132話 ソウカの苦悩
お腹を空かしたソウカさんを連れて門番取り次いでもらい、セフィリアにソウカさんが王城に入れるよう頼んだ
本来は諸々手続きを済まさた後でないと一般人を入れる事は出来ないらしいが、セフィリアの権限で半ば無理矢理ではあったがソウカさんの入城許可を貰うことができた
城の中に入り部屋へと向かっている途中、ソウカさんは終始キョロキョロと周りを見ていた
「どうかしましたか?」
「あっ、い、いや、まさか私の人生でお城に入る日が来るなんて夢にも思わなくて・・・・エ、エレナさんはおおおお偉い方だったんですね。ま、まさか王女様とお知り合いだったなんて」
「あぁいや全然偉くなんかないですよ。たまたま縁があって今回こうして呼んでもらっただけで普段はここから離れた街で他の仲間達と暮らしてるんです。ソウカさんにも皆を紹介しますね」
「き、緊張します・・・・」
ソウカさんを連れて部屋に入るとお風呂に入っていた皆が既に戻ってきていた
私達の存在に一番最初に気がついたフレイヤがソウカさんの方に視線を向けて言葉を放った
「ご主人様、誰ですかその女は?」
「ぴっっっ!!」
フレイヤの鋭い目つきがソウカさんには睨まれているように思えたのか、耐えきれず私の背中へと身を隠した
「ソウカさん、あの子はああいう目つきなだけで優しい子ですから安心して下さい」
「そ、そうなんですね。失礼しました・・・・」
そう言いながらも私の背中から姿を現そうとしないソウカさん。フレイヤの視線だけでなく他の人からの視線が自分に集まるのが苦手なようだ。聞いてはいたがここまでとは
「皆、ちょっと訳あってこの女性を一緒の部屋に泊めたいんだけどいいかな?ソウカさんって言うんだけど」
「よ、よよよよろしくお願いしましゅ・・・・」
「お部屋は広いので1人位増えても全然問題ないですけど・・・・どういった経緯か教えてもらえますか?」
私はソウカさんと出会った経緯を皆に説明した。勿論命を絶とうとしていた事は彼女の事を考えてその部分は伏せておいた
話を聞いた皆は納得しソウカさんを温かく迎えてくれた
私達が入ってきた後少し遅れてセフィリアが部屋に入ってくる。正式な手続きを済ませてソウカさんの入城許可を取ってくれたようだ
「ありがとうございますセフィリア様。私の無理を聞いてくれて」
「いえ、エレナさんの頼みでしたらこの程度お安い御用ですよ。その方が仰っていた方ですか。あら?貴女は日中エレナさんとぶつかった方ですよね」
「は、はひっ。こここここの度は私のような者にお城へ入る許可をお出し頂き感謝致します」
ぐぅぅぅぅぅ〜
「そういえばお腹を空かせていたんでしたね。料理人達はもう明日の仕込みを始めてて簡単なものしかお出しできなくて申し訳ありませんが」
「あっ、いえとんでもないです。私なんて残飯で十分なのにすすすすすみません・・・・」
申し訳なさそうにペコペコと頭を下げるソウカさんをテーブルの方へと連れていって座らせ、カップに紅茶を淹れてあげる
リラックス効果のある紅茶を選んだのでこれで少しでも落ち着いてくれるといいが
暫くして部屋の扉が叩かれ、給仕さん達がソウカさんの前に次々と出来たての料理が並べていった
その他にも気を利かせてくれたのか、お酒のツマミとして数品用意をしてくれたので私達も軽く頂くことにした。その方がソウカさんも1人で食べるより気が楽だろう
そのソウカさんの方を見てみると、料理を呆けた顔をしながら見つめていた
「何か食べられない物でも入っていましたか?」
「あっいえ・・・・お肉を食べるのなんて久しぶりで・・・・ほ、ほほほほほんとうに頂いてしまっていいんですか?」
「なんだ、普段肉を食べないのか?」
「あっはい・・・・お金は小さい頃からおこづかいを貯めていたものだけだったので贅沢も出来ないから普段は獣が出ない森で寝泊まりしてそこら辺に生えてるキノコや食べれる草を採って食べてました」
