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180話 借金取り

あれから暫くしてミィさんのお店の前を通ってみると、お客さんが満足した表情でお店から出ていくのが見えた

フィオナとシエルが手を貸した甲斐もあり順調にお客さんを増やしていっているようだ

私達も一度お店にお邪魔させてもらったがうちのお店で特訓していた時よりも更に上達していたしこのままいけばもっとお客さんを呼び込むことができるだろう

お店を眺めているとちょうど出ていくお客さんに会釈するミィさんが見えた。声でもかけようかと歩み寄ろうとすると今度は違う方向からやって来た複数人の男達と話し始めた

最初は普通に接していたのでお客さんかなと思って見ていたが、何やら話していくうちに険悪な雰囲気になっていって遂には集団の中の1人がミィさんの胸ぐらを掴み始めたのでこれはまずいと感じ急いで駆け寄っていく

近づいてくる私に気がついたミィさんはこちらに泣きつくような形で擦り寄ってくる




「え、エレナさん!」


「大丈夫ですか?すみません、この人私の知り合いなんですけど胸ぐらなんて掴んで・・・何があったのか分かりませんが暴力は良くないですよ」




ミィさんを私の背後に移動させ改めて話していた男達の方を見てみると明らかにガラの悪そうな見た目をしていた。見た目で判断してはいけないがあの様子を見る限りいい人達とは思えない。こういう連中とミィさんが何故関わりを持っているのか

私の問いかけに最初は関係ない者に話す事はないというスタンスだったが私が食い下がると男の1人がようやく話し始め、トラブルの理由が明らかとなった




「この姉ちゃんがうちんトコから金借りたのに返さねぇんだよ」


「えっ?ミィさんそうなんですか?」


「ち、違いますにゃ!いや借りた事は本当にゃんですが・・・この人達最初言っていた利息の5倍の額を要求してきたんですにゃ!」




ミィさんが言うにはお店を始める際に資金が足りなかった為その分を補うのにこいつらから借りたそうだ。そのお金を分割で返す事を証明書にサインしたのがちょうど一月前で今日がその返済日だったらしいが、男達に用意しておいたお金を見せると足りないと言われ、先程言っていた5倍の利息額を含めた返済を求められたという

借りる際に聞かされていた利息より明らかに多い額を要求され、その事について口論になった所に私が来たというわけか


私はミィさんがサインした証明書を見せてもらった。紙には確かに利息に関しては男達が発言している通りの内容が記載されていたが、右下の方に米粒位のこちらが気づかないような小さい字だった。しかも印字されている字を真似ているようだがその文章だけ明らかに手書きで後付けされた様な感じで書かれている

当然ミィさんはこのサインをした時にはそんな文章はなかったという




「この証明書も不当なものですし利息が5倍なんてちょっと不当な要求じゃないですか?」


「言いがかりは良くないなぁ嬢ちゃん。証拠はあんのか?」




確かにそれを言われたらこちらは何も言い返せない。たとえこの文章がサインをした後に書かれたものだとしてもミィさんがこれに了承したと言い張られたら確たる証拠がない限り覆すことができない。複写したものもないそうだしこれは難しいかも

となると残す手は・・・ミィさんが借りた額は百数十万いっている。少し前だったら貸すのも躊躇われる額だが今ならそれも難しくはない

それに僅かな期間だがミィさんの事を見てきたし信用に足る人物だと判断している。なのでこの者達から借りたお金は私が耳を揃えて返すとしよう




「分かりました、私がミィさんの借金を立て替えますよ。それなら文句はないですよね?」


「エレナさん!?そ、それはダメですにゃよ!」


「大丈夫こう見えて私蓄えはそこそこあるので。一括で返せば今月の利息分だけでいいですもんね」




これが現時点で一番傷を負わない対策だと思う。こうすれば余分なお金は払わなくて済むしこいつらとの関係も断つことができる

そう思っての提案だったがこれに対して男達は渋い顔をしながら断ってきた




「いやぁお嬢ちゃん、こっちの猫の嬢ちゃんから返してもらわないと。それが借りたモンの筋ってもんでしょう」




なるほど、つまりこいつらは適当な理由をつけて毎月の返済額の殆どを利息分にしてミィさんから半永久的にお金を毟り取ろうとしているんだな。私から一括で返してもらうよりその方が断然儲けられるからそんな事を言ってくるのだろう

