16話 一難去ってまた一難
王子様?一体なんのことだ?
一瞬私の正体がバレたのかと勘ぐったが、どうやらそういう事ではないようだ
会ったことないはずの王女からいきなり抱きつかれるような事をした記憶がなかったので、未だに抱きついていて離さない王女に問いかけた
「あの、王女様・・・どこかでお会いしたでしょうか?失礼ながらお顔を拝見したのはこれが初めてだと思うんですが・・・」
「この格好では分かりませんよね。昨日誘拐犯から助けた少女が実は私だったんです」
昨日の誘拐されていた少女・・・王女の説明を受けて頭の中で昨日の少女と重ね合わせてハッとした
あの時は敵の方に集中していたから気づかなかったが、背丈や髪色、目元が一致している
「あぁ昨日の!」
「思い出してくれて良かったです♪」
まさかあんな所で助けたのが王女だったなんて・・・聖剣のことといいなんてツイてないんだ。いや王女を救えたのはよかったけども・・・
王女が話を続ける
「お名前を聞かせてもらっても?あの時聞きそびれてしまったので」
「あ、はい。私はエレナと言います」
「エレナさ・・・素晴らしいお名前ですね♪では私の事はセフィリアとお呼び下さい」
「・・・分かりましたセフィリア様。それであの・・・そろそろ離れてもらってもよろしいですか?周りの目がですね」
「もう少しいいじゃないですか♪」
貴女がよくても私が良くないんです・・・セフィリアに抱きつかれた時からフィオナとシスカの視線とフレイヤの殺気(セフィリアに対して)が背中に集中しててもの凄く気まずい
力ずくでどかすこともできるが相手は王女。下手なことはできない
どうしたものかと困り果てていると、先程から静観を続けていた国王がようやく口を開いて助け舟を出してくれた
「セフィリア、その辺にしておきなさい。彼女が困っているだろう」
「お父様」
国王の言葉でようやく暴走していたセフィリアの動きが止まる
流石に国王の言葉は無視できないようで、ようやく私の元を離れて自分の席へと戻っていった
「セフィリア、先程話していた誘拐されたという件。私の元に報告が来ていないんだがどういうことかな?」
「うっ!そ、それはぁ・・・」
「またユリウスに口止めをさせていたな。それにまた王城を勝手に出るとは・・・全く。次抜け出すような真似をしたら小遣いを減らすからな」
「お父様!それだけはどうか許して下さい〜!」
涙ながらに訴えるセフィリアを見て国王が大きくため息をつく
会話からして今回が初めてというわけではないようだ。相当苦労しているようだな
2人の会話が済むと国王がこちらに向き直り、今度は私に対して喋りかけてきた
「確かエレナ君だったかな?いきなりすまなかったね。我が娘セフィリアを助けてくれた事、感謝するよ」
「いえ、たまたま居合わせていただけですので。王女様がご無事で何よりでした」
改めて国王の顔に目を向けるとやはり前世の国王の面影を感じる
先祖なのだから当たり前といえば当たり前なんだが、あまり初対面という感じがしないのでつい前世の国王と話していた口調に戻ってしまいそうだ
「改めて自己紹介といこうか。私はエデュアルト・ヘイリオスだ」
「エレナと申します。こちらは仲間のフレイヤにフィオナです。そしてこちらはレジティアの領主、グランツ・フォルロー侯爵の御息女シスカです」
「おぉ、グランツの。娘がいたのは知っていたが会うのは初めてだな。父は息災かい?」
「はっはい、健康そのものです。父は領主の仕事が忙しく王都に来れなかったので私のみの挨拶で失礼します」
いきなり国王に会うことになって緊張していたが流石貴族の娘、しっかり話せているな
国王が話を振ってくれたお陰で周りの空気は和らいでいき、場を整えたところでいよいよ本題へ。国王が聖剣の話を切り出した
「さて、聖剣に選ばれた君には剣聖の称号と役職を与えたいと思うんだがどうかな?」
やっぱりそういう話になるか
普通ならここは喜んで首を縦に降るんだろうが、生憎私は興味がない
既に答えが決まっている私は辞退する旨を伝えた
「国王様、せっかくですがその申し出辞退させていただこうと思います」
「そうか、それなら仕方ないね」
「私はレジティアの街で・・・って、え?よろしいんですか?」
国王のあまりにもあっさりとした返答に聞き間違えたのではないかと思った
どうやら聖剣を抜いたものにそういう選択肢を与えるというだけで、私のように今の生活を望んでいる人を無理矢理その地位につかせようとは思っていないらしい
王宮使いを勧められると思っていたからすんなり私の要望を受け入れてくれた事に拍子抜けした
「けれど聖剣に選ばれるということは君には人並み外れた実力が備わっているということ。それに君の仲間も優秀な人材が揃っている。だからもし国に危険が及ぶような事があったらその時は力を貸してもらえると助かるな」
「分かりました。その時はお力になることをお約束します」
そんな危機が訪れたらどのみち戦わないといけないし、それで今まで通りの生活が出来るのなら願ってもいない
まぁでもこの平和になった世界なら早々争いごとなど起きないだろう。私はホッと胸を撫で下ろした
聖剣も返す必要はないと言われた。というか聖剣は一度所有者を決めるとその所有者の元を離れることはないので私が持っている他ないのだ
剣は父さんから貰ったもので間に合ってるんだがなぁ・・・
懸念していた剣聖の話も杞憂に終わり、国王との謁見も終わって立ち去ろうというところで王女が待ったをかけた
「待って下さいエレナさん!帰る前に1つだけ私のお願いを聞いてくれませんか?」
「な、なんでしょうかセフィリア様」
これ以上面倒事には巻き込まれたくないのだが・・・
恐る恐る尋ねるとセフィリアは突拍子もないことを言い出した
「私とデートをして下さい!」
「はい・・・?」
デートって・・・女の子同士で?
さっきも私の事を王子様とか言っていたし私はそういう目で見られているのか?
何よりセフィリアの目が本気だ。けれどそんな事国王が許すはずがない
そう思って国王の方に目配せしたが、私の意に反して国王は快く了承してきた
「本来なら許可は出せないところだが、君といれば娘の安全は問題ないだろう。すまないが少しの間だけ任せるよ」
「そんな・・・いえ、分かりました・・・」
先程の娘に対する厳しい言葉はどこへやら。国王の援護射撃を期待していたのにまさかセフィリアに加勢するとは・・・こうなっては断ることも出来ず、私は諦めて王女とデートをすることになった
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