166話 ヒナタの誕生日
セフィリアと共に新年を迎えた私達はシエルとフィオナが準備してくれていた新年の祝う料理を堪能し、5日程家でダラダラと羽を伸ばしながら過ごしていた
セフィリアはというと3日目程家に滞在したあたりでお付きの人達が痺れを切らして半ば無理矢理といった感じで連れていかれ、王都へと帰ってしまった。王女様には家の部屋は狭いのではないかと懸念していたが、余程居心地が良かったのか昼間から惰眠を貪ったりソファでゴロゴロと寛いだりと王城内であったら到底許されないだろうという程気を許していた
しかしまぁお城では常に気を張っているんだろうしここで位は身分を忘れて羽目を外したいのだろうと思い大目に見てあげて口には出さなかった。今頃王女としての業務が溜まって悲鳴をあげてるんだろうな
一方私達はというと私の妹ヒナタの誕生日前日である今日、皆でお祝いをする為カステルの村へとやってきていた。ここ最近は色々な出来事があって実家に帰ることができていなかったのでヒナタに顔を忘れられてないといいが
セフィリアも私の妹の話をしたら凄く会いたがっていたがお付きの人がそれを許すはずもなく妹に合わせる事は叶わなかった。けど自分で言うのもなんだがこんな辺鄙な村に来ても退屈だろうしなにより王女様だと知られたら村の人達の方が萎縮してしまうだろう
実家の扉を開けると目の前には両親と母に抱えられあやされているヒナタの姿が。私の顔を見るや否や父が満面の笑みで出迎えてくれた
「お~!エレナ帰ってきてくれたんだな!随分帰って来なかったから心配してたんだぞ」
「ただいま父さん母さん。ヒナタの誕生日を祝わないわけにはいかないからね。にしても心配って手紙でちょくちょく連絡してたんだしこっちの近況は知ってるでしょ」
「それでもやっぱり愛娘の心配をするのが親の心ってもんなんだよ。皆も久しぶり、新しい子もいるみたいだね。狭いかもしれないけどゆっくりしていってくれ」
「「お邪魔しま~す」」
両親に招き入れられ家の中に入ると家の中は少し荒れていて母は少し疲れているように見えた。聞くところによるとヒナタが成長したことで行動範囲が広くなり、あちこち歩き回っては色んな物に手をつけて暴れ回っているようだ
1歳を目前にして既にわんぱく娘で手に負えなくなってきているのか。私の時は大人しすぎて心配になるほどだったそうなのでヒナタにはかなり手を焼いているらしい
父もできる限り手伝っているようだがやはり仕事と掛け持ちするのはやはり難しいらしく、今もちょうどあやして落ち着いたところだったそうだ
前より元気になったからといって母が過労で倒れてしまったら元も子もない。私達がいる間位はせめて楽をして欲しいので手分けして家の掃除や御飯の支度をすることに
人数だけは多いので散らかっていた家の中はみるみるうちに元の姿を取り戻していく。粗方片付きキッチン周りに手を出そうとすると大きな寸胴鍋にシチューが入っていた
こんなに大量に作ってどうするんだろうか。私達が今日来ると知ってたわけでもないだろうし
「料理作ってたの?随分と大量に作ってるみたいだけど・・・」
「あぁ、それは明日村の皆に出す料理よ。ヒナタの誕生日に皆がお祝いしてくれるから」
村の人達も祝ってくれるとは有難いな。ただシチューの他にも料理を作る予定だそうなのだが、ヒナタの事もあってか随分と作業が押してしまっていると話す母
そこはシエルとフィオナの出番で私とフレイヤ、フローリアで町まで行って買い出しをし、その間セレーネとラミアスにヒナタのお守りを任せた
私達が買ってきた材料を素早い手つき捌いていき別々の料理に取り掛かっていく
その間私達3人は華やかにする為の飾り付け作りを始めた。様々な色の紙を丸めてもう1つの丸めた紙を鎖のように連結させていく。それを何度も繰り返していき部屋を一周させるまでの長さにして飾る
魔法によって即席で作った簡易テーブルをいくつか用意してテーブルクロスを敷いていく。その上にささやかではあるが花を添える
こちらの準備が大方終了した頃にはフィオナ達も下準備を終わらせていたので明日の誕生日になんとか間に合わせる事が出来た
