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177話 開店初日

お店開店の日がやってきた。朝いつもより早めに食事を済ませて皆でお店へと足を運ぶ

改装したてでまだ汚れはないが来てくれた人が気持ちよく過ごせるよう念入りに清掃を行い、フィオナとシエルには厨房で料理の下準備をしてもらう

着々と開店の準備を進めているとテーブルを拭いていたセレーネが突如声を上げた




「あっ!肝心なものを忘れてたよ!皆ちょっと集まって~」




セレーネにそう言われた私達は作業を中断して集合、更衣室に姿を消して戻ってきたセレーネの腕には人数分の制服か抱えられていた

そういえばセレーネに制服を頼んでいたんだったな。あれ以降確認していなかったがどんな制服になったのかな

皆に配られたのは白シャツにカマーベストと蝶ネクタイ、黒のパンツと腰下に巻くエプロン。飲食店ではよく見かけるフォーマルな格好だ

流石に自作は時間が足りなかった様なので既製品を買ってきたそうだがセレーネにしてはまともなチョイス。私の要望も通っているみたいだし一安心

しかしいざ自分の制服を手に取って広げてみると何故か私のだけ皆と違うものだった。セレーネが私に用意してきたのはどこからどう見ても男物の執事服






「セレーネ、なんで私のだけ男物でしかも執事の服なの?間違ってるわけじゃないんだよね?」


「この前エレナが男性の姿に戻ったのを思い出してピンときたんだよ!スカートじゃないから問題ないでしょ?やっぱり男装もいいよね!」




スカートじゃなければ何でもいいとは言ったがまさか執事服を持ってくるとは・・・けど考えようによってはこちらの方が気持ち的に楽ではあるか?

任せる事にしたのはこちらだし用意してもらっておいてこれ以上文句言うことはできないので一先ずこの執事服を着る事にした

男物でも特注なのか私のサイズに合わせて作られているようで問題なく着ることはできた。こういうスーツは着慣れていないがこれはこれで悪くない気がする

皆も受け取った制服に着替えていく。うん、私の以外はちゃんとしてるしこうして見ると統一感があるから制服を作って正解だったかもしれないな

それ故に私の場違い感がより一層際立っている様な気がする・・・やはり今日を乗り切ったら私も同じのにしてもらおう




「素敵ですご主人様!」


「イケメン執事・・・オプションで執事の特別サービスを提供すれば若い女性客をたくさん呼び込めそうだね」


「皆も似合ってるよ。あとそこ!そんな訳分からないサービスはやらないから。さ、準備を再開しよう」




制服に着替えを済ませて準備を再開する。清掃よし、メニュー表よし、料理の下ごしらえよし、身だしなみも問題なし

30分前には全ての準備を終えてあとは開店時間を待つのみ。いつお客さんが来ても問題ないがお店を開く準備に夢中で碌にお店の宣伝をしていないから開店してすぐにはお客さんは来ないだろう

のんびりと気楽にやるつもりだからあえてしなかったというのもあるが。お客さんが来るとしたらお昼の時間帯とこの辺りに住んでる奥様方の井戸端会議の場として位だろうか

初日だし10人20人も来れば上出来。そこから固定客がついてくれれば御の字だ

そしていよいよ開店の時間がやってきた。開店の掛札を掛けに行こうとドアを開けようとした時、何やら外がザワついていたので様子を窺いに出てみるとそこには沢山の人が列をなしていた。どこのお店の列かと思ったらその列の最前は私達のお店の前にいる

お店の席数より明らかに多い人が並んで待っている。宣伝もしていないのにどうしてこんなに行列ができてるんだ?

今はそれよりも早くお店を開けよう。いつから待っていたのか分からないがお客さんを待たせてはならない




「お待たせしました!順番にご案内しますのでこちらのお客様までお入りください!お待ちのお客様はもう少々お待ちを。こちらのメニュー表をご覧になってて下さい」




私がお客さんをお店に入れると皆予想外の数に慌ててお客を案内していく。開店早々お店は瞬く間にお客さんで溢れ返り次々と厨房に注文が入る。開店直後から厨房はフル回転だ

フローリア、セレーネ、ラミアスにはホールの仕事に専念してもらい、私とフレイヤはサラダや飲み物の提供を行った。いくら2人の手際が良くても限界があるし細かい調理は出来ずとも材料を切る位は出来るのでホールとキッチン両方を手伝った