切なすぎる・・・確かに服も目立った汚れこそないもののヨレヨレだし細い体つきだなぁとは思ったけどそんな生活じゃそうなるのも無理はない。お金もそれ位では手を出しづらかっただろう
ナイフで肉を切るとその柔らかさに驚いている様子で、口に溜まった生唾を1度飲み込んでから口に運んだ。すると勢い良くテーブルに突っ伏してしまった
「今度はなんだ!?」
「あ、あぁ・・・・すすすすみません。久しぶりに食べるお肉がいいお肉過ぎて体が驚いたみたいです」
「そ、そうか・・・・よく分からんが苦労してたんだなお前。ほら、もっと食え」
「あ、ありがとうございます」
肉好きなフレイヤが同情してソウカさんのお皿に自分の分を差し出す。それを見て他の皆も少しずつソウカさんに分けてあげるとソウカさんのお皿は山盛りの肉皿へと変貌を遂げた
その1枚1枚を涙を流しながら有難そうに食べ、最後の1枚まで綺麗に平らげていた
お腹を擦るソウカさんの顔は先程と比べてどことなく生気が戻ったように感じる。やっぱりまともな食事を摂取していなかったのもあったんだろうな
食べ終えたソウカさんが用意してくれたセフィリアに再度お礼を言い終え落ち着いたところで、私は今後の話を切り出した
「それでソウカさんはこれからどうする予定ですか?どこか行く当てとかありますか?」
「と、当初は私が活動している場所に戻ろうかと思ったんですが・・・・このまま帰ってもままままた同じ道を辿るだけだと思うので音楽の道は諦めて実家に帰ります・・・・」
お金がないというのもあるんだろうが、ソウカさんにとって今回のことはやはり相当なダメージだったようだ
いや、きっと今回だけでなく色々な失敗を重ねてきての発言なのだろう
けどあの歌・・・・ソウカさんが歌ったあの歌が今でも耳に残っている。勝手だとは重々承知しているがそれでも私はソウカさんには音楽を続けて欲しいと思ったので正直な気持ちをぶつけてみた
「さっきも言いましたが私はソウカさんの歌が好きです。専門的な事は分かりませんがあれだけの歌とリュートを弾けるようになるまできっとたくさん練習したというのは私でも分かります。そんな人が人前に出ることが出来ないってだけで諦めるのは凄く悲しいし何より勿体ないと思うんです」
「で、でも・・・・人前にたたた立つと思うだけでもこうして手と足がブルブル震えちゃってまともに演奏することが出来ないんです。そそそそんな私じゃこの先やっていける自信が・・・・」
そう言ってソウカさんは俯いてしまった。周りもその空気を感じて黙ってしまう
なんとか彼女にかける言葉はないかと考えていると、フレイヤが沈黙に終止符を打った
「まぁ今すぐ決断することないんじゃないか?明日はどうせ仕事が無くなって暇なんだろ?思い詰めてても仕方ないしこういう時はパーッと遊ぶに限る!」
「え、で、でも泊めて頂くだけでも有難いのにここここれ以上ご迷惑をおかけするわけには・・・・それにお金が・・・・」
「うるさい!いいから付き合え!それと・・・・風呂に入るぞ!髪とかボサボサじゃないか!身だしなみ位気をつけろ!」
「ふ、ふえぇぇぇぇ・・・・・!」
フレイヤの提案により強引に明日の祭りにソウカさんを加える事が決定した
まぁ確かに楽しい場所に行って遊べば気持ちが明るくなって考えが変わるかもしれない。少しでも前向きな気持ちになるよう私もサポートしよう
その後、ソウカさんをピカピカにする為私達は2度目のお風呂に入ることとなった
場所は変わって王城から少し離れた場所にある修練場では1人黙々と剣の素振りを行うアルディーン王子の姿があった
「エレナさん遅いな・・・・はっ!もしやこれが焦らしプレイというやつなのか!?エレナさんも人が悪い。よし!エレナさんが来るまでにしっかりと準備を整えておこう!ふっ!ふっ!ふっ!」
そうしてエレナを待つ王子でだったが、当のエレナはそんな約束等完全に頭から抜けていたので王子の元にやって来ることはなかった
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