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190話 レオンの鍛錬

「レオンさん!そっち行きましたよ!」


「はっはい!」




倒す方針が決まった私達はヒュドラの超速再生を枯らすべく長時間に渡る戦闘を繰り広げた。それと同時にレオンの実力を上げる訓練も行おうとした。しかし何度か試してみたがレオンは未だヒュドラの首を落とせないでいる

初めはヒュドラに対してどう動くが観察していたのだが、レオンの動きがいつもより明らかに悪くなっているのを感じた。今も私が注意を引いた事で攻撃のチャンスが生まれたにも関わらず、一歩踏み出す動きが遅れてしまったせいで攻撃が失敗に終わった。ヒュドラと戦っている姿を見ていて感じた違和感、それはレオンがこういう自分より格上の魔物と戦った事がないからかヒュドラと戦っている時は一歩引いた戦い方・・・良く言えば慎重、悪く言えば臆病な戦闘スタイルに変わるというのが判明した

私に勝負を挑みに来ていた時は躊躇なく突っ込んできていたが、このレベルの相手となるとその勢いの良さが途端に失われてしまうみたいだ。意識的か無意識なのかは分からないが自分の持ち味を活かす場所を自らが放棄してしまっては渡り合える相手とも戦えなくなってしまう




「レオンさん、大丈夫ですか?」


「す、すみません!次こそは!」




私の問いかけに少し青ざめた表情で返してくるレオン。戦闘開始直後こそ冷静に対応出来ていたが段々と動きが鈍くなってきている。頭では理解していて自分でもどうにかしようとしているが体が思うように動かせないといった感じか。恐れる事は悪い事ではない、寧ろ生きてく上で必要なものだ。けれど恐怖に囚われすぎては出来るはずだった事も出来なくなってしまう

今私達はヒュドラと文字通り命のやり取りをしている。恐らく彼はそういう死と隣り合わせの戦いを経験したことがないのだろう。今まで仲間達のお陰でギリギリの戦いで味わう事ができる緊張感というものを感じたことがないのかもしれない

仲間のサポートがある意味弊害となってしまった様な気がする。この感覚ばっかりは特訓等ではどうにもならず、実戦で経験して慣れるしか方法はない。そして強くなるのに一番手っ取り早いのもまた死線を乗り越えることである。自分より強い相手と戦い生き残ることで一段階成長した自分になることができるのだ

昔であれば望まなくてもそういう機会はごまんとあったが、今は自分で望まない限りそうそうそんな機会は巡ってこないのだろう。今現在冒険者を生業としている者達も私から見た限り決して危険は冒さず、命第一といった感じの者達が多い為階級が全体的にあまり高くないと推測している。そういった点においては昔の方が恵まれていたと言える

さて、これ以上難しいようなら私1人で倒すしかないが・・・可能ならばレオンにはその恐怖心を跳ね除けて欲しい。1人で戦うとなると当然攻撃がこちらに集中するわけで、そうすると攻撃をする機会も減ることになり倒す時間も大幅に増えてしまう

もし戦闘が継続出来ないようなら多少負担がかかる事を承知で聖技を使うしかない。けどそれは最後の手段として使いたいので私はレオンに声をかけてみることに




「レオンさん、厳しいようだったらあとは私がやりますよ。その状態でヒュドラと戦うのは危険です」


「エレナさん足を引っ張ってすみません。確かに今まで相手にしてきた相手より格段に強い・・・けどここで引きたくはないんです!」




レオンは武器を構えながらそう答えた。未だ恐怖心は拭えていないようだが、それでもヒュドラに向けるその目にはまだ戦う意志を灯していた。レオンに立ち向かおうという気持ちがあるのなら戦う事が出来る。そうだな、彼はまだ未熟とはいえ勇者として選ばれた人物だ。魔王を倒すと意気込んでいるならこれ位の相手に怯んでいては話にならないよな。どうやら戦闘から外そうと考えていたのは私の早とちりだったようだ

とはいっても気合いだけでどうにかなる相手でもない。そこで私は今までと戦い方を変えてみることにした




「分かりました。では一旦私の動きを見ていて下さい」




私の動きを見逃さないようレオンに言い、ヒュドラへと単身で突撃する。7つの視線全てがこちらに集中し連携をとるように攻撃を仕掛けてきた。真ん中と両端の頭が魔法で攻撃してくるまでの間他が物理攻撃で足止めを図ってくる。その攻撃を全て掻い潜り真ん中、右、左の順で魔法が発動する前に首を落としていった。3つの頭を一遍に落とした事で暴れ狂うヒュドラをよそに私はレオンの元に戻る




「どうです?今ので分かりましたか?」


「全て見事に避けきって首を落とした事位しか分からなかったのですが・・・」


「そうですか。今私はヒュドラの動きの特徴を見せようとしていたんです」


「ヒュドラの特徴・・・ですか?」




私はレオンにヒュドラが魔法を放ってくる時発動するまでの時間がそれぞれあることを教えた。私が最初に真ん中の頭に攻撃をしたのは発動される時間が一番短かったからだ。全ての魔法発動時間を記憶しておけば仮に魔法攻撃を行われても避ける事は簡単。また魔法を使用した後はインターバルが発生するので選択肢を絞ることもできる

他にも突進等の物理攻撃を仕掛けてくる際体を反る様な予備動作をしてくるので事前に攻撃が来るのを察知することが出来る等戦闘中に見つけた私の知っているヒュドラの攻撃の隙を助言した。本当は自分の目で見つけることが成長に繋がるのだが流石に初見では難しかったか

レオンは私の助言を一通り聞くと大きく深呼吸をし始めた。さっき私が落としたヒュドラの頭の再生がもうそろそろ終わり、再びこちらを襲ってくるだろう




「あとはレオンさんが恐怖に打ち勝てるかどうかです。頑張って下さい」


「分かりました・・・よしっ!行くぞ!」




声を上げて自身を奮い立たせヒュドラに向かっていく。再生が終わったヒュドラはレオンを丸飲みにしようと口を大きく開いて攻撃してくる。しかし先程の助言を聞いていたレオンはそれを跳躍で躱しヒュドラの首に着地した




「止まるな・・・このまま落とす!」




着地した勢いのまま首を伝っていき前進を続けるレオン。ヒュドラは自分の体を走るレオンに対し迷う事なく魔法攻撃を浴びせようとしてくる。けどそれも把握済み、レオンは他の攻撃を躱しながら魔法を放とうとしている頭に接近していき剣を振るった




「うおおお!!」




レオンの剣はヒュドラの首に入り、力の入った声と共に首は地面へと落とされた。向かってくる恐怖を克服し見事ヒュドラの首を落としたレオンの表情は喜びに満ちたものへと変わっていた




「や、やった!やりました!」


「その調子です。今の要領を忘れず次もお願いします」


「はい!」




先程感じていた恐怖心はもう払拭できたようだ。一度成功を体験した人は自信がつきまた次の成功を欲して行動を起こす。ようやくレオンが戦力として加わったところでここからが本番だ。私もレオンに続きヒュドラ刃を突き立てた




読んでいただきありがとうございました!

「よかった」「続きが気になる」など少しでも気に入ってくれたいただけたら幸いです

次話投稿時間はTwitterの方で告知させて頂きます。よろしくお願いします!

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