196話 剣姫との対面
突然扉を蹴破って私達の前に現れたのはレオンの師匠と言われている可憐な姿をした少女。聞いていた話からして戦闘狂なイメージを持っていたからあまりのギャップに少し頭が混乱してしまい整理するのに時間がかかった。目の前にいる少女がとても剣姫などと呼ばれている見た目とどうしても合致出来ない
敵の襲撃ではないと分かった私達は警戒心を解き剣から手を放す。すると何故か少女は残念そうな顔をしていた
「あらっ?やらんのか?儂は別に相手しても良かったのじゃが」
「勘弁して下さい。屋敷が瓦礫の山に変わり果ててしまいますよ」
うん、見た目はともかく聞いていた通りの人だというのは間違いなさそうだ。一先ず壊れてしまった扉は私が魔法で修復し、少女には席に着いてもらい改めて自己紹介をしてもらうことに。しかし当の本人はリュミエールが出してくれたお菓子を見た途端貪り始めてしまったのでレオンに変わってもらった
「紹介します。こちらが私の師匠でこの国では剣姫と謳われているプラメア・レストアーゼです」
「エ、エレナと申します。聖女様に続き剣姫様にもお会い出来て光栄です」
「はむはむ・・・ごくりっ。堅苦しいのはなしじゃ、儂は剣姫などと仰々しい肩書きを持っておるが畏まられるのは好かん。敬称をつけなければ好きなように呼ぶがいい」
「は、はぁ・・・」
権力的なものをあまり好まないのかプラメアは私達に対して気軽にそう言ってくる。レオンの師匠呼びはいいのかと突っ込みたくなったがそこは敢えてスルー
それにしても見れば見る程本当に幼いな。見た目だけで考えたらラミアスより少し歳上位か?こうしてハムスターの様にお菓子を頬張りながら喋る姿なんて正に子供そのもの。こんな小さい娘が剣姫と呼ばれているなんて未だに信じられない
「あっ!お主今儂の事を見て"このチビが本当に剣姫?冗談だろ"って思ったじゃろ?こう見えて儂は立派な大人のレディなんじゃぞ」
「えっ!?ま、まさかそんな事ないですよ」
まるで人の心を読んでいたかの様に言い当てるプラメアに思わずドキッとしてしまい慌てて言葉を探しているとリュミエールが割って入って来てくれた
「幼く感じますがあぁ見えてプラメアは私と同じ歳なのですよ」
「ちなみに今年で26じゃ」
「えっ!こんなに小さいのに!?」
「お主やっぱりガキだと思ってたのではないか!」
しまった、つい心の中の声が漏れてしまった。その見た目で私よりも歳が上なんて思いもしなかった
フレイヤやフローリアと違ってプラメアは私と同じ人間だから少なくとも私より下だと勝手に思い込んでしまった。こういうのは意外と気にしている人がいるので怒らせてしまったかと肝を冷やしたが、意外にもプラメアは声を張り上げただけで怒ってはいなかった。初めて彼女の姿を見る者は大抵同じ反応をするようでもう慣れてしまったらしい
「それにしても珍しく早い帰りですね師匠。いつもなら山に行ったら数か月は帰って来ないっていうのに」
「そのつもりだったんじゃがなぁ、なんだか戻った方が面白い事が待ってそうな予感がしたんじゃよ。エレナじゃったな、お主の話はレオンからよく聞かせてもらっておるよ。ふむふむ・・・クンクン」」
そう言うとプラメアは再びこちらに視線を向けてきたと思ったら私の元までやって来て体の匂いを嗅ぎ始めた。突然の事で咄嗟に後ろに飛び退いて距離を置こうとするがすぐさま距離を詰めてきてまた匂いを嗅いでくる。いくらやっても私についてきて引き離すことが出来なかったので嫌々ながらも大人しく嗅がれることにした。皆が見ている中でこの様な事をされるのは非常に恥ずかしい。やっぱりさっきの事を根に持っていてその仕返しかとも考えてしまう
こちらが声をかけないといつまで経っても嗅いでいそうだったので流石にもうそろそろ止めてもらおうとしたその時、私より先にリュミエールが間に入ってプラメアを引き離してくれた
「プラメア、お客人に失礼ですよ。貴女はもう少しお淑やかに振舞って下さい」
「おっとすまんすまん、久々に上質な匂いがする者が来てくれて嬉しくてついの。それにしても・・・ぷぷぷぷ、お淑やかって柄じゃないのはリューが一番よく知っておるじゃろ。小さい頃からの付き合いなんじゃから」
「リュミエール様とプラメアさんは昔からのお知り合いなんですか?」
「そうじゃ、お互いの両親が昔からの付き合いでな。その流れで儂らも自然と仲良くなったのじゃ」
「まぁプラメアは幼い頃から山で生活をする為によく屋敷を抜け出していましたし趣味も全く違ったんですけどね」
リュミエールの趣味は基本インドア向けで対するプラメアはガチガチのアウトドア派。対極にある2人がよく仲良くなったものだ。そんな2人がいまや聖女と剣姫、それぞれの地位が高くなり会う回数が減った後も関係は変わらず良好な様子。尚会う頻度が減っていたのはプラメアがやるべき事務作業が嫌でレオンの相手をしたり山によく逃げたりするのが原因らしいが・・・
色々と話をしているうちにいつの間にか日が沈み外は暗くなっていた。それに気づいたプラメアは突然立ち上がったと思ったら「飯!」と言い出したのでリュミエールも加えて皆で夕食を頂くことに。散々質問攻めされていたセレーネには労いの意味を込めて食後に出てきたデザートを少し譲ってあげた
読んでいただきありがとうございました!
「よかった」「続きが気になる」など少しでも気に入ってくれたいただけたら幸いです
次話投稿時間はTwitterの方で告知させて頂きます。よろしくお願いします!




