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170話 シエルの1日

明朝、太陽が顔を出し始めた頃から私の1日は始まる。体内で設定した時刻丁度に目を開け給仕用の服に着替えて顔を洗う

私、自動人形(オートマトン)は普通の人と違い皮脂や汗が出ることもなく自動洗浄機能があるので洗う必要はないけれど、他の皆さんが行っている習慣なので私もそれに習って行っている

身支度を整え終えたらまず洗面台の方へと向かい、昨日着ていた洋服達を洗っていく。最近街に出回り始めた洗濯機という新しい装置で、衣類を入れボタンを押して待つだけで洗濯が完了するという優れ物だ。この時間から始めれば朝食を終える頃に丁度終了する

洗濯はこの装置に任せ、私は次にキッチンへと向かいお弁当作りを始める。今日はラミアス様の好物であるハンバーグを作る予定だ

昨日下ごしらえして一晩寝かせておいたハンバーグのタネを空気を抜きながら丸めていく。食卓に出す場合はもっと食べごたえのあるサイズまで大きくするが、そうするとお弁当箱にハンバーグしか入らなくなってしまうのでお弁当の時は一口サイズまで小さくして焼いていき、余っているスペースに彩りや栄養バランスを考えたおかずを用意して詰めていく


お弁当作りばかりに気を取られてはいけない。並行して朝食の準備にも取り掛かり始める

根菜や葉野菜を細かく切っていき軽く炒めた後沸騰した鍋に入れて煮込んでいく。野菜が柔らかくなったら味付けしていき味が整ったらスープは完成

次に熱したフライパンに薄く油を引きベーコンを置いていく。軽く焼き目がついたらその上に卵を落として蓋をして暫く待つ

その間に前日購入したパンをオーブンに入れてきつね色になるまで焼き上げ、片手間でサラダを作り始める

淡々と調理を進めていくと2階から下りてくる足音が聞こえてきた




「ふぁ~・・・おはようございますシエルさん、今日も早いですね。すぐ手伝いますね」


「おはようございますフィオナ様、よろしくお願いします」




私の次に起きてくるのはフィオナ様でこうしていつも料理の手伝いをしてくれる。フィオナ様は料理が得意な方で飲食店でも働いている為手際が良く、調理途中だった朝食の準備を代わって頂けたので私はお弁当作りに専念できた

お弁当を作り終え、朝食の準備が整うとそのタイミングで今度はエレナ様が起きてくる




「おはようシエル、フィオナ」


「おはよう~」


「おはようございますエレナ様、フレイヤ様。ただいま朝食お持ち致します」




エレナ様が起きてくると決まってフレイヤ様も一緒にやって来る。そしてその後にラミアス様、セレーネ様、フローリア様の順番で大体やって来て静かだった朝から一転、賑やかな食卓へと変貌する

本来であれば給仕を務めている私は全員が食べ終わった後に済ませるべきだが、ここでは皆さんと一緒に食卓を囲む事を許されている

食事をしながら皆さんの様子を窺う。セレーネ様は夜更かしをしていたのか目にクマができていて寝惚けながら何もないお皿をフォークでつついている。フローリア様は偏食気味で野菜をあまり好んで食べてくれないので健康面の為に食べてもらえるよう色々と工夫しているが、それでも野菜にはあまり手をつけずベーコンエッグとパンばかりを口に入れていた




「ごちそうさま、今日も美味しかったよ。それじゃあ仕事に行ってくるね。いつもの時間に帰ってくる予定だから」


「行ってらっしゃいませ、お気をつけて」




朝食を食べ終えると皆それぞれ仕事へと向かい、ラミアス様は学校へと出掛けていった

家には私1人だけとなり再び静寂の時間が戻ってくる。汚れたお皿を軽く洗い流して自動洗浄装置へと並べていく

エレナ様が新しく作ってくれたこの装置のお陰でお皿洗いの時間が短縮されて次の工程に素早く移ることができるようになった

洗面台に行くと洗濯はしっかりと終わっており、籠に洗濯物を入れていって2階のベランダへと干していく。最近下着を盗む不届き者もいたので下着類は人目のつかない場所に干している

