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146話 一次選考

「これより第一次選考を始める。第一次はキーラ火山まで行って黒岩を回収して帰ってきてもらう」




キーラ火山というのはこの辺りで最も大きい火山で最も活動が活発な火山。説明によると折り返し地点には火山が噴火した時に降ってきた黒岩が置いてあり、それを持ってゴールした先着7名が次に進む事ができるとのことだ

レース中は他の竜に危害を加えてはいけないこと。途中で黒岩を落とした場合は再度取りに行かなければゴールは認められない等の事項も挙げられていた

地図で見てみると距離にしておよそ200㎞程度といったところか。竜の全力飛翔であればそう時間はかからない距離だな




「でもこれって空を飛べない地竜さんには不利な戦いじゃないですか?」


「空に障害物はないけど地上はそうもいかないからねぇ」


「それはどうかな?」




私達の会話に後ろから割って入ってきたのは今しがた話題に挙げていた地竜。その地竜の声色をどこかで聞いた事があると思ったら以前実家に帰省した際町で一戦交えたあの地竜だった




「あっ!貴方はあの時の地竜さん!貴方も来ていたんですね」


「このような場所で再会することになるとはな。あの時は妻共々世話になったぞ」





そう話す地竜の奥さんは今回子供の子守りもあるということで留守番をしているのだそう。あれから子供も無事に生まれたようで、今は人気のない場所に移り住んでいるようだ

お互い一度ぶつかり合った仲だがわだかまりなく話すことができた

地竜の近況を聞かせてもらったところで話は先程の件にと戻る




「一次は競走みたいな感じですけど大丈夫ですか?」


「あぁ、ここからキーラ火山までは勾配のない平地。上り下りが多いならいざしらず平坦な道であれば空を飛べなかろうが我ら地竜にも勝機があるということだ」




確かに障害がないのならば空を飛ばずとも地竜の足であればいけるかもしれない。その速度は前に一度体感しているしな




「なるほどそういうことですか。今回は自分の仲間が参加するので全面的に応援は出来ませんが頑張って下さいね」


「あの赤竜の娘か、あの娘にも挨拶をしておかないとな。まぁ子供が出来たばかりだし無理せず頑張らせてもらおう」




そう地竜は言い残して開始地点へと歩いていった

時間になり全員が開始地点に着くと先程開催の言葉を述べた高齢の竜が再びやって来てスターターを務めた




「それでは第一次選考・・・・始めぃ!」




開始の合図と同時に同じくスターター係である赤竜がブレスを吐いた。それを見て竜達が一斉に勢いよく飛び出す

竜達はあっという間に空へと消えていき、地竜は砂塵を巻き上げて地を鳴らす勢いで走っていった

レースの様子を観察したいところだが流石にあの速度について行くのは難しい。様子を窺うことができないのならフレイヤが通過する事を祈って待つ他ないな




「わぁ!あそこに美味そうなお肉があるぞ!買いに行こう!」


「出店とかも出ているんですねぇ。せっかくですし買っていきましょうか」


「一応お祭りという名目もちゃんと兼ねてるんだね・・・」




フレイヤ達が帰ってくるまでには少し時間はあるだろうしただ待っていても仕方ないから色々見て回ってフレイヤが好きそうなものでも見つけておくか









「おいフレイヤ!何をチンタラと飛んでいるんだ。そんな速度では脱落してしまうぞ」


「こっちは出方を窺ってるだけだ。お前こそずっと私に話しかけてくるがそんな余裕を見せていいのか?」




スタートして飛び立ってからというもの、フローリアはしつこく構ってくる。こちらの出方を見てるという理由もあるだろうがいちいち話しかけてくるのが腹立つ・・・かといって無視したらしたで余計食ってかかってくるからタチが悪い

