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191話 ヒュドラ討伐

レオンが戦えるようになったことで作業効率が上がり、私と共に幾度となくアルカンヒュドラに攻撃を浴びせていった。私の方はというとヒュドラとは何度も戦った経験があったので最初どのような魔法を使ってくるか様子を見た後途中から作業と化してしまっている。数えるのも面倒になる程攻撃を入れたお陰で地面は血の海となってしまって足元の状態が少し悪くなってきていた

戦闘の最中2人でなんとか再生が終わる前に全ての頭を落とせないかと試みてみたが、やはり現状聖技を使わず一遍に頭を切り離すのは難しいようだ




「今ので何回位落としましたっけ・・・」


「100越えたあたりから数えるの面倒になって忘れちゃいましたね。もうそろそろだとは思うんですけどね」




始めは瞬時に再生が行われて傷が治癒されるのも早かったが、今は致命的な傷優先で再生が行われ全ての傷に対応が追いついていない状態なので確実に再生能力を枯らす事は出来ている

しかしこちらは何度も剣を振るっていたレオンが肩で息をし始めてしまっている。いくら慣れてきてたとはいえこの状況下で長時間集中し続けるのは大変な様で、知らないうちに疲労が蓄積されていっていたのだろう




「くそっ!早く倒して先を急がなければいけないというのに!」




逸る気持ちは分かるがここで焦ってミスを侵しては今までの地道に行ってきたのが水の泡になってしまう。この後の事を考えてレオンはもう引かせて残りは私が片づけようかと思案を巡らせていると、前方にいるヒュドラの雰囲気が今までと違うものに変わっていくのを感知した




「シャアアアアアアアア!!」


「な、なんだ?」




ヒュドラが突然泣き叫ぶと他の頭が真ん中の頭に密着しだし魔法を発動し始めた。奴は今7つそれぞれの魔法全てを集約させようとしている。ヒュドラが私達に放とうとしているのは複数の魔法を融合させて発動させる技、融合魔法(ユニゾンマジック)

融合魔法は本来他者と呼吸を合わせて使う魔法で発動させるには魔力の波長を寸分違わぬよう同期させなくてはいけない為、発動が非常に困難な技の1つで失敗すると暴発して自分自身に危害が及んでしまう。ましてや魔物が使うなんて事は通常なら考えられないのだが、7つの頭を持つヒュドラは別々の意志を持っていても感覚は共有されている為それが発動の難しい融合魔法の発動を可能としていると考えられる

7つの魔法が合わさっていき物凄い魔力の密度を肌に感じる。これをまともにくらったりでもしたら流石にひとたまりもない。しかしこのタイミングで融合魔法を使ってくるということはきっとこのままでは危ういと感じて一か八かこれで決めようとしているのだろう

つまりこれを防げば相手はもうこの後戦う余力は残っていない。ならここは敢えて相手の攻撃を真っ向から受けて引導を渡してやろう

私が冷静に今から放たれる魔法の対処を考えている一方で、レオンは見たことのない魔法に思わずたじろいでしまっていた




「な、なんだあれは!あんなのが当たったらひとたまりもないですよ!」


「安心して下さい。確かに当たったら終わりですがあれ位ならなんとかなります」



慌てるレオンを落ち着かせヒュドラへと向き直る。ヒュドラの目の前に球体が作られていきそれがどんどん大きくなっていく。あれだけの大きさとなると恐らく避けたとしてもこの広間一帯を巻き込む程の爆発が起こるはず。無傷で受けきるには魔法が放たれた瞬間に打ち消すか吸収するかが最善だろう

限界まで大きくなった球体はヒュドラと同等位までに膨れ上がり、魔力の塊と化したそれは私達を飲み込む程の光線を放ってきた。どこに避けたとしても確実に直撃するだろう。しかしこちらは元より真っ向から迎え撃つつもりだ

光線が放たれた瞬間、こちらも手をかざして融合魔法に向かって魔法を発動した




「黒穴」




唱えた瞬間目の前に黒い渦巻きが現れ、迫ってきていたヒュドラの光線を吸収していった。この魔法は僅か10秒の間しか発動することができないが、その間生物以外のものは魔法だろうがなんだろうが全て吸収して無力化してしまう。いかに威力のある魔法だろうが無力化させてしまえばどうということはない

発動上限ピッタリにヒュドラが融合魔法を撃ち切り、こちらは完全無傷で攻撃を凌ぐことが出来た。次の手を残していないヒュドラにはもう再生する力も残っておらず、最後の抵抗で悪あがきをするも私達の攻撃の前には既に成す術はなかった




「これでトドメだ!」




レオンの一撃が脳天を突き刺すと、ヒュドラは力なく地面に倒れ込んだ。骨の折れる戦いではあったが私達はようやくヒュドラの討伐に成功した

これほどガッツリ動いたのは久々なので私にいい運動になったが、レオンは疲労と緊張の糸が解けたからか血の海と化した地面に膝をつけた




「すみませんエレナさん、大してお役に立つ事が出来ませんでした。途中なんてビビって動けなくなってしまうなんて・・・勇者なんて名ばかりですね」


「何事も経験です。今回の戦闘の経験を次に活かせばもっと強くなってそのうち勇者の名に恥じない位になりますよ」




レオンとそんな言葉を交わしながら休憩をとる。レオンを万全の状態まで回復させてやりたいところだがヒュドラに時間を取られてしまったのであまり休んでもいられない。数分程したら遭難者を探しに行こう、そう思っていたところに聞き慣れた声がどこからともなく聞こえてきた




「ご主人様~!」


「ん?この声は・・・」




声のする上へと顔を向けると竜化したフレイヤが天井を突き破って降ってきた。そしてその背中には一緒に来ていた皆と見知らぬ顔ぶれが3人が乗っていた。フレイヤは私の元に一直線に落ちてくるとすかさず飛びついてくる




「探しましたよぉご主人様!」


「随分と早かったね。というかよくこの場所が分かったね」


「走り回ってるうちに下の方が騒がしい場所を見つけたのでもしやと思い地面抉って最短距離で来ました!」


「私も手伝ったのだぞ主よ!」


「竜というよりモグラみたいだったわね・・・」




どうやら戦闘を繰り広げていた音が上の方まで響いていたらしい。それを聞いたフレイヤとフローリアがここまで地面を掘ってやって来てくれた。トラップがたくさん張り巡らされているこの遺跡でも流石に地中にまでは仕掛けていなかったらしい

そして先程の見知らぬ3人。その人達は聞くところによると私達が探していた遭難者らしく、運がいいことに私とレオンを探している途中で遭遇したそうだ

トラップで転移し皆と逸れヒュドラと戦う羽目になって散々だったが、遭難者を救出する事が出来たのなら結果オーライだ




「レオン様随分疲労されているようですね、大丈夫ですか?」


「あぁ、ありがとうクリスティア。少し休めば問題ないよ」




クリスティアは疲れて膝をついていたレオンに肩を貸した。そして私達は入口で待機してもらっている皆と合流する為、使えるようになった転移門を使用して上を目指した

ここに至るまで色々あったが一先ず一件落着、というわけにはいかなかった。そうだ、まだラミアスの件が片付いていなかった。既に機嫌が戻っているといいんだが・・・



読んでいただきありがとうございました!

「よかった」「続きが気になる」など少しでも気に入ってくれたいただけたら幸いです

次話投稿時間はTwitterの方で告知させて頂きます。よろしくお願いします!

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