195話 聖女の訪問
クリスティアに連れられてやって来た聖女様は私達の前にやって来ると深々とお辞儀をした後に自己紹介を始めてきた
「クリスティアからお話は伺いました。遠路はるばるお越しいただき感謝致します。私が現聖女を務めさせて頂いているリュミエールと申します」
「ど、どうも初めましてエレナと申します。こちらこそ聖女様にお会いできて光栄です」
この法国では教皇というのが最高位の存在だがそれと同等に近い立場にいるのが今の聖女という役職。カルラの時の聖女という役職は勇者の仲間となるのにつけたお飾り的なものだったが、魔法を倒した後それが一気に持ち上げられて今の地位まで上り詰めたのだろう
そんな上の立場である存在の人物が私達に対して客をもてなすかのように礼儀正しく接してくるのでこちらもつい畏まってしまい相手以上に深いお辞儀で対応してしまった
ひとしきり私達に挨拶を済ませるとリュミエールはふと体を傾け私の後ろにいるセレーネの方にと目を向けた
「そちらの御仁、少し手に触れても宜しいでしょうか?」
「えっボクの事?ん?この展開もしかして・・・」
返答を待つことなくリュミエールがセレーネの元へと歩み寄っていく
このやり取りは以前もどこかで見た事があるな。セレーネもそれを察してか後退りしその場から抜け出そうと試みるが時すでに遅し。既に聖女のお付きとして周りにいた聖騎士達が私達の周りを取り囲んでいる。何かしてくるわけではないだろうけど重装備の者達にこれだけ囲まれると流石に圧が凄い
セレーネの手を取りそっと瞼を閉じ何かを感じ取ろうと集中し始めるリュミエール。そして以前のクリスティアと同じ様に恍惚の表情を浮かべると彼女は名前を訪ねてきた
「はぁ、この感じやはり・・・すみませんがお名前を伺っても?」
「名前?ボクの名前はセレーネだけど・・・」
「セレーネ様ですね。宜しければもっとお話をさせていただけませんか?他の皆様も是非」
なんと聖女様直々のお誘いを受けてしまった。きっとリュミエールもセレーネの内に宿る神の力とやらを感じ取ったのだろう。並んでいる時に周りからの視線が集まっていたのももしかしたらそういう理由だったのかもしれない
聖女様のお誘いとあらば信徒達は歓喜し即答で受けるのだろうが、この手のタイプを苦手としているセレーネにとってはこの申し入れはきっと断りたいはず。しかし・・・
「なんと、あの者聖女様から直々にお誘いを受けるとは」
「それほど立派な徳を積んできたのでしょう。私達も精進しなくてはいけませんね」
「うっ・・・分かった行かせてもらうよ・・・でもここじゃちょっとあれだから場所を移してもいいかな」
「畏まりました。では参りましょうか」
信徒達の前で聖女の誘いを断ったとなったらどんな視線を向けられるか分かったものじゃない。その空気を察したセレーネは断ることもできずリュミエールの誘いを受けることに。そうして私達はレオン達の屋敷へと戻って来た
大聖堂の中にも応接室がありそこでどうかと勧められたのだが当のセレーネがそれを拒んだ。なんでも大聖堂のあの雰囲気が合わないらしく、階段を上がって来た疲労もあったということで観光を中断した結果レオンの屋敷が選ばれたというわけだ。神聖な場所である大聖堂が合わないと言う女神がいるなんて初耳だが・・・
更にリュミエールだけでなく聖騎士の方々まで屋敷に来ることになってしまい屋敷の中は物々しい雰囲気と化した。何の断りもなく突然聖女様を連れてきて完全にオフモードになっていたレオンとグレゴールは慌てふためいていたが、相手が相手だけに無下にできるはずもなく小言も言わず受け入れてくれた
「こちら以前隣町に赴いた際教会の子供達から頂いた物なんです。私だけでは食べきれないので宜しければどうぞ皆様召し上がって下さい」
「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて」
リュミエールが懐から子供達頂いたというお菓子をテーブルの前に出してくれたのでそれと紅茶を一緒に頂くことに
お菓子は素朴な感じでいかにも手作りという見た目をしていてホッとする味ような味がする。シエルやフィオナが作る本格的なのもいいがこういう不格好なのも味があって好きだ
私達が優雅にお茶を啜っている間、セレーネはというとリュミエールにずっと質問攻めをされていてとてもお茶どころではなかった。こちらとしてもこの国の上の人間相手にどうこう言える身分でもないので、セレーネには悪いと思ったが人柱になってもらった。夕食に好きそうなのがあったら譲ってあげるとしよう
そんな時間を楽しんでいるのも束の間、部屋の扉が突然何者かによって破壊された。あまりの不意の出来事に反応が遅れてしまったが襲撃に備えてすぐさま身構える
けれど戦闘態勢に入っているのは私やフレイヤといったレジティアからやって来た者達だけで、レオン達は気にする素振りもなくお茶を飲み続けていた
様子が変だなと思いつつも扉の方に意識を集中。外には聖騎士や警備の者達もいたというのに物音ひとつしなかったとなると侵入者は余程の手練れだと予測した
しかし吹き飛ばされた扉の向こうに現れたのは私が予想していた姿とは大きく異なっていた。扉の先の廊下に立っていたのは可憐な姿をした少女。あの豪快な扉の蹴破り方とは裏腹に可愛い女の子が目の前に現れて思わず肩の力が抜けていく
少女は私達を一瞥した後奥にいるレオンの方に手を振り明るい口調で喋り始めた
「おっすおっすレオっち~。帰ってきてたんじゃな」
「師匠・・・いつも言ってますがドアは蹴って開けるものじゃありません。直す方の身にもなって下さい」
「儂の前に立ちはだかるのがいけないんじゃ。扉なんぞなくとも生活はできるじゃろうて」
爺さん口調で親しげに話しているこの少女の事を今レオンは確かにこの少女の事を師匠と呼んでいた
まさかと思い疑念を拭うことが出来なかった私はレオンに確認をとった
「レオンさん、この人が例の?」
「えぇ・・・この人が私の師匠剣姫プラメアです」
「どもども~」
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