129話 2度目の生誕祭
「なんだお前そういう事だったのか。早く言ってくれれば怪しまずに済んだのに。疑って悪かったな」
「いやぁ誤解が解けてよかったよぉ♪」
最近フレイヤとセレーネの2人がよく話しているところを見かける。以前はそこまで積極的に話すような仲ではなかったと思うが、2人でいる時間の時にセレーネが働いているお店にフレイヤが手伝いにいったのがきっかけのように思える
メイド喫茶なるお店で可愛らしい制服を着て接客するというフレイヤが好まなそうな仕事のように思えてたがどうやって説得したんだろうとセレーネに聞いてみたところ、どうやら自分の正体を明かしたらしくそこから距離が縮んで昔の話を色々と話したそうだ
まぁフレイヤであれば問題ないし騒ぎになるようなことはないだろうが、時折2人で話している時に私の顔を見ながらニヤニヤしているのがどうにも鼻につく・・・・
それ以降フレイヤはたまにセレーネのバイトの手伝いをしているようなので今度皆でお邪魔しようかと言ってみたら激しく拒否された。制服姿で接客しているのを見られるのが恥ずかしいのだろうか?
そんな事を考えながら久々の休日をテラスでのんびりと過ごしていると、いつも郵便物を持ってきてくれる郵便配達の人がやって来た
「エレナさーんお手紙でーす」
手紙を受け取るとそれは以前にも届いた事がある王宮からの招待状だった。正確には王宮からというより王女セフィリアからの招待状と言った方が合っているか
手紙の内容はというと勇者エイクの生誕祭開催の知らせ。去年はシスカの護衛という形での参加だったが、今年は王族直々の招待か
街の人達の話から今年もやるような事は耳にしていたが、本当だったようだな
例年であれば私達が旅行に行っていた間に開催されていたはずだったのだが、去年の年終わりに例の魔物騒動が起きて以降国の方が対策を講じて王都の防衛体制を強化していた関係で例年より少し遅い生誕祭となったようだ
正直祝われる側からしたら当日に祝えないのなら無理にやらなくてもいいように思うが、生誕祭は国民達にとっても貴重なガス抜きができる日でもあるようなので多少遅れても開催することに決めたのだろう
個人的に参加するのは控えたかったので旅行券が当たった時は行かなくて助かったと思っていたんだが・・・・私宛ての招待状が来たからには今年も参加しなくてはならないようだ
私以外の皆は勿論参加する事を望んでいる。特に去年参加できなかったシエル、ラミアス、セレーネは初参加となるので非常に楽しみにしている
セレーネの場合はずっと刺さりっぱなしで遠くから見ることしかできず生殺しだった為、人一倍参加したい欲が強い模様
開催は明日と急ではあるがいつものように転移門でひとっ飛びすればどうにかなる。皆も予定は問題ないようなので明日朝イチで王都へと行く事にした
翌日、予定通り王都へと行くと、王都を囲む防壁が大分様変わりしていた
立ちはだかる防壁の手前には幅、深さ共に10mはある堀が出来ていて可動式の橋が架けられていた
結界の方以前から使われていたものに加え新しく導入したもの使用し二重結界にしてより強固に強化されている
更に以前はあまり数がなかった対空装備の方も増えてどこから来ても対応できるように改良されていて、充実した設備が完成していた
講師の仕事で何度も足を踏み入れ作業をしている様子は見ていたものの、こうして出来上がった姿を見るのは初めてだ
今までのお飾りのような防壁に比べたら遥かにマシとなっている。これならば以前の魔物レベルであれば対処できるだろう
「確認出来ました。これから係の者が王宮までご案内致します」
検問所で招待状を見せ、用意された馬車で王宮へと向かっていく。王都内は去年に勝るとも劣らない盛り上がりを見せている
初めて見る生誕祭にシエルとラミアスは馬車から身を乗り出して外の様子を窺っていた
セレーネも同様で外を眺めながらめぼしいお店のチェックをしてメモをとっている。今までバイトで貯めていたお金は全部ここで消えそうだな
馬車が進んでいきやがて王城の前までやって来る。すると入口には既にセフィリアとその一歩後ろにユリウスさんが待ち構えていた
普段のドレスの姿と違って動きやすいパンツスタイルで一般人に紛れやすくしたような格好だった。どこか私の格好と似ているようにも感じた
馬車を降りるとセフィリアがこちらに駆け寄ってきた
「お待ちしていましたエレナさん!」
「お久しぶりです。招待して頂きありがとうございます。数日間お世話になります。ユリウスさんも先日はありがとうございました」
「いえ、それはこちらが言うことです。あれからツバキとこまめに連絡を取り合っていたんですが、先日届いた手紙に今日こちらにやって来ると書かれていたんです」
「本当ですか。それは楽しみですね」
私とユリウスさんだけが知っている会話をしていると、セフィリアが突っかかってきた
「ちょっとユリウスなんの話をしているの!?私の知らないところでエレナさんと会ったの!?」
セフィリアが問いただす形でユリウスさんに詰め寄る。するとユリウスさんは薄い笑みを浮かべた
恐らくわざとやっているんだろうが、それは効果的だったようで勝ち誇ったようなその笑みを見たセフィリアは悔しそうに地団駄を踏んで悔しがっている
こうして2度目の勇者生誕祭は騒がしい幕開けとなった
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