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125話 ラミアスの特訓

海底都市シーアトラまでの長旅から帰ってきた私達はまたいつもの生活へと戻っていった。色々あった旅行ではあったが、楽しかった事もたくさんあったし皆新しい環境に触れた事でリフレッシュすることができた




「じゃあこれから訓練を開始するよ。準備はいい?」


「ドンとこい!」




そして今日からラミアスの能力を使いこなせるようにする為の訓練を行うこととなった

前回のクラーケン達の時は偶然上手くいったようだが、この前の時のように感情が激しく揺れ動いている状態で能力を発動させた場合、ちょっとした事で能力の効果が失われて使役した魔物が暴走しないとも限らない

なので特訓を重ねて自分の能力を完全にモノにしてもらう




「で、具体的には何をすればいいんだ?」


「それは・・・・」


「それは?」


「分からない!」


「なんだそれ!」




期待して聞いていただけに盛大にズッコケるラミアス

仕方がない。私の周りにはそういう能力を持っている人物はいなかったしそもそもモンスターテイマーが稀有な存在なのだ

その上モンスターテイマーは生まれながらに使役できる上限のようなものがある為、大したものでないと話題にもならないから話題に上がってくる事は滅多に無い。私の知っている限りではこの前王都を襲撃してきた奴と昔魔物の軍勢を率いてきたラミアスの母とも考えられる者の存在だけ

図書館に行ってそれ系の本を読み漁ってみたが、どれも抽象的に書かれていていまいち理解が出来なかったのでとにかく実戦をひたすら行うことにした




「とりあえず数をこなしていこう。適当にそこら辺の魔物や動物で色々試して使役する感覚を掴んでいけば上達していくはずだよ!多分」


「大丈夫なんだろうか・・・・」




不安な顔をするラミアスを連れて私達は魔物達がいる森の中へとやってきた。この新人冒険者御用達の森ならば比較的弱い相手しかいないからいい練習相手となってくれるはずだ

今日はその中でも襲ってくる事のない温厚な動物から始めるとしよう

森の中を歩いていき手頃な相手がいないか探していると木の上でどんぐりを齧っているリスを発見した。あれなら失敗したとしても危害を加えられる事はないからちょうどいいな




「ラミアス、あそこにいるリスから始めてみようか。あのリスだけに集中してこっちに来るように話しかけてみて」


「わ、分かった。やってみる!」




これは初心者モンスターテイマー向けの本に書かれていた使役のやり方。この程度しか分からなかったが最初ならこれ位で十分だろう

リスに向けて手をかざし意識を集中させるラミアス。その様子をどんぐりを齧りながら見ているリス

暫くその状態が続いて特に何も起こらなかったが、リスがどんぐりを食べ終えると木の上から下りて来てラミアスの足元に近寄って来た




「わっ!本当に来た・・・・へぶっ!」




ラミアスの頭に登ってきて成功かと思ったらそのまま顔面を蹴ってまた木の上に登っていってしまった

使役するのに成功した訳ではなく偶然近寄って来ただけだったようだ




「まぁ最初から上手くいくもんでもないし、さっきも言ったように回数を重ねていくしかないね」


「うぅ・・・道のりは長いな」




まだ幼いのだから気長にやっていけばそのうち感覚を掴めるだろう

それから他の動物で何回か試してみたが、初日は1度も使役する事が出来ず終了した

その日の夕食時、ラミアスがどんな魔物をテイムしたいのかという話になった




「ラミアスはテイムするならどんな子がいいの?」


「そうだなぁ、やっぱりモフモフした触り心地が良さそうな奴がいいな!」


「モフモフした・・・・そうすると狼さんとかですかね。鼻も利きますし脚とかも速いから背中に乗れたら気持ちいいかも」




モンスターテイマーには2つの使役の方法があり、一時的に相手の力を貸してもらう方法とお互いが信用できる相手と判断した時に契約を行って使役するテイムという方法がある。一見手順が必要なテイムの方が面倒に感じるだろうが、契約を行うことによって契約した相手の能力が向上するのだ

能力の向上は相手の信用、親密度が関係していてそれに比例して向上値も変わってくる

ラミアスの場合は自身に戦闘能力が備わっていないので出来るならテイムの方がいいだろう

テイムのやり方も一応本に書いてあったしなんとかなるだろう


そうしてラミアスとの訓練の日々が暫く続いた。失敗を繰り返しつつも数を重ねたお陰か温厚な小動物程度なら使役出来るようになっていた。着実に感覚を掴んでいっていつものように森の中で練習を行おうとしたある日




「さっ、今日も張り切っていこう」


「おー!・・・・ん?」




ラミアスが何かを発見したようで自分の肩程あるがさやぶの中を進んでいく。するとその奥には1匹の小さな狐が地面に倒れていた




「キツネだ!」


「キューン・・・・」


「ラミアス気をつけて。親が近くにいるかもしれないから」




警戒して周囲を確認するが近くにはそれらしい反応は見当たらなかった。小麦色した毛並みに尻尾が3本生えている狐。魔物なんだろうがこの辺りでは見かけたことがないな。親と逸れてしまったんだろうか




「エレナ、このキツネ怪我しているぞ!」




ラミアスが狐の元に駆け寄って行き、こちらに怪我をしている脚を見せてきた。結構深い傷だな・・・この状態では歩くのも難しいだろうし他の魔物にやられるのも時間の問題だろう

ラミアスの要望もあり私はその狐の脚を治してあげることに。脚を治してあげると狐の子供は恐る恐る立ち上がって自分の脚の具合を確認し、治った事が分かると嬉しそうに飛び跳ね始めた

お腹も空かしていたようなので持っていた肉の塊をあげると夢中になって齧りつき始めた

あっという間に肉の塊を食べ終えるとラミアスと私の元に近寄り体を擦り寄らせてきた




「何だか懐かれたみたいだね」


「可愛いなぁ・・・」


「そうだラミアス、この子をテイムしてみれば?」




周囲にこの狐の親もいないし怪我が治ったとはいえ子供だけで生きていくのは少々厳しいだろう

幸いこちらに懐いてくれているようだし試してみるにはちょうどいあ機会だろう




「お前、私達と一緒に来るか?」


「キュ~ン!」




ラミアスの問いかけに甲高い声で答える狐。そこからラミアスとの契約が始まる

契約を行うにあたって必要なのは相手と自身の生き血。それをお互い手の平に塗る。今回相手の場合は肉球か

そして手を合わせて呪文を唱える。相手が拒んだりしなければそれで契約は完了ということになる




「我が名はラミアス・ボルディゴス。魔なる者よ我と契約を結び眷属となりて力を貸したまえ」


「キュン!」




ラミアスが唱えると周囲に魔法陣が発生し、数秒ほどすると消えた

どうやらこれで契約は無事に完了したようだ




「おめでとうラミアス。上手くいったみたいだよ」


「本当か!これからよろしくなぁ!そうとなったら早速名前を考えてやらないとなぁ!」


「キュンキューン!」




名も知らぬ魔物ではあるがラミアスの記念すべきテイムした魔物の1体目。まだ子供だから戦力になるかは分からないが一先ずは成功した事を喜ぶとしよう



読んでいただきありがとうございました!

「よかった」「続きが気になる」など思っていただけたら幸いです

少しでも気に入ってくれた方ブクマ、評価、感想等々頂けると大変励みになります

次話投稿時間はTwitterの方で告知させて頂きます。よろしくお願いします!

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