151話 2人目の竜族
「ん・・・ご主人様?」
「あっ、おはようフレイヤ。ようやく目覚めたね」
「ここは私の家・・・あれ、確か私黒竜と戦ってその後・・・あだだだだだ!か、体がああああ!」
「あ〜ゆっくり動いた方がいいよ」
フレイヤは寝ぼけ眼を擦りながら起き上がろうと体を動かすと全身に激痛が走ったようで一気に目を見開き苦悶の表情を浮かべ悶絶していた
それも無理もない。黒竜との戦いが終わった後、技の反動の大きさに耐えられずフレイヤも気絶してしまったのだから
それから2日程眠り続けて今朝ようやく目が覚めた。寝ている間回復魔法を定期的にかけていたから多少なりともマシにはなったが、私が最初にフレイヤを体の状態を確認した時は至る所がズタズタに損傷していて悲惨な状態だった。竜種であるフレイヤだったから寝込むだけで済んだようだがこれを普通の人間がやったらショックで死んでそうだな
「そんなに寝てたんですか私。うぅ・・・まだちょっとまともに動けそうもありません」
「かなり無茶してたみたいだからね。里の竜達はあれからずっと宴してるよ。今日も朝から盛り上がってるみたいだし他の皆もそっちに行ってるから私達も行ってみようか。ずっと食べずに寝てたからお腹減ってるでしょ」
「そう言われてみれば・・・お肉の匂い嗅いだらお腹の方も目覚めて来たようです」
「しっかり食べないと良くならないからね。さっ行こ」
動けないフレイヤに私は背を向けて乗るよう促す。始めは遠慮するような素振りを見せて自分の足で向かおうと立ち上がるフレイヤだったが、立つのが精一杯でまともに歩けないと分かると恥ずかしがりながらも私の背中に体を預けてきた
「ご主人様、重くないですか?」
「全然、むしろ軽い位だよ。それにいつも乗せてもらってるんだしたまにはね」
人の姿になると少女へと変わるフレイヤは体重の方も見た目に似つかわしいものへと変わる
しかしこうして背負っているとつくづく思うがよくこんな小さな体で勝てたものだ。私が見ていなかった間に相当頑張っていたんだな
フレイヤから聞いた話によるとあの技は一定以上のダメージを負った時に発動する技らしく、世界樹であの魔物と戦ったのがきっかけで編み出されたそうだ
ただ発動の条件を満たしても実際に発動できるかはかなり難儀なもののようで、あの時は賭けだったみたいだが上手く発動できたそうだ
そんな話を聞きながらフレイヤの自宅から少し歩いた宴が行われている広場へとやって来ると皆の視線がこちらに集中した
「あっフレイヤが起きてきたぞ!」
「おはようございますフレイヤさん。今お食事持ってきてあげますね」
「おーい!主役が目覚めたぞー!」
一体の竜が大声で仲間に伝えるとわらわらと里の竜達がフレイヤの元に集まってきた
色々と言いたい事があるんだろうがまだ病み上がりということもあるので軽く挨拶だけ済まさせ、フレイヤが用意してくれた席へと向かう
2日ぶりの食事なので最初は胃を驚かさないよう優しい味付けのスープを飲ませて・・・と思っていたがフレイヤはいきなり肉に手を伸ばしそれを一口でいった
余程お腹が減っていたのだろう。胃がビックリしそうだけどまぁ頑丈な竜の胃だったら大丈夫か
久々の食事を堪能しているフレイヤをみているとなんだか里の入口の方が騒がしくなっているのに気がついた
様子を見に行ってみるとそこにはフローリアが1人で立っていた
「目覚めたようだなフレイヤ!」
「ゲッ・・・フローリア。お前里に帰ったのではなかったのか。悪いが今日はお前に構ってる余裕はないぞ」
先程までご満悦な表情をしていたのがフローリアが現れた事で一気にご機嫌斜めに
フローリアは他の赤竜を掻い潜って私達の元にやって来る
「今日はお前に用があって来たのではない。おいそこの・・・えーっと・・・なんだっけ?」
「もしかして私の事?エレナだけど・・・」
「そうエレナ!お前に用があって来たんだ」
フローリアがここに来た目的ではなく私だった。人なんか全く興味が無さそうと思っていたから以外だ
わざわざここまで来るなんて一体なんの用だろうか
「エレナとやら!私を弟子にしろ!」
「・・・はい?」
「フレイヤから聞かせてもらったぞ。お前と生活を共にし色んな経験をしたことで強くなったと。だから私もお前と暮らすことにした!」
要するにもっと強くなりたいから私の所に来たいと・・・向上心が高いのはいいことだと思うけどフローリアが私達と共同生活するの大変そうだなぁ。今まで人と暮らした事なんてないだろうし私だけならまだしも街の人に迷惑がかかったら申し訳ないし
悪いけど断ろう。そう思いフローリアに伝えようとした私よりも先にフレイヤが待ったをかけた
「ダメですご主人様!私こんな奴と一緒に暮らすことなんてできません!」
「おい!口を挟むなフレイヤ!これは私とこの女の話だな・・・」
「黙れ!そもそも人間の暮らしはおろか言語すら理解出来てないだろ貴様!」
「それはこれから学べば良いだろう」
フローリアとの同居を激しく拒絶するフレイヤは食事を中断して言い合いにへと発展。しかしどれだけ言われようともフローリアは一歩も引く気配はない
こうと決めたら突っ走る性分なのだろう。これ以上こちらが断ったとしても無理矢理ついてきそうだな
仕方ないと腹を決め、私は2人の間に割って入る
「フローリア。条件付きでなら一緒に来てもいいよ」
「ご主人様!?」
「条件?条件とは?」
「私の言うことは絶対に聞くこと。それと街の人達にも迷惑をかけないこと。この2つが守れるなら来てもいいよ」
フローリアはそれだけ?といった顔でこちらを見つめてきたが、少ししてなんの疑う様子も無くその条件を受け入れてくれた
「ふむ、分かった!その条件飲もうじゃないか!」
「じゃあこれを着けてもらうよ」
「ん?なんだこれは?」
「首に巻くものだよ。着けてあげる」
私はフローリアにチョーカーを見せてそれを首に装着してあげた
これがなんだか分かってないフローリアはどうだと言わんばかりに見せつけてきた
それを見ていたフレイヤは私に耳打ちをしてくる
「ご主人様、あれって以前私にも着けていた」
「そう、"主従の首輪"。無いとは思うけど万が一の為にね」
主従の首輪とは装着させた相手に対し強制的に命令を従わせる事が出来るアイテム
一度装着したら私以外は外す事はできないし、命令に逆らうと物凄い苦しみを味わうこととなる
勿論これを使ってフローリアを服従されるなんて真似はしないが、喧嘩っ早いところがあるので念には念をだ
フレイヤも過去に経験しているからか、これをフローリアに着けることで同居は許されることとなった
「というわけでこちらこれから一緒に暮らすことになったフローリア。皆仲良くしてあげてね」
「フローリアだ!改めて宜しくな!」
「よろしくお願いしますフローリアさん」
「よろしくねー」
皆からの拍手に迎えられ晴れてフローリアは正式な仲間に
これから更に賑やか・・・というより騒がしくなりそうだな
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