干し終わったら家の中の清掃、毎日掃除しているのでそこまで汚れていないが皆さんに気持ちよく過ごして貰う為に欠かさず行っている。家が広くなった事で掃除する場所も増え時間がかかるけど、清掃工程が変わる訳では無いので誤差の範囲だ


庭の掃除を終えて家の仕事が一段落ついたら材料の買い出しへと向かう。毎朝各自宅のポストに投函されているチラシを記録してその日最も安いお店を回り、可能な限り安価な値段で手に入れる

お金は皆さんが十分な程稼いでくれているので余裕はありますが、だからといって私が無駄遣いするわけにはいかないのです

夕食の献立は先日エレナ様達が獲ってきたサラマンダラの肉を使ったシチュー。そのシチューに使う野菜と今朝食べて無くなったのでパン屋と2店舗のお店を回る。まずは八百屋から




「おぉシエルちゃん!今日は何にするんだい」


「こちらの人参とじゃがいも、それとブロッコリーをお願いします」


「あいよ!これじゃがいも1個おまけしとくね。いつも来てくれるからそのお礼だ」


「いいんですか?ありがとうございます」




ここは他のお店よりも格段に安いのでこの街にやって来た頃からよくお世話になっている。常連となった今はこうしてよくおまけもつけてくれるので私の行きつけのお店だ

この後パン屋に寄りバゲットを2本購入して帰宅。お昼は私1人なので朝の残り物で適当に済ませ、午後は乾いた洗濯物を取り込んで畳んでいってそれが終わったらお風呂掃除を済ませる

一通りの家事を終え、時間が余った時には銃の訓練を行う。街の外に出て魔物を相手にする日もあれば地下で訓練する日もあるがこの日はメンテナンスの時間に当てた

これも以前エレナ様に作って頂いた武器なので壊さないよう手入れは怠らない

そうしてるとあっという間に夕刻が迫ってくる。この時間帯になるとラミアス様が1番に学校から帰宅してくる

それを皮切りに他の方達も続々と仕事から帰ってきて家の中がまた賑やかになっていく

夕食時に皆さんの今日起こった出来事等を聞かせてもらっている。今日出会った人や魔物の事、いい事があったり災難に遭ったりとその日によって様々。その全てを記録として保存

夕飯が食べ終わりいつものように汚れたお皿をキッチンへ運んでいるとリビングで寛いでいたラミアス様が声をかけてくる




「シエル!ちょっとこっちに来てくれないか?」


「なんでしょうか?」




ラミアス様に呼ばれたのでお皿を置きリビングの方へ行くと、ソファに座るよう言われたので言う通りにすると後ろへと回り込み私の肩を揉み始めた




「学校の友達がこの前母親に日頃のお礼にってマッサージをしてあげたら凄く喜んでくれたみたいでな、だから私もいつも家を綺麗にしてくれてるシエルに肩を揉んでやろうと思ってな!」


「シエルは肩とか凝らないんじゃないか?」


「こういうのは気持ちが大切だからいいのだ!」




フレイヤ様の言う通り自動人形に疲労という概念はないのでそんな事をしてもらう必要はない。けどどうしてだろうか・・・こうされているとなんだか胸の奥が温かくなるような穏やかな気持ちになってくる

私に心なんてないと思っていたし必要だとも感じていなかった。しかしこの感情を一度覚えてしまった後ではそんな事もう微塵も思えなくなっていた




「ふふっ、ありがとうございますラミアス様。とても気持ちいいです」


「あっ!笑った!」


「シエルさんはいつもの表情でも可愛いですけど笑うと一層素敵ですよ」


「最近笑う事が増えたよねシエルは。いい事だと思うよ」




確かに最近は笑う事も増えたような気がする。無意識のうちなってしまっているようだ

そういう表情ができるようになったのはきっと皆さんに出会えたからだろう。あの時見つけてもらうことがなかったら今もずっと遺跡の奥で眠っていたかもしれない

私ができることは限られるかもしれないが、この生活がずっと続けられるようこれからも皆さんの生活を支えていこう







読んでいただきありがとうございました!

「よかった」「続きが気になる」など思っていただけたら幸いです

少しでも気に入ってくれた方ブクマ、評価、感想等々頂けると大変励みになります

次話投稿時間はTwitterの方で告知させて頂きます。よろしくお願いします!

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