158話 合コン
夏が終わり樹々の葉が紅く染まり始め秋の様相を見せ始め、新居での暮らしにも慣れてきていつもの日常が戻ってきた
いつものようにリビングに集まって皆でお茶を楽しんでいるとキッチンにいたフィオナがこちらにやってきて突然テーブルを叩いて声をあげる
「恋がしたい!」
「・・・・・鯉?」
「恋ですよ恋愛の方の恋!」
かつてない程鼻息を荒くしているフィオナが前のめりで私に迫って来る
いきなり何を言い出したのかと思ったら恋がしたいとは一体どういう風の吹き回しだ?
「急にどうしたの?そんな素振り全然見せなかったよね」
「実は私が働いているお店の子が最近彼氏が出来たみたいなんですけど、その子の彼氏との惚気話を聞かされてたら羨ましくなっちゃって・・・私達皆年頃の女の子だっていうのに浮いた話が全くと言っていい程ないじゃないですか!」
そういう理由か。私以外他の皆は異種族だしまずそういう対象になる相手がいないから探そうっていう気持ちもないし、私自身そんな色恋に現を抜かすより皆と過ごす時間の方を大切にしたいから今のところこれっぽっちも興味ないんだよなぁ。第一男は対象外だ
「というわけで合コンを開きますよ!」
「なんだ合コンって?」
フレイヤの質問にフィオナは合コンというものを説明し始めた
合コンというのは恋人を探す催しみたいなもので男女が揃って楽しく食事をしてお互いの趣味や好み等を語らうらしい。つまりは情報交換か
それで気が合う人を見つかった場合はその異性と抜け出し別のお店で2人っきりになってより深い話をするんだとか。いく人達は最後までいってしまう等ラミアスにはまだ早い話をフィオナは饒舌に語っていた
一通り聞いた私の第一声は「面倒くさそうだなぁ・・・」だ。自分でも露骨だと分かる表情でそう言うとフィオナは俯き少し間をおいてから呟いた
「屋敷の幽霊を退治する時私半ば無理矢理行かされたんですよ。そのせいであんな事に・・・」
「あんな事・・・?あっ」
フィオナの言葉で屋敷で起こったあの出来事が蘇る
確かにあの時嫌がっていたフィオナを少し強引に連れて行ったのは反省している。けどあれは狙ってやったわけじゃないし・・・とフィオナにいくら言っても火に油を注ぐようなものか
つまりその件は許してやるから変わりに合コンに付き合えと示唆しているのか。仕方ない、これっぽっちも気乗りはしないがこれで帳消しとなるならフィオナの言うことに従うとしよう
「分かったよ・・・その合コンっていうのに参加するからそれで勘弁してね」
「ありがとうございます!これで2人は決まりですね」
「ちなみに何対何でやるつもりなの?」
「そうですねぇ、お相手の人数次第となると思うので日程等諸々は分かり次第教えますね」
つまりは全くの未定と。こんな見切り発車で果たして大丈夫なんだろうか・・・
それから数日、なんの音沙汰もなく私達は普段通りの生活を送っていたがある日フィオナが合コンの相手を見つけてきて日程を伝えられた。なんでも最近合コンしてくれる相手を探してる女性がいると聞きつけた男性のメンバーに声をかけられてその場で承諾したそうだ。そんなどこの馬の骨かも分からない相手で大丈夫なのかと不安はあったものの、私が口を挟んでいたらいつになっても決まらそうだし今回はフィオナに任せることにしてあったので私も了承
まぁ誰が相手だろうと結果は変わらないしせっかくだから料理とお酒を楽しむとしよう
その男性達は4人組だそうなのでこちらもあと2人は連れて行かなくてはいけない。そこで誰が行くんだという話になった
まずラミアスは年齢的にアウトなので自然とメンバーから除外。フレイヤとフローリアも場を荒らしそうなので選考から外す
そうなると消去法でシエルとセレーネが選ばれることとなるが、シエルはまぁなんとかなりそうだな。というより私よりまともそうだ
セレーネの方は・・・うん、まぁなんとかなるだろう。私だって人の心配ができるほど手慣れてるわけではないのだから考えるだけ無駄というもの。その場の空気になんとか合わせるとしよう
合コン当日、私達はバッチリと決めた服装で予約してあるというお店へ向かった。普段の服で行こうとしたところをフィオナに止められてしまい無理矢理お洒落をさせられた
お店に到着すると扉には貸し切りの札が掛けられている。なんでも男の方がお店を見つけてくれただけでなく料金まで支払ってくれるそうだ。随分と気前がいいなと思いながらお店の中へ入ると4人組の男性陣が既に席に着いているのが見えた。あれが今回の相手というわけか
「すみませ~んお待たせしましたぁ」
「いや、俺らも今来たところだよ」
