145話 フレイヤのライバル
竜王祭が行われる開催地に到着するとそこには赤竜族以外の竜が数多く集まって来ていた。全竜族がこうして揃っているところなんて滅多にお目にかかることができない貴重な光景だ
お互い今回のライバルであるからか、すれ違う度お互いが相手に対して睨みを利かせていた。私達はその様子を隅の方で眺めていた
「どの竜も強そうですねぇ・・・」
「やっぱり風格があるよね。でもフレイヤならきっとやってくれるよ」
「ん?なんかこちらにやってくるのがいるぞ?」
こちらが他の竜達を観察していると一体の青い竜が私達の元に近づいてきたと思ったらフレイヤに向かって声をかけた
「久しぶりだな!フレイヤ!」
「あっ!お前はフローリア!」
フレイヤの知り合いか。フローリアという竜は見た感じからして青竜族だな
フレイヤの様子を見てみるとあからさまに嫌な顔をしている。その顔を見ただけで何となく関係性は察する事ができた
「フレイヤ、この竜とはどういう関係なの?」
「あっ、はい。フローリアは私が小さい頃からの付き合いで顔を合わせる度に絡んでくる鬱陶しい奴なんです」
基本どの竜族も特段仲が良いというわけではないが赤竜族と青竜族に至っては仲は特に悪く目を合わせる度にいがみ合う関係と聞いている。赤竜族は火、青竜族は氷という生まれながらの属性の相性も関係あるのかもしれない
この2人もそうなのかと思ったがフローリアという竜は一見フレイヤに対してはあまり敵対的ではないように感じるが・・・・
フローリアについてフレイヤと話していると長い首を今度は私の方に動かし問いかけてきた
「おいフレイヤ、なんだそいつは?なんでこの場所に人間がいる」
「それはこのお方が私のご主人様だからだ。別に竜族以外の者が来ちゃダメな決まりはないだろ?」
「どうも初めましてエレナと言います」
私が挨拶をするとフローリアは暫しの間呆けた顔をした後、大きな口を開けてお腹を抱えながら笑いだした
突然笑い出した相手に対し理由が分からないこちらはただ困惑するしかなかった
「あっはっはっは!フレイヤお前人間なんかに仕えているのか!勇者に仕えていた頃ならまだしもそんな軟弱な人間に仕える竜が代表とは赤竜族も落ちぶれたものだな!」
何に対して笑っているのか思ったらフレイヤがただの人である私を主人として慕っているのがおかしくて笑っていたのか。それで私を馬鹿にするだけなら特に何とも思わないが無関係な者まで侮辱されるのは癇に障るな
それはフレイヤも同様で、高らかに笑うフローリアを見て先程までの怠そうに相手をしていた態度が一変、怒りで肩を震わせ今にも殴りかかりそうという既のところで堪えながらフローリアに向けて言葉を放つ
「貴様・・・・赤竜の名を汚すだけでなく私が敬愛するご主人様まで愚弄したな」
「なんだそんなに怒って。私は思った事をそのまま言っただけだぞ」
その言葉がフレイヤの怒りに熱を加えフローリアに詰め寄って行く。お互いの拳が届く距離まで近づいたところで私が割って入りフレイヤを制止する
「落ち着きなフレイヤ。気持ちは分かるけど今ここで手を出しちゃダメだよ。試合で勝ち上がって正々堂々と戦って勝とう」
「ご主人様・・・すみません、ありがとうございます」
「なんだやらないのか。私は今ここで戦ってもいいんだがな。まぁいい、今年は青竜族族長の娘であるこのフローリア様がライバルであるお前を倒して竜王の座に着かせてもらうからな!」
「馬鹿を言うな。竜王となるのはこの私だ。首を洗って待っていろよ!」
危うく乱闘騒ぎになるところだったが一先ずは丸く収まり、フローリアは場を荒らすだけ荒らして去っていった
言葉はあれだが見た感じ悪意があって言っているようには見えなかった。いい意味でも悪い意味でも嘘をつけない正直な子なんだろうな。無神経とも言えるだろうけど・・・
「頑張って下さいねフレイヤさん!あの人を倒して優勝しましょう!」
「そういえば前回は何処が1番だったの?」
「前回は黒竜族がぶっちぎりの優勝でした・・・私が2番、先程のフローリアが僅差で3番目という結果だったんです。恐らく今回も・・・あっ、ちょうど来たみたいです。あそこにいるのが前回優勝した黒竜です」
フレイヤの指差す方には空から降りてくる1体の黒竜が。体格自体はフレイヤと大差はないが体の至る箇所に傷があり、左目は深い切り傷によって潰されている様に見える
いかにも歴戦の風貌をその存在感から地に降り立つと他の竜達も黒竜に注目する
黒竜族は他竜族の中でも一際戦闘を好む戦闘狂で強者が権力を握る実力至上主義な部族。あの傷は数多の猛者と戦い勝利した勲章でもあるわけか
フレイヤ曰くあの黒竜はここ90年間、つまり過去9回行われた竜王祭で優勝している。過去連覇を果たした竜の連覇数も9回。つまり今回の竜王祭であの黒竜が優勝すると10連覇という新記録を打ち立てることなる
他の竜族からしたらそれは不名誉なことなのでどうにかしてそれを死守しなくてはならない
前回フレイヤは2位という結果だったって事はあの黒竜に敗北したという事か。あの黒竜がどれ程の強さか分からないがフレイヤも以前より格段に力をつけているしきっとやってくれるだろう
日が天辺まで移動すると1体の竜が集まってきた他竜族の前に立った。白髪混じりの長い髭を蓄えていてヨボヨボした目、見た目からしてかなりのお年寄りの竜だな
「ではこれより竜王祭を開催する。皆正々堂々と戦うように。健闘を祈るぞ」
と竜王祭開催の言葉を端的に述べて退場していった
締まりのない感じでちょっと間延びしてしまったがなにはともあれ竜王祭が始まった。各々気合を入れて一次予選が行われる場所へと足を運んだ
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