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162話 魔王復活の可能性

勇者と一戦交えて帰宅してきたその日の夕食、我が家の話のタネになったのはやはり勇者がこの街に来たことについてで既に私が勇者と戦ったことも街中に知れ渡っていた。本当に情報の拡散が早い街だな・・・

夕食中ずっとその勇者について聞かれて食事どころではなく、特にラミアスの食いつきが凄くて宥めるのが大変だった

魔王の娘として色々と思うところがあったのだろうがその勇者とは因縁があるというわけでもなかったからか、特段何か仕掛けようという様子ではなさそうだったので一先ずは安心

しかし今日のあの勇者達の感じ・・・絶対聖剣の事は諦めてないよなぁ。約束を反故にしてまたいつ来るかも分からないし神官がラミアスに接触してしまった場合、正体に気づく恐れがある

あれらは神聖な力に敏感なせいか邪悪な力も過敏に感じ取る。当然ラミアスはそんな存在ではないがそういったのは生まれ持った性質のようなものなので気づかれる可能性は大いに考えられる

ラミアスがいくら友好的に接したとしても相手も同じように返してくれるとは限らない。最悪の事態にならないようしっかり対策しておかなくては

とにかく今はあの勇者について詳しく話を聞きたい。私は皆が自室に入っていくのを見送ってからセレーネの部屋を訪ねた




「入るよセレーネ」


「ん?どーぞー。どしたのエレナ、ボクの部屋に来るなんて珍しいね」




私が部屋に入るとセレーネはわざと意外そうな顔で迎えてきたが、明らかに私が来るのを予想していたかのようにソファに座っていてテーブルにはグラスが2つ準備されていた。お酒を持ってくる事もバレていたようだ

ソファに座るよう促されたのでそれに従い、持ってきたお酒をグラスに注いで一口飲み口の中を潤してから話を切り出した




「それで?セレーネは勇者の事についてはどこまで知っていたの?」


「私が知ったのもつい最近だったんだよぉ。気持ちよく眠ってるところにルキちゃんが夢の中に無理矢理入ってきてさ。久しぶりに話せたのは良かったけどね~」


「それでどんな話をしたの?」




セレーネはルキナス様と話した内容を私にも教えてくれた

まずあのレオンという男が本物の勇者なのか否かについて聞かせてもらったが、どうやら正真正銘の勇者らしい

その割には少し、というかかなり弱かったし戦い方すら知らなそうだったのでいくら女神の言葉といえど暫く信用できなかった。セレーネが言うにはそのレオンという勇者は異世界・・・ここの世界とは別の世界からやってきた人間というのだ

始めは何を言っているのかさっぱり分からなかったが、この星の他にもいくつもの星が存在していてレオンの星は魔法や魔物といったこの世界でごく当たり前に存在しているものがなく、科学とかいうものによって全く違う文化の発展を遂げているという

にわかには信じがたがったが一度転生という奇跡を体験している身からしたらそういう世界もあるのかと納得せざるを得なかった

レオンがこの世界にやって来たのは数か月前のことで、法国が発明した勇者召喚陣というものから飛ばされてきたそうだ。法国は魔王が近いうちに復活するという体で話が進んでいるらしく、何故そういう結論に至ったのか不明だがそれは直接勇者、またはあの神官から聞き出せばいいだろう。剣の腕も数か月やそこらで学んだものなら納得のレベルだ




「レオンが本物の勇者ていう事は分かったよ。問題は勇者がこの世界に現れたことによって本当に魔王が復活するかどうかだよ」


「その件についてだけどね、勇者が生まれても魔王が復活することはないそうだよ」




セレーネの説明によると魔王を復活させるには条件を整える事が必要で、まず魔王となる器が必要らしい。器というのは魔王の力を受け継ぐに値する魔族のことを指していて、その魔王の力を引き継ぐ可能性が今一番高いのが魔王の娘であるラミアスだというのだ

器の他に魔王になる為にもう1つ必要なのは人間に対する強い憎悪で、それが魔王に覚醒するトリガーとなるらしいが今のラミアスは私達と出会い人間と共存、人への憎悪とは皆無の生活を送っているので魔王化する事はまずないとの見解らしい

仮に他の魔族が生き残っていたとしてもラミアス以上の器でない限り魔王となるのは不可能だそうだ

勇者の復活は魔王が再び現れる事の前兆のように思い込んでいたが思い違いだったのか




「余程の事がない限り復活は有り得ないから安心していいと思うよ」




とりあえず今はその言葉が聞けただけで安心したが法国の動きだけが気がかりだな

セレーネと話しているうちにすっかり夜が更けてしまったのでそろそろお(いとま)させてもらうことに。一緒のベッドで寝ようと誘われたが身の危険を感じたので早々に自室へ戻ろうと扉を開けると去り際に呼び止められた




「あっ、言い忘れてた。あの剣についてなんだけど」


「ん?」








翌朝、昨日の話を思い出しながら黙々と朝食を食べていると柵の向こうから人の声が聞こえてきた。嫌な予感がして窓から様子を覗いてみると外には昨日の勇者一行が立っていた

やはり昨日の約束などお構い無しにまた来たか。にしても家まで突き止めていたとは

あそこにずっといられると他の皆にも迷惑がかかるかもしれないしせっかくだから色々話を聞いてみよう。ちゃんと話し合う事が出来ればだが




「あっ、出てきたわよ」


「なんとなくまた会いに来るとは思ってましたがまさか家まで調べていたとは思いませんでしたよ」


「すまない!約束を交わした身として失礼なのは承知しているがやはり諦める事は出来ないんだ!どうか話だけでも聞いてくれないだろうか!」




昨日の自己中心的な感じとは様子が違いレオンは頭を下げこちらに対話を申し入れてきた。仲間と話し合った結果か負けて冷静になったのか、どちらにせよ昨日よりは話が通じそうだし元よりこちらもそのつもりだったのでその申し入れを受け入れることにした

といっても流石に家の中に入れるわけにはいかないので場所を移すことに。この時間からやっているお店は近くにはないので一番近いギルドの来客用部屋を貸してもらいそこで話をすることとなった





読んでいただきありがとうございました!

「よかった」「続きが気になる」など思っていただけたら幸いです

少しでも気に入ってくれた方ブクマ、評価、感想等々頂けると大変励みになります

次話投稿時間はTwitterの方で告知させて頂きます。よろしくお願いします!

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