175話 大金を得る
転移盤が完成しセフィリアに預けた数日後、私は国王への謁見が許された
先日言っていた通り、セフィリアが転移盤を国王の前でも同様に実演してみせてその有用性を説いてくれたんだろう
久方ぶりに玉座の間へとやって来るとそこには国王とセフィリアが既に待ち構えていた
玉座の前まで行き、跪いて今回の謁見を許可してくれたお礼を述べた。国王からはセフィリアと交友関係を築いている事に関してのお礼を言われ、一通り簡単な挨拶を済ませた後に本題へと入った
「さてエレナ君、娘から転移盤とやらの話を聞かせてもらったよ。実際に動かしてみたが素晴らしい装置だ。どこでこんな知識を得たのか教えてもらえるかな?」
「お褒めに預かり光栄です。製作方法については同居人である私の仲間が発見しました。私はそれを基に作っただけです」
「ふむ、なるほど。ちなみにこれと同じ物をまたすぐに作ることは可能だろうか?」
「転移盤に使われている素材の収集、特に中央に埋め込んでいる巨大な魔力結晶は中々手に入らないので直ちに作り上げるのは難しいかと思われます」
私がそう言うと国王は暫く考え込んだ。実際のところ素材は魔法で作り出したものなので大量生産も出来なくはないが、正直あんな作業ばかりしていたら体が持たないので国王には不敬ではあるが本当の事は伏せておくことにした
それに数を増やすとなると当然その分警備を増やす必要もある。いきなりあちこちに転移盤を設置しても管理が行き届かない恐れがあっては安心出来ない
「分かった。一先ずこの転移盤は試験的に運用していき問題がなければ実用に移ろうと思う。この件に関しての褒美は後日でよいかな?」
「そんなお礼だなんて滅相もありません。私が勝手に動いてした事ですから」
「遠慮する事はないですよエレナさん。これはそれ程素晴らしい物だということです」
国王とセフィリア2人から言われて断り続けるのも逆に失礼かと思い有難く頂く事にしてその日はお暇させてもらう事にした
そして謁見から数日後、転移盤の試験運用が終わり実用に乗り出すというタイミングでセフィリアに再び呼び出され王城に行ってみると封筒を差し出された。封筒の中には紙切れの様な物が入っていて何かと問うと小切手との事だった
「エレナさんこちら先日言っていたお礼になります。どうぞ受け取って下さい。確認してもらって足りない様でしたら私がお父様に直談判しますので!」
「いやいや、そんな貰えるだけでも名誉な事だから。有難く頂きます」
そう言われ、セフィリアから受け取った封筒を開けて小切手の額を確認する。一、十、百、千、万、十万、百万・・・・おかしいな数え間違えかな?
自分の数え間違えかと思いもう一度落ち着いて桁を確認するがやはり間違えではない。小切手には確かに億の桁までゼロが記入されていた
書き間違えたのかと思い小切手をセフィリアに返して確認してもらった
「セフィリア・・・これ額間違ってるよ」
「えっ?あぁ申し訳ありません、やはり少なすぎでしたよね。お父様に抗議してきます!」
「あっ、いやそうじゃなくてその逆なんだけど。この金額ちょっと多すぎじゃない?」
「いえ、それで間違いありませんよ。エレナさんが作ってくれたこの転移盤というのはそれ程価値のあるものだということですよ」
そう平然と言ってのけるセフィリアの顔は全く冗談を言っている様には思えなかった
夢ではないかと頬が赤くなるまで強く抓ってみるがやっぱり夢ではない。本当にこの金額が私の手に渡るのか・・・そう思うと手が震えてきた
まさか思いつきで作ったものがこんな莫大なお金へと変わるなんて・・・こんな大金前世でもお目にかかったことがないぞ
私はまずこれ程のお金を扱った事がないのでどう保管するべきかを考えた。この大金をそのまま自分の懐に収めておくのは精神衛生上あまりによろしくない
セフィリアにその話をするとこういうお金は銀行という場所に預けるといいという事を教えてもらった。昔はそういう場所がなかったし基本お金は自分で管理していたので今の今まで利用した事がなかったが、そこに行けば厳重な管理体制の元安心してお金を預けることができるらしい
この小切手もその銀行に渡すことでお金に換えてくれるのだとか。それを聞いた私はその日のうちにレジティアにある銀行に顔を出して口座というもの作ってそこにお金を預けた
それから更に数日経ったある日、レジティアに転移盤が設置されて王都まで行き来することが出来るようになったと大々的に発表された
大勢の人が見守る中最初に盤上に上がったのはレジティアの領主であるグランツ侯爵。民衆の前で侯爵が姿を消すと周囲がザワつくが、数分して侯爵が何事もなく帰還してくると今度は歓声が湧き上がった
今はトラブルが起きないよう様子を見ながら運用していくそうなので貴族や商人といった一部の者しか利用できない状態だが、行く行くは料金等も定めて一般利用も視野に入れていくそうだ
そしてその料金の一部が私の元に入るという事も聞いた。つまり今後転移盤が増えて普及していけばする程お金が入ってくるということになる。もう働かなくてもいいんじゃないだろうか・・・
しかし大金が入ったからといって今までの生活環境が変わる事もなく、私達はいつも通りの生活を送っていた
転移盤の稼働も順調そのもので、レジティアと王都の間で起こっていた盗賊の被害件数も減少傾向にある
この様子であれば今年中には市民の利用も可能になり王都からもレジティアに来る人が増えてより活気づくことになるだろう
そんな近い将来を予想しながらソファで寛いでいると仕事を終えて帰宅してきたフィオナが話しかけてきた
「エレナさん、相談があるんですけどちょっといいですか?」
「ん?どうしたの?」
「エレナさんお店を始める事に興味ありませんか?」
何の前触れもなくフィオナが唐突にそんな事を聞いてきたのには理由があった。今日フィオナが働いているお店の常連さんがお店にやってきていつもの様に談笑していたそうだが、その人が腰痛を患ってしまい経営していたお店を続けるのが困難だということで閉めるらしく、今お店の貰い手を探しているが中々見つからないとボヤいていたらしい
それで私にお鉢が回ってきたということだ。確かに今は金銭面にかなりの余裕があるからお店を始める程度は難しくない
だがお店の経営なんて今までしたことがないし本格的にやるとなると従業員だって雇わなくてはいけない。そうなると当然責任もついてくる
その事をフィオナに話すと趣味の範囲で週一程度だったらどうだろうかと提案された。それ位であれば従業員を雇わずとも皆で休みを合わせてやれば十分事足りるだろう
お店をやるとしたら喫茶店とかがいいだろうか。家には料理が得意な2人がいるから飲食店の方が始めやすい気がする
あまり繁盛させる事は考えず落ち着いた雰囲気のお店がいいな
その辺りはお店をやると決まってから追い追い決めていけばいいだろう。まずは意見を求める事にした
「週一位だったらボクは全然問題ないよ。面白そうだしいいんじゃないかな」
「私も支障ありません」
「我も接客やってみたいぞ!」
皆にこの事を話すとお店を開く事に賛成してきた。全員からの了承も得たことだしフィオナの話を前向きに検討することにしてみるか
後日フィオナが常連さんにお店の下見は出来ないかと聞いてきたところ、快く了承してくれたので皆でお店を見に行ってみることにした
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