そうして私が返すミィさんが返すと押し問答をしているうちに男の1人が痺れを切らしてこちらに怒鳴りかかってきてまた胸ぐらを掴んでこようした




「いい加減さっさと払いやがれ!」


「ちょっと暴力は良くないですよ」


「ぎゃああああああ!!」


「兄貴ー!」




私がその手を振り払うと兄貴と呼ばれた男は地面を転げ回った。そんな力を入れたわけでもないのに大袈裟もいいところだ

男はわざとらしく怪我をしたような立ち振る舞いを装いながらこちらに笑みを浮かべてきた




「ぐ、ふふ・・・これは治療費も貰わないといけなくなっちまったなぁ」


「勝手に転んどいて治療費って何言ってるんですか」


「うるせぇ!お前俺にこんな事してタダで済むと思うなよ!」




そう言って男達はミィさんが用意していたお金を奪うように取ってお店から去っていった。結局利息の話は決着がつかないままになってしまったが一先ず猶予はできたな

ミィさんには何度も頭を下げられた。お店の中にはまだお客さんもいて待たせてしまっていたので謝罪を受け入れ早々にその場を立ち去ることにした

そしてあの連中がまたやってくる前に何かしらの対策を施そうと考えて数日経ったある日、奴らは私達のお店にやってきた

しかも前回よりも大人数でその中心にはこの面子のボスと思われる男と包帯でぐるぐる巻きの兄貴と呼ばれていた男が立っていた




「おぅ、あんたがここの店の店主か?聞いたぞこの前うちの弟分があんたに世話になったそうじゃないか。見てみろようちの弟分、あんたにやられたお陰で骨をやっちまったんだとよ」


「いででで・・・」




露骨に痛がってる演技を見せてアピールしてくる男性。骨を折ったと言っているが手を軽く振り払っただけで脚が骨折するわけないだろ・・・帰っていく時なんから普通に走ってたじゃないか

また治療費だなんだと言われたら面倒だしさっさと追い払うか。そう思い男達に向かって言葉を発しようと瞬間、ゴミ出しを任せていたフレイヤがお店の中からやってきた

するとフレイヤを見た男達は先程までの威勢がまるで嘘のように静まり返り、子分の1人がボスに語り掛けていた




「お、お頭!あの女の後ろにいる角が生えてる女!やっぱり見間違いじゃないすよ!」


「フレイヤ、この人達と知り合い?」


「いえ、こんな奴等知りませんね」




フレイヤが一睨みすると男達は怯えて後ずさる。どう見てもフレイヤに対して恐れている様に見えるが

記憶にないようだが以前何かあったのは間違いなさそうだ。けどそうだとしたら話は早い

私はフレイヤにも先日の件は話していて、目の前にいる男達がこの者達だということも教えた。それを聞いたフレイヤは刺すような視線を向ける




「おい、ご主人様がせっかく猫女の変わりにお金を返してやると言っているのに何が不満なんだ?」


「あっ、いえそのぉ・・・」


「これ以上店の前で騒ぐようならこちらも黙ってないぞ」


「ヒッ!す、すみませんでした~!」




フレイヤの脅し文句に相手はたじたじ。最終的には謝ってきて私が立て替えたお金を受け取ると全力で逃げていった。やっぱり怪我なんてしてないじゃないか

けどお金は受け取ったしこれでミィさんのお店にも来ることはないだろう。フレイヤが関わってると知った今暴利を貪る行為はしなかっただろうけど

翌日、ミィさんに借金の件が片付いた事を話すと土下座までして感謝をされてしまった




「重ね重ね助けてもらってどうお礼をすれば・・・お金は必ず!死に物狂いで返すにゃ!」


「余裕がある時に返してくれればいいですよ。もう変なところにお金借りたりしちゃダメですよ」




これにて借金騒動は解決した。後日あの連中は他所でも同じような行為を繰り返した事で目をつけられお縄になったという話を聞いた

奴等は元盗賊らしく、ここ最近転移盤(ワープボード)の影響によって縄張りに来る商人が減り収入源が無くなって来たからやり方を変えてきたそうだ

盗賊と聞いて思い出したが、フレイヤは私と出会う前盗賊を襲って食料を確保していたと言っていた。奴等はその犠牲者だったからフレイヤの顔を覚えていたのかも

その行いが今回いい方に転がったということか。盗賊からしたら不運だが全く同情は出来ないな





読んでいただきありがとうございました!

「よかった」「続きが気になる」など少しでも気に入ってくれたいただけたら幸いです

次話投稿時間はTwitterの方で告知させて頂きます。よろしくお願いします!

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