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176話 お店始めます

転移盤で多額の資金を得た私達は先日話していたフィオナが働いている所の常連さんの了承を得てお店へとやってきた




「いやぁフィオナちゃん達が使ってくれるなんて有難い限りだよ」


「気が早いですよぉおばさん。今日はお店がどんな感じか見させてもらうって話してたじゃないですかぁ」




フィオナと仲良さそうに話す常連さんは齢70はいってそうな老齢な女性、その歳でつい最近までお店を切り盛りしていたなんて立派なことだ。おばあさんはお店を始めた頃から夫と二人三脚で営業していたらしいが、数年前その夫に先立たれてしまってから最近に至るまで従業員も雇わず1人で奮闘していたけど先日腰を酷く痛めた事をきっかけにお店を閉める事にしたと改めて経緯を聞かされた

そんな人生を共にしてきたお店を手放してしまって名残惜しくないのだろうかと感じた私は治癒魔法で腰を治そうとおばあさんに打診してみた。そうすればまだお店を続ける事ができるだろうとの考えで提案してみたが、おばあさんの言い分として治してもらったところでこの歳ではまたどこかしら痛めるだろうからとやんわり断られてしまった

元々旦那さんが亡くなった時に自分が怪我や病で続けるのが困難になったらお店を閉めようと決めていたようなのでそれ以上口を出さなかった。おばあさんが考えて決めた事にこれ以上言うのは野暮というものだろう

今は痛みを(やわ)らげる薬を医者から貰っていてそれが良く効いていて楽になったとも語っていた




「さぁ着いたよ。ここが私が使っていた店さね」


「おぉここかぁ」


「結構家から近い場所にあったんですね」




そんな話を聞いているうちにおばあさんのお店に到着。ここに来る時から思っていたがおばあさんのお店は私達の家と然程離れていない場所に建っていた

おばあさんのお店はキラキラとお洒落な雰囲気を醸し出す今のお店とは違い昔ながらという言葉がピッタリ当てはまる様な落ち着いた風情のある外観をしている

街の中心からは離れているのも個人的にポイントが高い。お店を繁盛させるというより皆で楽しく出来ればそれでいいと私は考えている。立地だけを考えたら家からもすぐ来ることができるし近くには商店があるから何かあってもすぐ買いに行けるちょうどいい場所といえるだろう

お店の中は外観に違わない趣のある内装。今は止まっているようだが天井にはシーリングファンがあり店内の所々にはアンティークが飾られていた

おばあさんにはまだ聞かされていなかったが見たところここは喫茶店だったのだろうと察しがつく。カウンターには長年使われていたであろうサイフォンやティーポッド、コーヒーミルも置かれていた

調理器具や食器は片づけられている途中でテーブルに置かれたまま、お店は見渡した限り埃等の汚れは一切ない。閉店した以降も欠かさずお店を綺麗にしていたのがよく分かる


カウンターとテーブル合わせて20人程が入る広さ。満席になったとしても私達の人数であれば十分対応できるだろう

けどテーブルと椅子は長年の蓄積でか脚の高さが均等でなくなってしまっている。手で動かしてみるとガタガタと揺れて座り心地が悪くなっていそうなのでお店をやる際は買い替える必要がありそうだ。素人目線でパッと見て分かるのはこれ程度だろうか

一通り店内を見て回って思案を巡らせる。色々と手を加える点はあるだろうが場所も雰囲気も悪くない

皆からはお店をやる事について賛成も得ているし、かくいう私自身も下見している間に様々な想像を膨らませてしまっている

ここまできたらもう答えは決まっている。私は椅子に腰掛けていたおばあさんにこのお店を引き継ぐ事を告げた




「おばあさん、今度は私達がここでお店をやらせてもらいます」


「本当かい?そりゃあ良かった。貴女達が使ってくれればここもきっと喜ぶよ。私に気を遣わずにお店は貴女達の好きなように模様替えしてもらって構わないからね。頑張ってちょうだい」





おばあさんから温かい言葉も貰い私達はここでお店を開く事に決めた。始めるとなったら色々と準備が必要だ。まずお店を開く手続きをするのに冒険者ギルドとは別のもう1つのギルド、商業ギルドに行って書類を書かなくてはならない

以前孤児院の子達が市場で販売する為の申請をしたのもここだ。だが販売許可を貰うのとお店を開くのとでは書く量が全然違った

飲食の営業を許可する申請書や内装の配置が把握できる見取り図。その他にも開業の届出やおばあさんの土地を相続する書類を書いたりとちんぷんかんぷんだったが、ギルドの担当員のお陰でなんとかそれらを済ませることができた