勝負を仕掛けて突き放したいところだがそれはまだ早すぎる。仕掛けるタイミングを見誤るとあの黒竜を抜くことが出来ない

あっちもまだウォーミングアップ程度全然本気を出している感じはない。相手の動きを注視してどんな動きをしても対応できるように見張っておかなくては


キーラ火山まで半分の地点にやってきたところでその黒竜が飛んでいる周りの竜の動きに異変が起きた。先頭を飛んでいた黒竜に対して他の竜族が進行方向を遮るように前に出た




「悪いがお前をこれ以上好き勝手されるわけにはいかないんでな。ここで落とさせてもらうぞ」




周りと連携して黒竜を落とす算段か。相手に直接危害を加えているわけではないからルールを犯しているという事にはならないが・・・あまり好まないな

竜族であるなら己自身の力で勝たなくては意味がない。そう思っているのはフローリアも同じ様でその様子を見てつまらなそうな表情を浮かべていた

そして当の本人である黒竜は行く手を阻まれても全く気にする素振りは見せなかった




「徒党を組んだところで俺に適うとでも思っているのか。この(てい)たらくでは今年と俺の優勝は決まったようなものだな」




黒竜は塞がれている進行方向を捨て、高度を上げて振り切りを図る。当然そうはさせまいと妨害していた竜達もその後を追う。しかし黒竜の上昇速度についていく事が出来ずスタミナ切れを起こす者も現れ、徐々に距離を離されていって結局最後には黒竜に振り切られ単独での行動を許してしまった

そして黒竜はそのままキーラ火山頂上まで一直線に向かっていき、用意してあった黒岩を止まることなく回収し1番に折り返してゴールへと向かう


しかしそれとほぼ同時のタイミングでフレイヤとフローリアが黒岩を手に取り、2体の竜が黒竜のすぐ後ろに位置づけた

前方で他の竜達がゴチャゴチャやっている間にその脇を抜いてキーラ火山を目指していたフレイヤとフローリアは遅れをとることなく黒竜を追うことが出来た




「最短距離で飛んで1番になったと思ったが・・・やはり速いな」


「どうする?協力でもしてあいつを抜くか?」


「バカを言うな。お前なんかと誰が協力するか!そんな事をしなくても私は1番になってみせる!」




黒竜を先頭に3体の竜はゴールまで残り20km地点というところまで縦一列の状態が続いた

この距離になるとあとはもうラストスパートをかけて飛ぶのみ。全身の力を翼に集約させて黒竜に迫る

残り5キロ地点。エレナ達が大きく手を振っているのが見えてきたところでフレイヤは黒竜に並んだ

しかし相手も簡単に先頭を許すわけもなく、抜いては抜かれてをゴール地点まで繰り返す


スタート地点である火口に戻ってくるとゴールラインが。そこを目掛けて残りの力を振り絞ってフレイヤは飛翔する

そして2体の竜は殆ど同じタイミングでゴールラインを通過した。途中からゴールしか見てなくてどうなったか分からないが、すぐ横には黒竜がいたのは覚えている

判定に時間がかかっているのか結果を中々告げない判定員。暫くしてようやく結果が出たようで判定員が声を上げる




「厳正な審査の結果一次選考の1位は・・・黒竜族シヴァ、赤竜族フレイヤの同着とする」




長年行われた竜王祭でも中々見ることが出来ない同着という結果に周囲は湧き上がるが、それとは反対に3位通過となったフローリアは地団駄を踏んで悔しがる

だがそれはフレイヤも同じで、あとほんの僅かでも力を振り絞っていれば黒竜を抜くことが出来たかもしれないという悔しさが残った

それでもこちらは相当無理をしての飛翔。対して黒竜は肩で息はしているもののまだ余力を残している様に見えた




「フレイヤと言ったか、中々良かったぞ。前回の決勝では歯ごたえを感じなかったが今回は楽しませてくれそうだな」




無事一次選考は通過したが黒竜の強さを改めて知る結果となった



読んでいただきありがとうございました!

「よかった」「続きが気になる」など思っていただけたら幸いです

少しでも気に入ってくれた方ブクマ、評価、感想等々頂けると大変励みになります

次話投稿時間はTwitterの方で告知させて頂きます。よろしくお願いします!

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