19話 帰還
「ただいま〜」
レジティアの街に帰ってきた私達はシスカを領主の元まで送り、無事帰還したことを報告した後家へと帰宅した
シスカを引き渡した時の領主グランツ号泣っぷりは凄まじく、出発した時もだったが今まで長期間離れたことがなかったから相当心配していたようで仕事に手がつかなかったようだ
帰り際に仕事の報酬を頂いたのだが、その額がとても警護の依頼で貰うような額ではなかったので一瞬入れ間違えたのかと思った
普通に暮らしていれば3人暮らしでも2ヶ月は余裕でもつだろう
盗賊を退治した以外は基本的にシスカと共に過ごしていただけでこんな大金をポンと貰うのは気が引けたが、つき返すのも失礼に値するので有り難く頂戴することにした
屋敷を出て街中を歩いていると王都で注目を浴びた時と同じような視線をここでも感じ、不審に思いつつも帰り際にギルドにも寄るとそこでも同じような視線を向けられた
どうやら私が聖剣を手にした事がこのレジティアの街にも既に広まってしまっているようだ
名前を明かしてなかったとしても白髪の少女という見た目とエルフ、赤竜族を連れているという情報をこの街の者達が聞けば私にいきつくのは自然のことだろう
ギルドマスターもわざわざ出迎えてきて、最早隠しても仕方がないと悟り打ち明けたらそこからはもう質問の嵐。目眩がしそうだった・・・
聖剣を触りたいという者も後を絶たず我慢出来ず聖剣に触れた者もいたが、その者には聖剣の制裁として電撃をお見舞いされる
聖剣の所有者以外が触ったり持ち去ろうとすると聖剣自身が反撃してくる仕組みになっているのだ
終わらない質問攻めに我慢できなくなり、逃げるようにギルドをあとにし今に至る
「こいつのせいで私の平穏な生活が脅かされないようにしないとなぁ・・・」
「聖剣をこいつ呼ばわりですか・・・でもエレナさん、今使っている剣はどうするんですか?」
「勿論、これからも使っていくよ」
性能は当然聖剣の上だが、今は手に馴染んでいるこちらの剣の方が扱いやすい
それに父親が丹精込めて作ってくれた剣だ。聖剣を手に入れたからと変える様な事はしたくない
二刀流というのも考えたが、片腕では剣の太刀筋がブレるし何より今の私の体では剣2本を同時に振り回すような膂力はない
仕方ないので聖剣は帯剣していざという時に使うことにした
「私は暫くのんびりするつもりだけど2人はどうするの?」
「私はギルドに戻って適当な仕事見つけてきます。警護の時は私だけ何もしなかったので体を動かしたい気分なんですよね」
「では私はお家の掃除でもしています。暫く放置していたので少し埃がたまってるみたいですし」
こうして各々が予定をたてフィオナはギルドへ、フレイヤは家の掃除を始めたので私は庭の畑の雑草取りと水やりを行った
種を蒔いた場所からは既に芽が出ていて大きな葉を広げていた
土に混ぜた肥料が余程合ったのか、普段より成長が大分早い
これなら予定より早く野菜が実るかもしれないな
畑仕事を終えた私は家に戻りフレイヤがやっている家の掃除を手伝うことにした
「フレイヤ。何か手伝えることある?」
「お疲れ様ですご主人様。こちらは大丈夫ですのでゆっくり休んでいて下さい」
フレイヤにそう言われたので私は大人しくテーブルに座ってフレイヤの様子を眺めていた
エプロン姿に三角巾。こしてみると昔からの姿では想像もできないなぁとしみじみ感じる
私の騎竜となる前、フレイヤは己を高める為に各地の拠点にやって来ては道場破りみたいなことをしていて、日々その体が血みどろになるまで戦いに明け暮れていた
上からの命令で処理を任された私はいつものようにやってきたフレイヤを半殺し位まで痛めつけ、殺さずに帰したところ後日私の元にやって来て実力に惚れ込み、私の下につきたいと嘆願してきて今の関係に至る
あの頃に比べれれば大分丸くなったものだ
「どうしましたご主人様?そんなに見つめられると恥ずかしいです・・・」
「んー?エプロン姿似合ってるなって思っただけだよ」
「えっ!そ、そんな照れちゃいます~えへへ♪」
嬉しさのあまり尻尾をブンブンと振り回す。わかりやすいなぁ
私の一言で上機嫌になったフレイヤは物凄い勢いで掃除を済ませ、そのままお昼の準備も始めた
大味な料理しか作れない私はサラダ作りを担当し、メインはフレイヤに担当してもらった
自分の口から炎を出して凄まじい勢いで調理していく
赤竜族の間ではこれが普通らしいが、傍から見ていると少し危なげに見える
それでも器用に火力を調整して淡々と何品も料理を作り上げていった
「出来ました!さぁ召し上がって下さいご主人様!」
「いただきます」
何気にフレイヤの手料理を食べるのはこれが初めてだ。見た目は良いけど感じの味は・・・
「ん!美味しいね。フレイヤ料理も上手だったんだね」
「いやぁ、フィオナがやっているのを見て似たようにやっただけです」
「いや見ただけでこんな美味しく作れるなんて凄いよ。フレイヤはいいお嫁さんになるね」
「じゃあご主人様が私と結婚してください!」
「いやそれはいい」
そんなやりとりをしつつ、昼食を済ませたあとは天気も良かったので草原で昼寝をすることにした
風が心地よくウトウトし始めた頃、フレイヤが隣に寄り添ってきた
「甘えん坊だねフレイヤは」
「まだまだ子供だからいいんです♪」
甘えてくるフレイヤの頭を撫でているとやがて眠りにつき、その日はフィオナが帰って来るまで惰眠を貪った
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