の時間が近づいているのも忘れて打ち合い続けた
「ふぃ~♪久々にいい打ち合いが出来たのじゃ。レオンとやっても歯ごたえが無いからのぉ」
「私もこれだけ打ち合いするのは久しぶりだったので楽しかったです」
プラメアの剣は誰に習ったものでもなく山で魔物達と戦って鍛え上げられたものだからか、型にとらわれない独特な動きで今まで相手したことがないタイプだったので最初こそ手こずったが最後ら辺には対応できるようにはなっていた。しかしレオンから聞いていた話ではプラメアはいくつもの剣を使用して戦うのが本来のスタイルだったはずなので彼女の実力はまだまだ底が知れない
打ち合いを終えた私達は汗を吸った服のままは気持ち悪いし食堂に向かうのはどうかと思ったので一度浴場のシャワーで体を綺麗にしてから行く事に。プラメアは面倒だからと昨夜の冷たくなった残り湯へとダイブし、自分の手で体を軽く擦り汗を落ちたことを確認したらすぐさま脱衣所の方へと戻っていった。遅れて私も脱衣所の方へと行くと既に着替えを済ませたプラメアが食堂に行かず待ってくれていたので私も急いで着替えを済ませる。その間背後からプラメアの刺すような視線が向けられていたのが気になったので問いかけようとしたらその前に彼女の方から声をかけてきた
「先程の腕前を見て確信した。エレナよ、儂と一戦交えようではないか。さっきのような生温いやつなどではなく本気のな」
遅かれ早かれそういう誘いはくるかと思っていたがこんなに早く機会が訪れるとはな。正直底を探りきれていないプラメアとの勝負に勝ち目があるかは分からないが、彼女の本気というものをこの身で体感してみたいという好奇心には勝てなかった私の答えは決まっていた
「受けて立ちます」
「なっはっは!そう来なくてはな!久しぶりに胸が高鳴るわい!」
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