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179話 料理の特訓

「じゃあまずはミィさんがどれ位料理ができるのか知りたいのでここに用意した材料を使って好きな様に作ってみて下さい」


「はいにゃ!」


「私達は審査員を務めますね」




本来この休憩時間いつもならシエルかフィオナが作ってくれたまかない料理を食べて夜の部に備える事になっているが、今回はそれをミィさんに担当してもらう

厨房に並べられた食材をミィさんが吟味し始める。それを私達は口に出さずに見守った

用意された材料を次々と選んでいき、選び終えると持ってきていた鞄から包丁を手にして野菜を切り出した。日頃から持ち歩いているのかミィさんの鞄には包丁の他にも調理器具や調味料等様々な物が入っていた

選ばれた材料から察するに今から作るのはカレーだろうか。工程としては材料を切って炒めて煮るという料理が苦手な私でもなんとか作れる料理だ

ただ一概にカレーといっても今は種類が沢山あるし作る人によって入れる具材やスパイスの分量によって味は大きく変わってくる。果たしてミィさんはどんなカレーを作ってくれるのか


ミィさんが野菜を切り始めてまず気になったのは野菜の切り方。一見手際がいいように見えるが切った野菜が薄かったり分厚かったりと不均等だった

フィオナ達のはいつもキッチリ均等に切られてるから余計気になったのかもしれない。私もよく大きさがまちまちになってしまう事があるから人の事は言えないが

気にはなったもののその程度なら煮てしまえば問題ないかな?とその時はそこまで指摘する事でもないかなと思い何も言わなかった




「にゃにゃっ!炒めるにゃ~!」




一通り切り終わった具材を今度は鍋に入れて炒めていく。油をドバドバと鍋にぶち込んでいき入れる順番等気にせず一気に投入

強火で具材をガンガン炒めていき頃合を見計らって水を入れていく。鍋の中の様子はカウンターからは見えないが今ところは順調そうに見える

グツグツと煮込んでいる間もアク取りをしたりと手際はいい。火が通るまで煮込み暫く経ったところでスパイスを投入し始める。用意されていた数種類のスパイスを手に取り鍋に入れていきかき混ぜていく

スパイスを入れた事によって一気にカレーっぽい匂いが漂ってくる。この調子なら案外美味しいカレーが完成するんじゃないだろうか

そう思いながら眺めているとミィさんはここで新たなお皿に手を伸ばした。お皿に乗っていたのはチョコレート、隠し味に入れるとコクが出るってフィオナ達も一欠片位入れてたりするな

しかしミィさんはお皿に乗せられている10枚程あったチョコを全て鍋に投入してしまった。そんな量のチョコと入れたら味がおかしくなってしまうのではないか?

助言等は言わないで見守るつもりだったがそれについてだけはどうしても気になってつい口を出してしまった




「ミィさん今のちょっとチョコ入れすぎな気がしたけど・・・大丈夫ですか?」


「問題ないですにゃ!これ位入れた方がまろやかになって美味しくなるんですにゃ!」




料理人である人にそう言われてしまったらそういうものなのかと納得せざるを得ない。普段料理をしているわけじゃないし仮にも店を構えている人に対してあまり口出すのも良くないと思いそれ以上は追及しなかった

そしてようやく完成されたカレーが私達の前に置かれた




「どうぞ召し上がって下さいにゃ!」


「い、いただきま~す・・・」



一抹の不安を抱えながらもカレーに目を向ける。見た目は普通にカレーだ。ちょっと匂いが独特な気もするが何か変な物が入ってるわけでもなさそうだし問題はなさそうに見える

スプーンでルーを掬い口の中へと運ぶ。すると口に入れた瞬間吐き気を催す様な生臭い感じが口いっぱいに広がった

これはもしや魚を入れたのか?それにしても生臭さ過ぎる。カレーでこんな感想が出てくるとは自分でも思いもしなかった

その上厚く切られた野菜は生煮えでゴリゴリしているし薄いのは焦げてしまったみたいで苦い

そして最後に隠し味として入れたチョコ。チョコの味は全く隠されておらず、むしろ前面に主張してきて甘ったるい

スパイスの味は全く感じられず魚の生臭さとチョコの甘さが口の中で暴れ回っている。想像しただけでも気分が悪くなる様な味を実際に口にした私の顔はみるみる青ざめていった

横で一緒に食べていた皆の反応も似たようなもので何人かはお手洗いへと駆け込んでいた




「えと・・・どうですかにゃ?」


「あぁあの・・・これはちょっと・・・うぷっ」




私達の様子からして美味しくはなかった事は察し暗い表情になりながらも感想を求めてくるミィさん。本人は至って真面目に作っていたから不味いなんて直球で言ってしまっていいものだろうか・・・