男達の対面に座ったところで初顔合わせ。1人がさわやかイケメンというのが似合いそうな顔立ちの人物で他は至って普通の男性で可もなく不可もなく。身なりに気を遣っているのは窺える
全員集まったところで軽く自己紹介をしていく。聞くところによると彼らはここの街の人間ではなく隣町の人達らしく、そこそこ名の知れてる商人の出のようでこの街に来たのも仕事の一環でとのこと
そんな仕事しに来た場で合コンとはいい御身分だなと思いつつ料理が来るまでの間軽く談笑。といっても相手が一方的にこちらに話を振ってきてそれに答えるだけでなので話題を考える必要がなく気が楽だった
数分してようやくお待ちかねの前菜料理が大皿で席に置かれ、早速自分の取り皿に盛り付けようとするとその手をフィオナに叩き落とされる
「取り分けていきますねぇ♪」
「おっフィオナちゃん気が利くねぇ。ありがとうね」
フィオナは取り皿へ均等になるよう丁寧に取り分けていった。なるほど、そういう事をすると男性から好印象を受けるようだ
正直そこまでしないといけないのかと思わなくもないが、今日の主役はフィオナだし上手くいくよう援護位はしてあげるか
それからつつがなく合コンは進んでいった。シエルやセレーネも相手からの質問にたまに的外れな返答をしている位で心配する程の事は起こらなかった
しかしなんというか・・・男達が話を振ってくるのはいいんだが何かにつけて自慢話を聞かせてきて正直げんなりする
奢ってもらっている立場だから面と向かって言えないけど早く帰って吞み直したいという事しか頭になかった
フィオナの方は頑張って付き合っているみたいだが笑顔が引き攣り始めている。これは今回相手を見つけるのは難しそうだな
そんな事を考えながら飲み切ったグラスにお酒を注ごうとするとさわやかイケメン君が別のお酒をこちらに勧めてきた
「エレナさんお酒が好きって言ってたよね。ちょっと強いけどこれなんてお勧めだよ。他の子も良かったら吞んでみて」
「はぁ・・・じゃあ頂きます」
お酒は自分の好みで飲みたいのだが断るのもなんなので頂戴することに。グラスに注がれていったお酒を私達は口に含んだ
勧められたお酒はかなり癖の強いお酒で水かなんかで割らないと吞めたもんじゃない。他の3人も同様でいい顔はしていなかった
よくこんなものを勧めてきたなと相手の顔を見てみるとニヤニヤとこちらの様子を窺っている。わざと呑ませたのか・・・よし、帰ろう
これ以上付き合っても意味がない、そう思い席を立とうとすると足元がグラつく。強いお酒を呑んだせいではない
よく見ると他の3人はテーブルに伏した状態で眠ってしまっている。こいつら、お酒に即効性の睡眠剤かなんかを盛ったな。それを誤魔化す為にわざとキツイ酒を呑ませたのか
最初からそういう目的でフィオナに声をかけたってことか。とんだハズレくじを引いてしまったようだな
まぁこんなものは魔法でどうとでもなるんだけどね。というか2人はともかくシエルにはこの手のものは効かないのでは?
そう思いもう一度よく見てみると寝たフリをしていた。私よりも先に気がついて眠らされたフリをしてたのか
他の2人は・・・うん、グッスリ眠っているな。ここは私も寝たフリをして相手の出方を窺うか
全員が眠ったのを確認すると男達は私達に肩を貸してお店をあとにし、人気のない場所へと歩いて行った
「へへへ・・・今回はこんな上玉捕まえられてラッキーでしたね」
「あぁ、やっぱりこっちの街の方がいい女がいるな。前の町の女はいまいちだったからこっちで元をとらねぇと」
なるほど、こんな姑息な手を使って他の女性にも酷い事をしていたのか。ここなら他の人にも迷惑をかけないし3人が変な事をされないうちにそろそろお灸を据えてやろう
私は寝たフリをやめて男達を襲撃。それに乗じてシエルも参戦した
寝ていると思ってた相手がいきなり襲ってきて相手は抵抗する間もなくやられていった。実にあっけないものだな
「な、なんで起きてやがるんだ!あの薬は飲んだら1日は起きない超強力なやつだぞ!」
「あっちの2人はともかく私達にそういうのは効かないから。残念だったね」
これ以上他の女性が被害に遭わないようこの男達にはしっかり罰を受けてもらうとしよう
4人の男には生涯男としての機能を完全に使えなくなる呪いをかけてそのまま見回りをしている兵士に事情を話し連行してもらった
私とシエルはグッスリと眠っているフィオナとセレーネを連れて家へと帰宅。明日の朝にでも起こしてあげることにしてベッドに寝かせる
初めての合コンは散々な結果となってしまったが家庭的なフィオナならいい人に巡り合えるだろう。もう二度と参加はしないが
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