186話 仲違い
途中巨大な魔物に襲われつつも全員無事に遺跡の入口に来ることが出来た私達は取り残された人達を救出すべく準備を進めていった
「それにしてもさっきの魔物は何だったんだろ。初めて見る魔物だったけど」
「あれは恐らくエルダーノーファルという魔物ですね。あの特徴的な長い角は本で見た覚えがあります。砂漠地帯に生息しているのは知ってましたが遭遇するのは稀だそうなので驚きました」
そんな魔物もいたんだな。この辺りの生態系はよく変わると昔聞いた事があるからあれも私がいない間に生まれた一種だったのだろう。戦ってみたい気持ちもあったが皆を巻き込む形になるし今は遺跡に取り残された人達を救出するのが優先だから応戦せず走り抜けた。砂漠地帯では使えなかった魔法もこの遺跡では使えるみたいなので救出した後は転移で帰ればいいしもう遭遇する機会もないだろうな
「はぁ、ここは魔法が使えるみたいで安心したわ。使えないと気が気じゃないからね」
「魔法が使えないとお前そこら辺の人間と変わらないからな」
「やかましいわね!この青トカゲ!」
「トカゲだとぉ・・・?主よこいつ食ってしまってもいいか?」
「はいはい、今はしょうもない事で言い争ってる暇はないよ。早く準備を済ませて下へ向かおう」
言い合う2人を宥め下層へ向かう準備を淡々と進めていく。この遺跡にはトラップが多いと話していたがそれだけでなく、遺跡の中は明かりが一切入らない暗闇状態らしいので光源が必須となる
普通は魔法を温存する為にランタン等で対策するのが一般的だが、今回は救出する事が目的で遺跡の探索をするわけではないので魔法を使って効率的にいく。以前にも使用したことがある妖精の囁きを使えば最短で向かう事ができるはずだ。ただあれは発動者の頭の中で探したい物、人物が明確であればある程精度があがるもの、逆を言うとイメージが曖昧だとその正確性を下がってしまうのでそれだけが気がかりではあるが今回は遺跡の中に迷い込んだ人を探す為に使うから大丈夫だろう・・・たぶん
そんな思いを巡らせながらも準備を済ませ立ち上がろうとすると私の横にラミアスが近寄ってきた
「エレナ、私は何かすることはないのか?手伝うぞ」
「ありがとう、でもラミアス達はここで待機してもらうつもりだから休んでていいよ。下には私とフレイヤ、フローリア、それと勇者達と行くからフィオナ達と待ってて」
本当の事を言えば私はここに来るのだってあまり良いとは思ってなかった。しかしキューちゃんと一緒にいれば大丈夫だろうと判断し結局は同行することを許した。けどここから先は下にどんな魔物がいるかも分からないし転移系のトラップ等も張り巡らされている。万が一ラミアスがトラップで孤立してしまった事を考えるとこれ以上先へ連れていくのは危険だ
それにこの入口に残ってもらうのは下にいる者達と私達がすれ違ってしまった時の事を考えての対策でもある
そういった理由がある為待機するようお願いするとフィオナ達は了承してくれたが、ラミアスはそれでもついて行くと言って聞かなかった
「えー!我も戦えるぞ!」
「駄目、今回は人を助けなくちゃいけないんだから。何が起こるか分からない場所に連れていくわけにはいかないんだ。遊びじゃないんだよ」
「遊びだなんて思ってない!ん~・・・もういい!エレナのバカ!嫌い!」
「ちょっ・・・ラミアス!」
私の制止を聞かずにラミアスはフィオナ達の元へと行ってしまった。どうやら怒らせてしまったようだ
少し強く言い過ぎてしまっただろうか・・・聞き分けは良いと思っていたんだが。今まで大抵の言うことを聞いてきたから我儘癖がついてしまったんだろうか。まぁ今は怒ってて冷静ではないだろうけど落ち着きを取り戻してくれればきっと分かってくれるだろう。そう信じる事にし、後を追いていこうとするキューちゃんを呼び止めラミアスの事を頼んだ
「キューちゃん、ラミアスの傍にいて守ってあげてね」
「キュッ!」
任せろと言わんばかりに人間の様に胸を張り自身満々な様をアピールして去っていく。まぁあそこなら敵が来ることもないだろうから救出して帰ってきた時に備えて料理でも作って待っていてもらおう
私は待機するラミアス達を背に荷物を持ちレオン達が待つ下層への入口へ向かった
「では行きましょうかエレナさん・・・だ、大丈夫ですか?」
「あぁはい・・・問題ないです。早く行きましょう・・・うぐっ」
「問題ありまくりじゃない。露骨にダメージ負ってるわよこれ」
「ご主人様・・・」
気にしていない風を装っていたつもりだったがバレバレなようだ。正直本当に嫌われてしまったのではないか思うと立ち直れる気がしない・・・出発前から精神的大ダメージを負ってしまった
いや冷静になれエレナ、一旦この事は置いといて今は救出する事だけに集中するんだ。仲直りするのはそれからだ
なんとか気持ちを切り替えて下層へ続く扉を開けると奥は 真っ暗で底も全く見えない
「確かにこれでは暗すぎてトラップに嵌ってしまいそうだな。エレノア頼む」
「はいはい、視覚強化」
エレノアが魔法を発動すると先程とは打って変わって視界が確保され、闇に包まれていた景色が鮮明に見える様になった。エレノアが使ったのは周りを明るくする魔法ではなく視覚を強化する魔法のようだ
更に私が罠を探知する魔法を使えば危なげなく下まで行く事が出来る
周囲の警戒は他の者に任せ、私達は残された人達がいる下層へと歩みを進めた
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