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140話 独り立ち

「頑張りましたね。お疲れ様です」


「も、もう歌えそうにありません」




お客さんからのアンコールが行われた後、ソウカさんは追加で3曲を披露した。3曲全て歌い切りソウカさんが舞台袖に消えた後も会場の熱気は冷めることなく、暫くの間歓声が上がっていた

無事に終えて戻ってきたソウカさんはというと体力を使い果たしたのかこちらに戻ってきたらフラフラとしていて今にも倒れそうだったので急いで椅子に座らせた

演奏中ずっと照明に当たっていたからか体は熱を帯びていたので冷たい飲み物と濡れたタオルで体を冷やす。そうしてあげるとソウカさんは気持ちよさで自然と声を漏らした

デビュー1発目で単独というのはやはり大変だったようだ。それでも最後までやり遂げる事ができたのは本当に誇らしく思う


本当はこの後皆で打ち上げを行う予定だったが、主役であるソウカさんがこの状態という事で明日に持ち越して家に帰宅

そして翌朝、目覚めてきたソウカさんを手厚く労い体調が回復した事を確認した後お昼に皆で打ち上げを行った

その最中に見慣れた馬車が家にやってきた。御者台にはハワードさんが、そして馬車の中から出てきたのは侯爵と娘のシスカ。まさか侯爵が直々にやって来るとは思わなかったので慌てて侯爵を出迎え入れた

侯爵は開口一番にソウカさんに労いの言葉を述べた




「ソウカ君、昨夜は素晴らしかったよ。この前見たコンサートにも全く引けを取っていなかった。君に頼んで本当に良かった。終わった後倒れてしまったと聞いたがもう大丈夫なのかい?」


「こ、光栄でございます侯爵様。この通り体調の方はすっかり良くなりました」


「それはなによりだ。そうそう、娘も昨夜の君の演奏を聴いていてね。今日会いに行く事を言ったらどうしてもと行くといって聞かなかったから連れてきてしまったんだ。ほらシスカ、挨拶を」


「初めましてシスカと申します。昨夜はとても素敵な演奏でした!」




シスカはソウカさんを捕まえ興奮気味に昨日のコンサートの感想を延々と話し始めた。テンションが上がるとずっと喋り続けるところは父親に似ているんだな

シスカが落ち着いたところで侯爵が本題へと話を変え、ハワードさんが今回の出演料を持ってきてくれた

予想より反響があった為侯爵は当初の出演料より色を付けた額をソウカさんに手渡してきた。今まで見たことがないお金を見たソウカさんはその場でまた倒れそうになっていた

しかしこれで目的であった額を大幅に上回ることができた。刻印石の売上と合わせれば当面の生活の心配はないだろう

見舞い品として持ってきてくれた果物も貰い侯爵に感謝を述べると、去り際ソウカさんに向けてこう告げてきた




「明日からは大変だと思うが頑張ってくれたまえ。これからの活躍を楽しみにしているよ」


「?は、はい。ありがとうございました」




その時はその言葉の意味が分からなかったが、それは翌日から身を持って知ることとなった

単独コンサートが終わってからソウカさんの生活は一変。街中を歩いていると色んな人に声をかけられ、握手やサインを求められて街では一躍時の人扱い

変わったのはそれだけでなく、あの日侯爵からの招待でコンサートを見に来ていたお偉い方がソウカさんの歌を偉く気に入ったようで、その人達からのオファーも殺到した。近隣から遠方まで各所から出演の依頼が来て空いていたスケジュールが一気にパンパンになった


まずは近隣の依頼から消化していき、そこから遠方の依頼をこなしていけるようにスケジュールを組む。この仕事をコツコツとやっていけばきっとソウカさんの名は更に広まっていくことだろう

近隣の依頼が全て終わるまでは家で生活を共にした。しかし目まぐるしい日々はあっという間に過ぎていき、ソウカさんが家を出ていく日はすぐやってきた

別れ際にこれから様々な場所に行く際、荷物が多くなっても問題がないよう作成しておいた"空間保管(アイテムストレージ)"をソウカさんに渡した




「初めて会った日から結構経ちましたけど・・・もう一人前ですね。私達が口を出す事ももうないです」


「エレナさんに会っていなかったら今頃私は・・・・皆さんには感謝してもしきれません。本当にありがとうございました!」




ソウカさんは私達に向かって深々と頭を下げた後、馬車に揺られながら次の町へと消えていった。見えなくなるまでの間手を振りそれぞれ言葉を送った




「頑張るんだよー!」


「またいつでも遊びに来ていいからなー!」


「はいっ!必ずまた来ますからー!」




数ヶ月に渡るソウカさんとの生活は色々あったがこうして送り出す事が出来て本当に良かった

壁にぶつかる事もあるだろうけど今のソウカさんならきっと乗り越えられるはずだ

これからはいちファンとして活躍を見守るとしよう


ソウカさんが街を出ていき通常通りの生活を送り始め暫くして変化があった。私達がやっていたように他の吟遊詩人の歌が刻印石で売られるようになっていたのだ

どうやら私達が売っているところを見かけた商人がこれは売れると他の吟遊詩人と取引を行い商品化したそうだ。まだまだ数は少ないがそのうち誰でも気軽に様々な曲を聴ける様になるだろう


それから更に月日が経ったある日、情報誌を眺めていると吟遊詩人達を取り上げられている欄にソウカさんの記事が載っていた

私達と別れた後もしっかりとやっていけているようで、記事には今話題の注目株として取り上げられていた

吉報を知る事ができて一安心。今度は帝都の方でコンサートを開催するようだし破竹の勢いで知名度を上げていっている。トップになるのも時間の問題かもしれないな




読んでいただきありがとうございました!

「よかった」「続きが気になる」など思っていただけたら幸いです

少しでも気に入ってくれた方ブクマ、評価、感想等々頂けると大変励みになります

次話投稿時間はTwitterの方で告知させて頂きます。よろしくお願いします!

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