手続きが終わったらお店に手を加えていく。おばあさんのお店は木造で塗装が施されていたがその塗装が所々剥がれていたので、一度全て剥がして下塗り、上塗りの手順で新しく明るめの色を塗っていく

魔法でパパッと済ませるのではなく自分達で協力して進めていく。家を作るのとは違い外装の塗装であれば魔法を使わずともなんとかなりそうだしそっちの方が完成した時の達成感もひとしおだろうという事で手作業で頑張っている

上の方は空を飛べるフレイヤとフローリアに任せて残りは下を塗っていく。下の方が人数が多く早く終わったので2人が上を塗っている間に下のメンバーは外にあった8畳位のスペースでハーブを育てていた場所を利用してオープンテラスを製作する

家にもテラスがあるがやはり陽気のいい日にする外の食事は普段とまた一味変わってくるし気持ちいい風に当たりながら一服するのも一興だろう。庭にあったハーブは捨てるのが勿体ないと思ったので傷つけないよう運んで家で育てる事にした

1日にかけて外装の塗装とオープンテラスを完成させ、その次の休みには内装に取り掛かった。厨房は料理を担当となるフィオナやシエルには少し低めの作りとなっていたので高さが合うように改良。それとコンロ、年代物で今のと比べると制限があって火力不足の様に感じるのでそれも変えることに

シーリングファンはそのまま使わせてもらう事にしてその他のアンティークはおばあさん宅に保管。テーブルに椅子も新しくしてクロスを敷いていく

床にワックスをかけてピカピカにしたら内装も完了、丸2日かけてようやくお店を一新させることができた。こういう時人が多いと分担で作業が行えて効率が上がるから助かるな


お店の改装が終わったら次はメニュー決めと制服の用意。メニューは調理を担当するフィオナとシエルが決める

制服の件に関して私はそんなに気合いを入れずとも汚れてもいい様な服の上にエプロンだけでいいのではないかと言ってみたが・・・




「せっかくだから皆で制服を着たい!」




というラミアスの要望があったので制服にする事に。それはいいとしてやはりスカートを穿くのは避けたかったからその事について話すとセレーネが




「スカートじゃなければいいんだよね。この前エレナに似合いそうなの見つけたからボクに任せてよ!」




と言ってきた。セレーネの言葉に不安しかなかったがスカート以外の制服なら何でもいいかと思い任せることに

メニューが決まったらそれを基に材料費等の費用を計算して価格を設定していく。といってもここは趣味の一環としてやるので稼ぎは一切考えない採算度外視の価格で提供する

赤字にならなければそれでいいかなと。最悪赤字になっても他で賄えるのでその辺りはあまり困る事はなかった

お客さんに出すものなので念の為皆で試食会を行う事にしたが、2人の作った料理に問題があるはずもなく試食会は滞りなく終わった

粗方の準備を済ませあとは開店するのみ。そう思っていたがフレイヤの言葉で重要な事を決めるのを忘れていたのに気づく




「ご主人様、お店の名前はどうしましょうか?」


「あっ・・・すっかり忘れてた」


「店の長となる主が決めた方がいいのではないか?」




色々と準備するのに忙しくて肝心の店名を決めていなかった。お店の名前とか考えた事がないからパッとは出てこない

こういう時はどういうお店にしていきたいかを考えたらいいというのを聞いた事がある

行列が出来るような賑わいのある店ではなくこの道を通る人がこのお店を見てつい入りたくなる様な、そしてのんびり羽を伸ばせる癒しの空間となる様なそんなお店を目指していきたい




「憩い喫茶"止まり木"なんてのはどうかな?」


「止まり木・・・うん、ボクはそれでいいと思うよ」


「その名前でいこう!」


「決まりです!そうと決まれば看板作りですね!」




皆からの合格ももらいお店の名は止まり木に決定した。早速看板に店名を書いていき店の目立つ場所に飾る

来週全員の休みが合うその日が開店日、お店を始めるまでの準備は中々骨が折れたがようやくここまできた。皆も当日を楽しみにしているし楽しい1日になるといいな



読んでいただきありがとうございました!

「よかった」「続きが気になる」など思っていただけたら幸いです

少しでも気に入ってくれた方ブクマ、評価、感想等々頂けると大変励みになります

次話投稿時間はTwitterの方で告知させて頂きます。よろしくお願いします!

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