一段落ついた私達は母が手伝ってくれたお礼にと淹れてくれたお茶を啜りながらヒナタの相手を務めた
「ヒナタ~、お姉ちゃんだぞぉ。少し見ない間に大きくなったなぁ」
「あぅ~」
「人間の子供というのはちんちくりんだなぁ。早く大きくならないと生存競争に生き残れないぞぉ」
「そんな事言っても分かるわけないでしょ」
ヒナタに声をかけていると笑みを浮かべながらハイハイしながら近寄ってくる。そして私の近くまで来るとハイハイするのを止め、何かに掴まることなく自力で立ってみせた。この歳になるともう立てるようになるのかと驚いたが、母曰く私は生後半年程度で普通に歩けるようになっていたらしい
おぼつかない足取りで私の元にやってきたヒナタはそれはもう見事なドヤ顔を見せてくれた。私にちゃんと歩ける所を見せたかったのだろうか、そういうところも実に可愛らしい
ヒナタを自分の元へと抱き寄せてみると今度は口をパクパクとさせて何かを伝えようしているようにみえた
「まぅ・・・マンマ!」
「今ママって!ヒナタがママって喋ったよ!」
「最近少しずつ喋るようになってきてるのよ。もう少ししたらエレナのことも呼べるようになるかもね」
それは楽しみだな、ヒナタに呼ばれるとしたらやっぱりお姉ちゃん?いや姉貴か?どんな呼び方にせよ姉としての威厳を保たなくては
その日は育児に疲れていた母の体を念入りに解してゆっくり休んでもらい、何かあった場合は私が対応できるようヒナタと一緒に寝ることに。母親がすぐ傍にいなかったからか何度かぐずったが、大泣きすることもなく眠りについた
そうして誕生日を迎えた当日、昨日下ごしらえしていた材料をどんどん仕上げていく。お昼前になると村の人達が続々と家にやってきた
小さな村とはいえ集まるとそこそこの人数となる。これだけの人数分の料理を作るのは2人共初めてなので私達も出来ることを率先して手伝い、誕生日会が始まる直前に何とか完成させる事が出来た
「今日は娘の為に集まってくれて皆ありがとう。もう1人の娘であるエレナとそのご友人達が今日の為に料理を用意してくれたので是非食べて行って下さい」
父が村の皆に感謝の言葉を述べて誕生日会が始まる。母が作ったシチューもシエルとフィオナが昨日から準備していた料理も大変好評で村の皆の胃袋を掴んでいた
「ヒナタちゃん誕生日おめでとう~♪」
村の子供達がヒナタの元までやってくると手に持っていた花冠をプレゼントしてくれた。様々な色の花で作られた花冠はヒナタの頭にピッタリのハマりとても可愛らしかった
ヒナタも嬉しいのかキャッキャと全身を使って喜びを表現しているように見えた
他の人達からも肌に優しい石鹸やオムツ等の消耗品を頂いた
そんな中、村の人ではないが見慣れた顔の女性がヒナタの元までやってきた。ケイティだ
「ケイティ、来てくれたんだ」
「昨日町で買い出ししてるところをたまたま見かけたの。妹さんの誕生日だったのね。これ、良かったら使って」
「プレゼント?ありがとう」
ケイティがくれた箱の中身は幼児向けの食器セット。これから自力で食べられるよう練習もしていくだろうから助かる
誕生日を知らない風な言い方をしてたがやっぱりちゃんと把握してるんじゃないか。受け取ってから何か仕込まれてるんじゃないかと勘ぐったりもしたが、流石に赤子相手にそれはなかったようなので一安心。有難く受け取った
最後に私達からの誕生日プレゼントで沢山の洋服を用意させてもらった。これからどんどん大きくなっていくだろうから大きいサイズのも合わせて30着程購入
買いすぎかとも思ったが、初妹の初の誕生日なのでこの程度はしてあげたいしうちの妹ならきっとどれも似合うに違いない
そうして楽しい誕生日会はヒナタが眠りについてしまったところで静かに幕を閉じる。誕生日会を開いた事で久しぶりにまともに村の人達と会話を重ね、皆の温かさを再度実感することができた
今回はバタバタしてしまったが来年はしっかりと事前に準備をしてまた盛大に祝ってあげよう。その頃にはお喋り出来る様になってるかな
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