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182話 勇者再来

「エレナさん、是非貴女を師匠に紹介したいのでトライセリア法国に来てくれませんか!」


「師匠?」




時は遡り数時間前、皆揃っていつものように家で寛いでいると聞き覚えのある声が外から聞こえてくる。門の方を眺めてみるとそこには以前私に完敗を喫した勇者レオンとその仲間の姿があった

この街を去る時に聖剣が欲しければ鍛え直して来いと宣言してから数か月、彼は私に再度挑みに戻って来た。もっと時間がかかるかと予想していたが思いの外早く戻ってきたレオンは私に勝てる算段でもついたのだろうかと少し期待してリベンジ戦を受けた

しかし結果は前回と変わらず私の完勝。前の技に頼り切りな時に比べたら戦えるようにはなっていたが、まだまだ負ける気はしなかった

しかしそこからが大変だった。わざわざ法国から来たのに一回負けた程度で帰るなんて真似ができるはずもなく、レオンは気を失うまで私に挑み続けてきた。なまじ受け身ができるようになったせいでしぶとくなっていて相手にするのが大変だった

それで意識を取り戻したレオンが開口一番に口にしたのが先程の言葉ということになる

師匠というのは誰のことなのかと聞いてみると神官であるクリスティアが問いに答えてくれた




「師匠というのは勇者様の講師をしていて私達の国では剣姫と呼ばれている方なのです」


「剣姫か、その人に何故私を紹介したいんですか?」


「その方は何と言いますか・・・戦いがとてもお好きな方で三度の食事より戦闘を優先される方なんです。特に強い方と戦う事を強く望んでいまして」




なんだその人物は。剣姫というより戦闘狂と呼んだ方が似合いそうだな

帰国した後その人に私の話を聞かすと興味を示していたと話していたのでつまりはそういうことだろう

確かに気にはなるがそんな人と会ったら確実に面倒な事になりそうだ

私は法国に行くことを拒んだが、連日レオンの挑戦とセットでそのお誘いがくるようになってこちらはこちらで相手にするのが面倒になってきた

そんなある日、仕事の帰りついでに買い物をしていると勇者一行に遭遇。またいつものパターンに入るかと思ったが、違う道からやって来たセレーネと鉢合わせた事で普段とは違う流れに向かった




「セレーネ?」


「やぁエレナ奇遇だね。今帰り?って勇者君達もいるじゃん。君達も頑張るねぇ」


「君は確かエレナさんと生活しているお嬢さんでしたよね。貴女は我が国に興味はありませんか?」


「うーん、特には。ボクはエレナが決めた方に合わせるよ」




私が折れないからターゲットを他の者に変えて外堀を埋めていこうという作戦に切り替えたみたいだが、セレーネはそれを一蹴

今日は仕事で疲れていたしレオンのリベンジには答えずそのまま帰ろうとセレーネと共に家路に向けて歩を進めようとした

けどクリスティアがセレーネの前に立ち、顔をじっと見つめていて通るに通れなかった。あまりにも長い間見つめられていたので流石のセレーネも耐えかねて自身の方から問いかけた




「どうしたのかな?ボクの顔に何か付いてるかい?」


「これは失礼しました。宜しければ少しお側まで行っても大丈夫宜しいでしょうか?」


「ん?別にいいけど・・・」




セレーネから許可をもらうとクリスティアは詰め寄りつま先から頭の天辺まで念入りに観察し始めた

その間セレーネは動ける事ができず、体の隅から隅まで見つめられてなんとも言えない表情をしていた。一通り見て気が済んだのかクリスティアは一息ついた後恍惚の表情を浮かべ目を見開いていた




「前から僅かに感じていたのですがこうして間近で見て確信しました。貴女からはエレナさんよりも強い神の力を感じます。いえ、そんな生易しいものではありません・・・こ、これはまるで神そのもの!ハァ、ハァ・・・」


「ねぇエレナ、この神官ちゃんこんなキャラだったっけ?なんか怖いんだけど・・・」


「すまないな。クリスティアは神の力とやらを感じる相手を見るとこんな風になってしまうんだ。俺らにはそんなもの全く感じられないんだがな」




神官という職だからなのかセレーネの正体を見事的中させるクリスティア。確信を持っての発言ではないようなのでバレてはいないようだが、あまり長時間一緒にいさせたらそのうち暴かれてしまいそうだから注意が必要さな

しかし若干とはいえセレーネが引いてる姿を見るのは新鮮だな。どちらかというと自分から攻めるタイプだから相手からグイグイ来られたりするのは慣れていないのか苦手なようだ

仲間から肩を揺すられる事でようやく我に返ったクリスティアは口元から垂れていた涎を拭い、軽い会釈をして謝罪した後再度セレーネに問いかけてきた




「申し訳ありません、つい取り乱してしまいました。セレーネさん、法国に行ってみたくはありませんか?」


「いやぁ、さっきも言った通りエレナが行かないって言うならボクも行く気は・・・」


「もし法国に来て頂ければセレーネさんのお望みの物なんでもご用意致しますよ」


「それは素晴らしい提案だね!行こうエレナ!」




ついさっきまで乗り気でなかったのにエサを与えたら手のひらを返すようにあっち側についてしまったセレーネ。この女神、案外ちょろかった

それからというもの、セレーネが勇者側についた事でフィオナやラミアス、他の皆までが籠絡されていき結果私達は法国に行くことが決まってしまった

面倒事に巻き込まれそうな予感しかなく不安ではあるが、遅かれ早かれかつての仲間達の国に行ってみようと思っていたからいい機会なのかもしれない





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