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184話 勇者は面倒事に巻き込まれやすい

「エレノアとクリスティアは負傷者を頼む!」


「言われなくても分かってるわよ。ウォーター・シェル!」




エレノアが負傷している冒険者達を囲むように半球体状の水の壁を魔法で生み出す。地上にしか張られていない様に見えるが地中にもこの防御魔法は発生しているのでこれで真下からの奇襲にも問題ない

そこへクリスティアが駆け込んでいく。エレノアが防御魔法の一部に作った入口から入ると中にいた負傷者を回復し始めた




中範囲回復(ミドルサークルヒール)!」


「ぐっ・・・」


「誰だか分からないが助かった、ありがとう」




範囲回復の魔法を使い負傷者を一遍に回復させる。状態異常にはかかっていないようだったので負傷者の回復を済ませるとクリスティアはそのまま前線でヘイト役を担って戦っていたレオンとグレゴールに身体強化魔法をかけた

後方からの支援が始まると防御に専念して時間を稼いでいた2人も反撃に転じた




「ビーストフォルム【(ウルフ)】!」




グレゴールが技の名を叫ぶと巨体がみるみるうち変化していき二足歩行の狼へと変身した。この技は私も初めて見る技だったので驚いた

パッと見では獣人だと分かるグレゴールだが今まで何の獣人だか分からずにいた。通常は体のどこかしらにその動物の特徴となるものがあるはずだけど、グレゴールにはそれが見当たらなかった

この旅の間にその事について聞いてみたが、どうやら彼はキメラという特異種にあたるらしい。種が異なる獣人が結ばれると、稀にその獣人から生まれた子供が両者の遺伝子を受け継ぐ事があるそう。グレゴールは更にその2つの遺伝子を持った親から生まれた存在で4つの遺伝子を受け継いだ非常に稀有な存在のようだ

今使っているビーストフォルムというのはその遺伝子を活性化させたもので【狼】の他にもあと3種類はあるという

狼男の様な姿になったグレゴールはスピードと鋭利な爪、それと嗅覚を駆使して地中にいる魔物が襲ってくる場所を事前に察知し攻撃してきたところにカウンターを入れて切り裂いていく。その勢いに他の者達も続いて攻撃を繰り出す




「クリスタル・ランス!」


「ハッ!」




エレノアが攻撃魔法で砂漠鮫(デザート・ガレオス)に攻撃を加えつつレオンのいる方へと誘導させて止めを刺すよう仕向ける。攻撃を与えやすいようサポートしてあげるなんて案外優しいんだな

その調子で砂漠鮫や砂虫(サンドワーム)を順調に片付けていき、残すは鋸刺鮭(サーブル・ピラニア)のみとなった。しかし鋸刺鮭は手の平サイズの大きさで攻撃が当てづらい上に群れで行動している為数が多く倒しても倒してもキリがない。ざっと2、300体はいるだろうか

レオンは身に纏っている鎧のお陰で傷はないようだが、あまりの数の多さに苦戦を強いられている




「くっ!こいつら一体一体は大した事ないが数が多すぎて捌ききれない・・・!」


「全く、世話が焼ける勇者様ねぇ!ウォーターサイクロン!」


「わぷっ・・・!」




エレノアが砂上に水の竜巻を巻き起こして砂鋸刺鮭を一網打尽にした。よく見るとその中にレオンの姿もあった

エレノアはそこへ追い打ちをかけるように更に魔法を発動する




「からの~・・・アイスジェット!」




今度は氷の魔法を使って先程発動したウォーターサイクロンを凍らしていく。それによって群れの鋸刺鮭を1匹残らず倒しきり周囲の魔物の掃討は完了した。レオンも氷漬けになっているが大丈夫だろうか・・・

氷を破壊しレオンを救出した後は色々と言い合っていたが行動を共にしているだけあってしっかりと連携がとれていたな。いざとなれば加勢しようかとも思ったが杞憂だったようだ




「まぁ色々あったわけだが・・・3人共お疲れ様」


「これ位余裕よ」


「エレナさん達も付き合わせてしまって申し訳ない」


「いえ、私達は見ていただけですし」




私達が話しているとクリスティアに回復してもらっていた冒険者達が落ち着きを取り戻したようでこちらにやってきてレオン達に感謝の言葉を述べた




「助けてくれて感謝する。加勢がなかったらあのまま全滅するところだった」


「にしてもお前らはどうして砂漠のど真ん中にいたんだ?」


「そうだ!こんな事してる場合じゃない!早く遺跡に戻らないと!」


「遺跡?」




助けた冒険者の1人が何やら慌て始める。事情を聞いてみるとこの冒険者パーティは砂漠地帯で最近発見されたという遺跡の探索に来ていたらしい。ここにいる他にもパーティメンバーがいてその遺跡の探索を行っていたそうだが途中で転移トラップに嵌まってしまい、仲間数人を遺跡に残してこの地に転移されたようだ。戦闘中回復役がいなかったのはそういう事だったのか

幸い食糧を持っていた者は遺跡に残ったままだから飢える事はないようだが、それでも一刻も早く仲間達の元に戻ろうとする冒険者達。しかし見た限りさっきの戦闘で装備は心許ないし食糧もない。遺跡にいる仲間達と最後に行動を共にしていたのは下層の辺りだそうなので、このまま行かせたら仲間達と再会する前にこっちの人達が全滅してしまいそうな状態だ

どうするかとふとレオンを見ると目が合い口を開いた。その瞬間に何を言おうとしているのか察しがついた




「エレナさん、申し訳ないですが・・・」


「分かってます。助けに行くんですよね」


「乗り掛かった舟だしね。ホント面倒な事になったわ」




この男の性格上見捨てられる筈がないと想定できた。まぁ助けに行かなかったら私が行っていたが・・・勇者というのは存外こういうお節介焼きが選ばれるのかもしれないな

遺跡に行くことが決まり冒険者から遺跡までの地図を貸してもらった。その時に助言をもらった




「遺跡の周りは砂塵が凄いんだ。しかもその砂塵の中に入ると魔法が使えなくなっちまうから注意してくれ。それとそこの遺跡は他の遺跡よりトラップがかなり多いから気をつけた方がいい。こんな事位しか助言できなくて不甲斐ねぇが・・・仲間を頼む」


「分かった。必ず仲間達全員助けて戻ってくる」




冒険者達は私が転移門で道中に寄った砂漠地帯から一番近い町まで送ってあげた。それを見たエレノアが凄い食いつきようだったが今はそれどころではないので軽くあしらい、フレイヤ達に載って地図に記されている遺跡へと急行した




読んでいただきありがとうございました!

「よかった」「続きが気になる」など少しでも気に入ってくれたいただけたら幸いです

次話投稿時間はTwitterの方で告知させて頂きます。よろしくお願いします!

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