できるだけオブラートな言葉を選んで投げかけようしたその時、私よりも先にシエルが感想を述べ始めた




「酷すぎます。よくこんなのでお店を開こうなんて思いましたね」


「ハゥッ!」




ある程度自覚していたであろうミィさんにシエルが普段使わない様な言葉を容赦なく浴びせた。更に追い打ちをかけるようにシエルが問いかける




「まずこの生臭い原因は魚ですよね?どう処理して加えたんですか」


「処理はせず丸ごとそのまま入れましたにゃ。その方が出汁が出て美味しいかにゃと思って・・・」


「そのままだなんて正気ではありませんね。魚介類を入れるという思いつきは悪くないですが熱湯をかけたりお酒で加熱したりしないと臭みが残ってしまい美味しくなくなります。切った具材もバラバラで火が通ってないのもあります。それと隠し味についてですが・・・」




その後もシエルの料理講座は続いた。ミィさんは涙目になりながらもその話をしっかりと聞いてメモを取っていた

しかしシエルがこれだけ誰かに物申すのも珍しい。常日頃から私達のみならずお客さんにも満足してもらえるよう創意工夫をしていて料理に対し真剣に向き合ってくれている。きっとその分プライドもあるのだろう




「とりあえず私達で一から教えてあげるので頑張りましょう」


「よ、よろしくお願いしますにゃ!」




そこからシエルとフィオナの2人によるミィさんの料理特訓が始まった。今のままお店を開けてもマイナスにしかならないから一時的に従業員として雇うことにし、営業中は厨房の補助をしてもらい休憩時間と営業が終わった時間を使って料理のいろはを教えていった

ミィさんはせっかちなところがあるのか何事も手早く済ます傾向があり、具材を切る時なんかも素早さ重視でまばらになる事がよくあったのでゆっくり均等に切る事を心がけてもらい、慣れてきたら徐々にスピードを上げていくことにした

それと目分量で調味料を適当に入れすぎなところも指摘されていた。それで美味しくできているなら言うことはないだろうがミィさんのは同じ料理でも味が薄かったり濃かったりと作る度に味が大きく変わるレベルだったので、毎回入れる量はしっかり量り決められた分量を入れるようにと2人は口を酸っぱくして言っていた

そして出来上がった料理は当然無駄にする事はできないので、ミィさんの作った料理は毎回私達のまかない料理となった。最初に食べた料理のインパクトが凄すぎて若干トラウマになり始めは中々口に運ぶことが出来なかったが、フィオナとシエルが付きっきりで見ていたという安心感でようやく口にすることが出来た

これを何回も繰り返しいくうちにミィさんの料理の腕は徐々に上達していった。スキルはまだまだ未成熟だそうだが、1つ1つの工程を丁寧に行う事でそれをカバーできるようになっていると2人は話していた

初めに比べて見違えるように美味しくなったこの料理なら自分のお店で出しても問題ないんじゃないだろうか。最終的にそれを決めるのはフィオナとシエルになるが

最後の審査としてミィさんのお店の料理を一通り作ってもらい、それを2人が味見して問題ないかを決める

緊張した面持ちで様子を見守るミィさんに全ての料理を確認し終えた2人が親指を立てて合格を言い渡した




「うん、これなら大丈夫そうですね」


「はい、お客さんにも喜んでもらえると思います」


「よ、良かったにゃあ・・・早速来週から営業を再開したいと思いますにゃ!皆さんも良かったら来てくださいにゃ。お2人共私に短い期間でしたけど本当に助かりましたにゃ!」




こうしてミィさんの特訓は終わりを告げた。今までの遅れを取り戻すのは大変だろうがミィさんならきっと乗り越えていいお店に変えていくだろう




読んでいただきありがとうございました!

「よかった」「続きが気になる」など少しでも気に入ってくれたいただけたら幸いです

次話投稿時間はTwitterの方で告知させて頂きます。よろしくお願いします!

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