そうだ、外に待たせているお客さん。まだ日中とはいえ長い事外にいたら体が冷えてしまうだろう

私はせめて暖かい飲み物とでも思い大人には紅茶を、子供にはホットココアを淹れそれぞれ提供した




「お待たせしてすみません。こちらサービスですので良ければどうぞ」


「いいのかい?体が冷えてきてたから助かるよ~」


「ありがとうお兄ちゃん!」


「こんな格好してるけど一応お姉ちゃんなんだよ・・・」




外で待っているお客さんはとりあえずこれでなんとか凌いでもらうとして店内のお客さんには滞在時間を設けることにした。本来はもっとのんびりと過ごしてもらいたいところだが今回は仕方がない

フィオナとシエルが注文の入ったメニューを手慣れた手つきでどんどん作り上げていき、その料理ををラミアス達が次々と運んでいく。2人の料理を口にしたお客さんは皆絶賛してくれた




「ん~!このスープ野菜の旨味が凝縮されていて凄く美味しい!」


「このお肉も凄く柔らかい!ナイフがスッと入るわ!」


「このパナモの実を使ったスカッシュとかいう飲み物も癖になる刺激!」




フィオナとシエルの料理の方好評のようだ。シエルの分析によって再現された王城の味とフィオナの家庭的な味の両方を堪能できる盤石の布陣だからな

パナモの実を使った炭酸入りのスカッシュは孤児院の子達から直接仕入れて作った物。この時期にはまだ早いかと思ったが炭酸の刺激と搾りたてのパナモのフレッシュさがウケているみたいだ

今のところは順調そのもの、しかし初日からこれ程のお客さんが入ってくる事は想定していなかったので材料が大分心許ない。今すぐ無くなることはないので暫くは持ちそうだが、外で並んで待ってくれているお客さんの分を考えたら早めに材料を買い足してきた方がいいだろう




「フレイヤ!追加の材料を急いで買いに行ってきてくれる?この様子だと他のも足りなくなる気がするから一通りお願い!これリストね」


「分かりました!10分で戻ってきてみせます!」




フレイヤに空間保管(アイテムストレージ)を預け買い出しに向かわせた。そしてフレイヤは宣言通り10分ピッタリで戻って来た。これで材料の心配はなくなったのでお客さんの接客に集中できる

けれど捌いても捌いても次々とお客さんが減る気配はなく、お昼を過ぎてもその波は収まらず結局閉店間近まで列が途切れる事はなかった

止まり木という店の名前のイメージとは全く異なる1日となってしまった。行列についてはお客さんにそれとなく聞いてみたがどうやら原因はお店を譲ってもらったおばあさんだったらしく、私達が準備に忙しかったのを察して宣伝をしてくれていたようだ。それが人伝に伝播していって今日の行列に繋がったということか

おばあさんの好意では無碍には出来ないので頑張ったが楽しむとかそんな事を感じている暇はなかったな

最後のお客さんが帰った事を確認すると閉店の掛札を掛けた。営業が終了した途端皆グッタリとその場でへたり込んでしまった




「一日中料理作り続けて大変でしたぁ・・・」


「魔物を倒すよりキツかったぞ・・・」


「皆お疲れ~・・・」




全員1日中動き回っていたからもう足がパンパンになってしまっていた。休憩も交代でとったがあまりの忙しさにちゃんと休めなかったからな

ラミアスは途中でもう限界そうだったので座っても出来そうな会計をやってもらい、回復したらまた注文とったり運んだりと臨機応変に動いてもらった

お客さんは皆満足して帰ってくれたし制服も皆可愛いと好評だったから今日のところは良しとする。しかし週一とはいえ今後もこれが続いてしまってはお店の趣旨がずれてしまう

それに今回は何事もなく終わったが毎回あんな行列ができたらトラブルが起きる可能性だってあるだろうし・・・とりあえず次の開店日は今日みたいな行列ができてしまわないよう予約制にしてみよう

その日の夕食は皆疲れて何もする気になれなかったので近くの食堂で済まし、帰宅した後はすぐ眠りについてしまった。改善点も見つかった事だし次回はもっとゆったりとした空間が作れるといいな





読んでいただきありがとうございました!

「よかった」「続きが気になる」など思っていただけたら幸いです

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次話投稿時間はTwitterの方で告知させて頂きます。よろしくお願いします!

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