17話 王女と私の一時
王女セフィリアの願いを聞き入れ2人で街へとやってきた
その道中セフィリアと話していて分かったが、今まで王城から出た事はあってもお店にはいつも眺めてるだけで入ったことがないという
そのためか街へ向かっている最中は終始ソワソワしていた
「エレナさん、始めはどこに行きましょうか」
「そうですね・・・うん?」
どのお店に入ろうかと辺りを見回していると周りの視線がこちらに集中しているのに気がついた
私達を見て何やらひそひそと話している
まさか私が聖剣を手にしたのがもう広まっているのか。それともセフィリアの方か?
髪型を変えた程度じゃすぐ気づかれてしまうか。これは少し変装した方がいいかもしれないな
セフィリアを人気のない路地へと連れていき、事情を話して了承を得てから変装を施す
私の白い髪も珍しいがセフィリアも淡い水色の髪もここでは珍しく相当目立つので、魔法で頭髪の色を黒へと変えた
「私の髪が黒髪に?」
「時間が経てば元に戻るので安心して下さい。これで王女様と気づかれる事はないと思います。あと念の為これを」
"空間保管"からフィオナが購入した度なしの眼鏡を渡す
なんでもお洒落の一種で買ったようだが、ちょうど役に立って良かった
こうすればまず王女だと気づかれる事はないだろう
同じように私も黒髪に変えると今度はセフィリアが近寄ってきて私の髪を弄りだした
「せっかくですからエレナさんも髪型を変えましょう♪」
生まれてこの方髪型を変えようなんて考えたことがなかったが、セフィリアもしていることだし私も少し変えてみるか
一番簡単そうなポニーテールで髪をまとめ、セフィリアに見せると高評価をもらったので私達はこの姿で再度街中へと出た
「そうだ。ここにいる間は周りバレないようリア様とお呼びしてもよろしいですか?」
「リアですか。いいですね!分かりました♪」
無礼な感じもしたが当の本人が愛称みたいで嬉しいと喜んでいたので問題ないだろう
お昼を食べ損ねていた私達は食べ歩きしながら街を散策し、最初に射的場に入った
魔力を込めると玉が撃ち出される銃で棚に置かれている景品を落として手に入れるゲーム
扱い方が分からず戸惑っているセフィリアにアドバイスをしながら挑戦
1、2発名目は惜しくも横を通過し3発目は僅かに掠る
4発目でようやく当てるも当たり所が悪く落とすことが出来なかった
「むぅ〜。もうあと1発しかないです・・・」
「じゃあ少し手伝ってあげますね」
「えっ・・・?きゃっ!」
セフィリアの背後に回って覆いかぶさるようにし、照準の補助を手伝ってあげた
「肩の力を抜いて息を吐いて。よく狙って下さい」
「ひゃ、ひゃい!」
セフィリアは言われた通りにし、狙いが定まって引き金を引くと見事景品に命中して落とす事ができた
「当たった!当たりました!やったー!」
初めて景品を手に入れた事が嬉しかったのだろう。セフィリアは私の手を握って飛び跳ねていた
セフィリアがずっと狙っていたのは蝶の形をした髪飾り
早速自分の頭につけるのかと思いきや、その髪飾りを私の方に差し出してきた
「あの、エレナさん・・・よければこれ」
「私にくれるんですか?でもこんな可愛いの私には・・・」
「きっと似合いますよ。ちょっと屈んで下さい」
セフィリアに頭を下げるよう言われたので気恥ずかしい気持ちはあったがつけてもらうことにした
私の髪に付け終わると手鏡で見せてくれたが、やはり違和感が凄い
「どうですか?変じゃないですか?」
「最高です!凛々しさの中に可憐さも加わって・・・言葉になりません」
そう言うセフィリアの鼻からは血が垂れていて私は慌てて服につかないようハンカチで拭ってあげ、鎮まったの確認してから次へと向かった
「あの女狐〜!ご主人様とイチャイチャして〜!」
「落ち着いて下さいフレイヤさん。デートといっても女の子同士なんですから」
セフィリアがエレナと2人きりのデートを希望した為、フィオナとフレイヤはシスカと共に別行動をしていた
が、やはり2人の行動が気になった為、こうして尾行して様子を窺っている
「消し炭にしてやろうか・・・」
「そんな事したら私達一生お尋ね者ですよ〜。ほら、普段と違うエレナさんを見て気を静めて下さい」
「確かに新たな一面を引き出してくれたところは評価しよう・・・が!あんなに密着することはないだろう!うぅ・・・ご主人様〜」
フィオナは情緒がぐちゃぐちゃになったフレイヤの管理でそれどころではない
それに加えシスカまで尾行に乗り気になっていて2人を制御するのに手一杯だった
「あっ!あそこの道を曲がってったよ」
「よしっ。ご主人様に気づかれないようこの距離を保って見失わないように行くぞ!」
「はぁもう・・・私達も観光しましょうよ〜!」
私達が次にやってきたのはおばけ屋敷?なるものだ
お店の説明によるとなんでも中は迷路になっており、召喚された死霊系やアンデッド系の魔物が配置されていて入ってきたお客を脅かすという出し物らしい
迷路から抜け出さなければ延々とそれが続くという。こんなもの前世にはなかった為興味深く、そこに入ることにした
「よし、では行きますよ」
「はっはい・・・」
建物に入ると中は真っ暗で、所々にある照明を頼りに進んでいった
その間セフィリアはずっと私の腕をギュッと掴んで離さない
無意識なのか目一杯力を入れてきて跡がつきそうだ・・・
この薄暗さの中で魔物に脅かされながら迷路を攻略しなければならないのだから普通の人だったらそれなりの時間を要するだろう
お店の人も耐えられなくなったら所々にリタイアできる扉があるとも言ってたな
セフィリアがきつそうだったらそれを使って出るとしよう
「リア様大丈夫ですか?」
「ぜ、全然問題ないで」
「ぐおおおお!」
「きゃあああああ!」
悲鳴と共にセフィリアが思い切り私に抱きついてきた
ゾンビか。これ位は前世で魔王軍幹部の1人だったリッチと戦った時に嫌という程見たから今更何とも思わないな
とはいえセフィリアは別だ。私はこっそり空間を把握する魔法を使用し、迷路の全体図を把握して最短距離で出口を目指した
「リア様、私から離れない下さいね」
「はぃぃ・・・」
セフィリアは怖がりながらも私の腕をしっかりと掴んでついてくる
出口に近づくにつれ魔物の数も多くなり様々な魔物が脅かしにやってきてその度にセフィリアの悲鳴が轟いた
対して私は出てきたのがどれも下級の魔物だった為、大した恐怖を感じることもなくものの数分で出口に到着することが出来た
「はぁぁ〜怖かったです・・・」
「大丈夫ですか?」
怖さから解放されたセフィリアはその場でへたり込んでしまった
するとそこへ先程の店員がベルを鳴らしながらやってきた
「おめでとうございます〜!お客様過去最速で攻略されましたのでこちらを差し上げます」
店員が渡してきたのは綿クラゲに乗れるペアチケット
綿クラゲとは綿のように軽くて常に宙に浮いている生物で、それに乗って王都の景色を空から眺められるというもののようだ
午後から遊び始めたということもあり、辺りは薄暗くなり始めているし夜景を見るのにちょうどいいかもしれない
「エレナさん!早速行きましょう!」
セフィリアに手を引かれながら私達はその乗り場へと向かった
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