188話 転移の先に待ち受けるのは
転移の罠で皆と分断されてしまった私とレオンは未だ遺跡に取り残されている人達を救うべく捜索を再開した。といっても転移された場所には道が1本しかなく、私達は道なりに進むしかなかった
真っ直ぐ長い道が続き魔物の気配も感じられずただ移動するだけの時間が続く
「結構長い道ですね」
「そうですね」
「・・・・・」
「・・・・・」
先を目指す2人の間に沈黙が流れる。き、気まずい・・・今まで周りに他の人がいたから気にしなかったが、こうして2人きりになるのは初めてだからどんな会話をすればいいのか分からない
昔アレンと2人きりになった時はどうしてたっけ。そういえばこういう時は大抵組手に付き合ってたなぁ
でも流石に今それをやるわけにはいかないしな、何か話題になるような内容は・・・
「レオンさんは女性の体の中で好きな部位ってどこがですか?」
「女性の体で・・・好きな部位ですか?」
私の質問に目を見開き疑問符で問い返してくるレオン。しまった、振る話題を間違えてしまった。というか仮にも女性が男性にする話ではないなこれは
レオンが私の所為で困惑した表情を浮かべてしまっている。それはそうだろうな、私も男で女性からこんな話を振られたら返答に困ってしまうだろう。他に話題になりそうな事は・・・
「そ、そうだ。以前話していた剣姫と呼ばれている師匠の事を教えてくれませんか」
「師匠の事ですか?そうですね、前にも話したかもしれませんが師匠はとにかく戦う事が大好きなんです。聞いた話ですが7歳の頃から殆ど山に籠って魔物と戦いながら生活していたらしいです」
へぇ、なんだか少し私と似たような事してたんだな。山籠りまではしていなかったがよく森に潜って襲ってきた盗賊をシバいたりしてたっけ
私が始めたのは10歳の頃、それを師匠と呼ばれる人は7歳の頃から行っていたのか。やはり話だけ聞かされたら剣姫という名は似つかわしくないな。きっと男の様に逞しく野性味溢れる姿をしているに違いない
「剣姫と言われるくらいですからきっとかなり強いんでしょうね。私とどっちが強いと思いますか?」
「俺がお2人の力量を量れるまでに至っていないのでなんとも・・・ただ師匠は剣を何本も使うのでそういった意味では師匠の方に部があるのかもしれません」
剣を何本もってどういう意味だろうか。両手のみでなく脚や口でも使って五刀流とか?
ってそんなわけないか、想像しただけでも間抜けな様だし。まぁそれは会ってからのお楽しみということにしておくか
会話も程々に私は進む先の方へと意識を向けた。奥の方が徐々に開けてきている、この先に何かあるのかもしれない
転移された場所から長い一本道を進んだ私達の前に現れたのは人の何十倍もあるであろう巨大で堅牢そうな扉。遺跡の地下にこんな大きな扉があったなんて
扉に近寄り軽く叩いてみる。少なく見積もっても1メートル以上の厚さはありそうだ。聖剣や白蓮を使えば壊すことは可能だろうが、そうやって扉が崩れた振動でここが崩落でもしたら大変だ。転移で私達だけ逃げられたとしても取り残された人がどうなるか分からない
ここに来るまで他の道も見つからなかったしどうにかしてここを開けるしかないんだろうがはてさてどうしたものか
「随分大きな扉ですね。押しても引いてもビクともしません。あっ、エレナさんこんなところにボタンがありますよ。このボタンを押したら開くそうです」
「えっ、まさかそんな都合良くいくわけが・・・罠かもしれないし押さない方がいいと思うんですが」
「でもここに開扉って漢字が・・・あっいや何でもないです」
ボタンの所に書かれている文字を見てみるとそこには見たことのない文字が書かれていた。レオンにはこの文字が読めたということだろうか
そういえばレオンはこことは違う世界に前いたとか言ってたっけ。もしかしてこの文字はレオンが前いた世界の言語なのかもしれない。それがここにあるっていう事は・・・レオンの他にも別の世界からやってきた人物がいたということか?
案外私が知らないだけでこの世界には案外異世界からきた人間がいるのかも。一先ずここはレオンの言うう通りにしてみるか
レオンにボタンを押してもらうと扉が唸り声を上げてゆっくりと動き出した。どうやら本当に扉を開けるボタンだったようだ。ならこんな堅牢な扉は必要なかったんじゃないかとも思うがそこは一旦置いておこう
扉が完全に開き切ったところで警戒しながら中へと進んでいく。扉を潜り背にすると自動的に扉が再び動き閉じていった
扉の先は地下に作られたとは思えない程の空間が広がっていて石材が敷き詰められていた。今までの場所とは明らかに異なる雰囲気を放っている
「何もありませんね。ただの広間というわけじゃないでしょうけど・・・」
ここまで来たはいいが私達が入ってきた扉以外の通路が見当たらない。これだけのスペースを作っておきながら何もないなんて事があるだろうか
そう思ったが広間の中央まで行ったところで突如として私達の足元にまた魔法陣が発生した。私とレオンはそれを見てすかさず後退する
この遺跡に来て今までで一番大きい魔法陣、これは魔物召喚の陣だ。この広さを埋め尽くす程の大きさとなるときっと手強い相手が現れるに違いない
「多分レオンさんが今まで戦ってきた中で一番強い相手が現れます。気を引き締めて下さい」
「は、はい・・・!よし、やるぞ!」
自身を鼓舞し魔法陣から現れる魔物を迎え撃つ体勢に入る。魔物が出てくるまでにこちらも強化魔法等をかけ戦闘準備を整えた
こちらの用意が出来た頃に魔物は姿を現した。魔法陣からやって来たのは7つの頭を持つ白い蛇の姿をした魔物、アルカンヒュドラ。7つの頭には九尾のキューちゃん同様それぞれの特性を持っている。ただこの魔物は個体によって違う特性を持っている為、どういった魔法を使ってくるかは実際に戦ってみないと分からない。今のレオンには少々荷が重い相手かもしれないが、この魔物を倒さないと先には進めなさそうだし逃げ場もないのだからやるしかないな。私は一度深呼吸をしてからヒュドラに剣を向けた
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