143話 竜王祭
季節は変わり夏真っ盛り。上空からは強い日差しが降り注ぎ、地面からは熱気が襲ってくるそんな季節がやってきた
「今年も去年に負けない暑さですねぇ」
「あ〜家の中は涼しいなぁ・・・・」
去年手に入れたフレイムメタルはもう底を尽きていたので、今年は夏が来る前に以前行ったシュベルスト山脈まで行ってまたフレイムメタルを採掘をしてきた
前回いたニクスコング達は住み家を変えたのか、去年掘らせてもらった場所はもぬけの殻となっていた。ほとぼりが冷めて前の縄張りに戻ったのか別の住み家を見つけたのか
理由は分からないが手伝ってもらった時とても作業が捗ったので食べ物と交換で今回も手伝ってもらおうと思っていたがあてが外れてしまったようだ
なので数日かけてコツコツと採掘して街の人達が使う分も入手した。そのお陰かフレイムメタルはいい値段で取引されたので万々歳だ
これで今年の夏も家の中は涼しくなり快適に過ごす事が出来るが、それでも買い出し等で外に出なくちゃいけない時は灼熱の太陽にジワジワと体力を削られていく。ただ1人を除いてはだが
「ご主人様!ちょっとよろしいですか」
「この暑い中でも相変わらず元気だねフレイヤは。どうしたの」
「少しの間実家に帰らせて頂きたいのですがよろしいでしょうか?」
買い出し当番から帰ってきたと思ったら突然自分の里に帰りたいと言い出してきたフレイヤ。何かあったのかと危惧したが、フレイヤの目を見るといつになくやる気に満ちていてメラメラと闘志を燃やしていた
「なんだか随分と張り切っているようだけど里の方で何かあるの?」
「実はですね、今度私の里で10年に一度開かれる竜王祭というのがあるんです。私もそれに参加したいのです!」
竜王祭・・・昔名前だけは聞いたことあるような。確か赤竜族、青竜族、黒竜族、白竜族、そして地竜の計5つの竜族の中で競い合い一番を決める祭り。話によると開催地は順番性らしく、今回の開催場所はフレイヤ達赤竜族の里が場となっているらしい
自分の里で行われる祭りとあっては参加せずにはいられないだろう
フレイヤの故郷か・・・思い返してみればフレイヤとこうして寝食を共にしているがフレイヤの両親にはまだ一度も会った事がないな。昔はそんな余裕無かったけど今なら時間も有り余っている。それにこういう機会も滅多にないだろうし是非会って挨拶しておきたいな
「フレイヤ、それって私が行っても大丈夫なのかな?」
「そうですね。族長の許可がいるとは思いますけど問題ないと思いますよ」
「いいなぁ!我も行きたいぞ!キューちゃんも行ってみたいよな」
「キュー!」
ラミアスがそう言うと他の皆も右に同じという感じだったので全員揃ってフレイヤの故郷である赤竜族の里へと行くことに
竜王祭が行われるのは1週間後との事だが、竜王祭に出る事が出来るのは各竜族2体までという決まりがらしく代表となる為にはまずその2枠に入らないといけない
その2枠を巡る戦いが2日後に迫っているというので私達はフレイヤの背中に乗り皆で赤竜族の里へと向かった
「着きました!ここが私達赤竜族の里です!」
転生前にも来ることはなかった赤竜族の里。そこにはフレイヤと同じ炎のような赤い体をした竜がうようよしていた。本来であれば気持ちが高揚する場面なのだが・・・・
「あ、暑い・・・」
「立っているだけなのに汗が止まりません・・・」
赤竜族の里は火山地帯の目と鼻の先に位置している。今もなお活動を続けている火山の火口からは溶岩が流れ出ていて見ているだけで参ってしまう
このままではこちらの身が持たなくなってしまうが問題はない。こういう時の為に用意しておいたフレイムメタルと布を合成して作った冷却布を人数分用意しておいた
これを首に巻きつけておけば灼熱の場所でも、とまではいかないが暑さを緩和させて快適に過ごせるようになる
「ひんやりきもち〜♪」
「これがあればとりあえずは安心ですね」
「お待たせしましたご主人様。族長からの許可が下りたので入って下さい」
先に里に入って族長に話を通してくれたフレイヤが戻ってきたところで私達も里の中へと入る。竜族以外の者が里にやって来るのが余程珍しいのか他の竜達はこちらをジロジロと観察していた
里の中を進んでいくと2体の竜が私達の前に立ちはだかってきた。もしや竜族でない者が入ってきた事をよく思わない輩が絡んできたのかと身構える
しかし横にいたフレイヤは気にすることなくその2体の竜に近づいていった
【父上!母上!】
【久しぶりだな我が娘よ。前の竜王祭以来か】
その会話で2体の竜がフレイヤの両親だった事がようやく理解した。恐らく髭を蓄えている方が父親の方で鱗が父親より艶やかな方が母親だろう
10年ぶりに両親と再会したフレイヤは嬉しそうに話していた。その表情は普段私達の前では見せることがないような子供らしいものだった
一通り娘との会話を終えると今度は私の元に父親がやってきて竜族の言葉で語りかけてきた
【君がエイクか、いや今はエレナという名で通っているのだったな。娘が世話になっているな。私はイグニスだ】
【私はルベリアよ】
【初めましてエレナです。こちらこそ娘さんには前世でも今でもお世話になっています】
【君がいなくなって以降娘の元気がなく心配していたからあんな嬉しそうな顔して話す姿を見ることができて本当に良かった。君達には精一杯のもてなしをさせてもらおう】
さっき両親と嬉しそうに話していたのって私の事についてだったのか。そう思うとなんだかむず痒いな・・・
初対面でどんな印象を持たれるか不安ではあったが、フレイヤの両親とも仲良くなれそうだ
すると他の竜達もフレイヤの父親が私と親しげに話しているところを見て警戒を解いたのか、観察するのを止めて次々と私達に向かって話しかけてきた
イグニスさん達のお陰が大きいだろうが思いの外皆友好的で安心した。絵面だけ見れば竜達に用意された晩餐だが・・・
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