15話 聖剣に選ばれちゃいました
誘拐された少女を救出後、皆で様々な所を日が暮れるまで見て回り、夜には花火を屋敷のテラスで夕食を頂きながら見物した
「明日でお祭りは終わりですかぁ。あっという間でしたね」
「毎日お祭りだったら最高ですねご主人様!」
「いや、毎日こんなことしてたらお金がいくらあっても足りないよ」
フレイヤはあの後も大量のエイクグッズを購入していた
よくあれだけのグッズを見つけられたものだ・・・帰ったら自分の部屋に飾るんだとはしゃいでいたな
寝る準備をしながら明日の事について話をしていると、シスカが部屋に入ってきた
「どうしたのシスカ?」
「皆ともっとお話したいから今日は一緒に寝たいなぁって思って!」
シスカが加わったことによってベッドが足りなくなってしまったので、急遽3人のベッドをくっつけて4人一緒に寝ることになった
シスカが寝るまで色々な話をした
シスカは領主の一人娘ということでかなり大事に育てられてきたらしく、こうして親の元を離れて旅をするというのは今まで出来なかったようで今回私達と一緒に王都に来れて良かったと言ってくれた
警護という名目でシスカと共に行動をしてきたが、楽しんでくれたようでよかった
この警護が終わって街に戻ってもまた一緒に遊びたいとも言われたので私達は快く了承した
「私で良ければいつでも遊びましょう♪」
「気軽に遊びに来て。歓迎するよ」
「ご主人様が言うのなら私も相手してあげましょう」
一応ハワードさんに伝えて領主さんにも話を通しておかないとな。こっそり屋敷を出て騒ぎになったりでもしたら大変だ
シスカの話はそれで終わり、次に明日の予定についての話になった
「私ね、明日行きたい場所があるんだ」
「へぇ、どこなの?」
「古の大樹!」
古の大樹とはこの国が出来る遥か昔から存在する木で、初代国王がこの樹の下で初代女王に告白をしたことから、恋愛成就のご利益がある樹ともされている
「恋愛成就の木ですか。という事はシスカちゃん好きな人がいるんですね!誰ですかぁ。お姉さん達に教えて下さい」
「ち、違うよ!ここには歴代の勇者様達が使っていた聖剣が眠ってるんだよ!」
「勇者の聖剣?」
私達歴代勇者が使用していた聖剣が今は大樹の根元に眠っているのか
聖剣がある場所にいくのかぁ、なんか嫌な予感がするな・・・ま、触れなければ大丈夫だろう
それからも他愛のない話で盛り上がり、その日は深夜遅くまで語り合った
翌日、私達は聖剣が眠っている古の大樹へと足を運び、到着するとそこには大勢の人が並んでいた
「な、なに?この行列は」
「この列はあの聖剣を抜こうとしてるんだよ。この生誕祭の期間だけ開放されてて聖剣を抜くと剣聖として認められるんだって!」
聖剣は自分の所有者と認めた相手でないと剣を振るうことはおろか、鞘から抜くことさえ出来ない
その聖剣に選ばれた人物が勇者の代わりに剣聖というものになれるのか
魔王と勇者には因果関係があり、悪の魔王がいる限りいくら勇者がやられようとも新たな勇者が生まれる
この時代に魔王がいないということは勇者も現れることはない
そういった理由で新たに剣聖というものが出来たということなのかな
よく見ると一般客以外にも冒険者や剣の腕に覚えがありそうな者達もゾロゾロと並んでいる
あの聖剣を抜いて一花咲かせようという魂胆か
長蛇の列が進んでいき、前にいる人達が次々と挑戦するも聖剣はビクともすることなく挑戦者を拒み続ける
やがてシスカの順番がやってきて聖剣に手をかけ思い切り引っ張った
「よしっいくぞ〜!ふんっぬぬぬぬ・・・!はぁ、ダメだ全然動かないや」
シスカに続いてフィオナとフレイヤも試してみるが同様に抜くことは出来なかった
フレイヤに至っては聖剣を抜くよりも先に地割れが起きそうだったので止めさせたが、それでも聖剣はビクともすることはなかった
「やっぱりダメでしたねぇ。エレナさんはやらなくていいんですか?」
「私はいいよ。さっ、街の方に戻ろうか」
こんな大衆の面前で万が一抜けてしまったら私ののんびりライフの危機だ。絶対触れないぞ!
できるだけこの場から早く離れようと皆を促して街へと向かわせる
しかし次の人が聖剣に触れようとしたその時、突然聖剣が光りだしガタガタと揺れ始めた
次の瞬間、聖剣がひとりでに宙に浮いたと思ったら私目掛けて勢いよく飛んできたので反射的にそれを掴んだ
それを見ていた周囲の人達がザワつく
「あの嬢ちゃんが聖剣に選ばれたぞ」
「しかも聖剣自ら・・・とんでもねぇ」
「綺麗だ・・・」
次第に驚きの声から歓声へと変わっていき、いつの間にか周りに取り囲まれてしまった
自分の悪い予感が当たり、ここに来るんじゃなかったと後悔する
暫くしてこの盛り上がりを聞きつけた兵士達がぞろぞろとやってきて、どこかに報告していると思ったら私達はあれよあれよと王城の方へと連れていかれてしまった
王城に向かう間も周りからの視線が私に集中してなんだか勇者時代に戻ったようでいい心地がしなかった
フレイヤが寄ってきて小声で話しかけてくる
「流石ですご主人様。2度も聖剣に選ばれるなんてきっとご主人様が初めてでしょう」
「全然嬉しくないんだけど・・・剣聖とか興味ないよぉ・・・」
どうにか断ることはできないかと理由考えるも、断れそうな言い訳が見つからず私達は謁見の間までやってきた
王城に久々に入ったが中も意外と変わっていないものだな
王命の任を受ける時によくこの謁見の間来たものだ
ここに呼ばれたということはつまりそういうことだろう
「皆様、国王がお待ちです。どうぞお入り下さい」
兵士に案内され中へと進んでいく
玉座には国王が座って私達を待っていた
隣にいるのは王女様だろうか。どこかで見た覚えがあるが・・・気のせいだろう
玉座の前まで行き国王に挨拶をしようとした瞬間、王女がいきなり私に飛びついてきた
突然の事で受け止められず王女を抱えた状態で倒れてしまう
状況が理解できずにいると王女が呟いた
「まさかこんなところでまたお会いできるなんて・・・私の王子様!」
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