124話 長い旅の終わり
魚人に捕らわれていたラミアスの救出に成功した後、私達は海竜の背中に乗せてもらい洞窟から脱出した
海水が逆流してくる道を全く意に介さない様子でスイスイと進んでいき、あっという間に洞窟を抜けて海中に出ることができた
それから入口の方で待機していた皆の元に戻っていった。怪物3匹で向かって行くと潜水艇の中で皆の慌てふためく姿が見えた。まぁこの状況を見れば誰でもそうなるだろう
海竜の背中から離れて潜水艇の中に入ると助けにやって来てくれたクラーケン達はそれぞれの縄張りへと姿を消した。敵に回したら厄介この上ない存在だが今回は本当に助けられた私達の元を離れていった3匹を見送っていると、傍らにいたシエルが突然ずぶ濡れのラミアスの元へ駆け寄って抱きついた
「ラミアス様!」
「わっ!な、なんだシエルどうした苦しいぞ!」
「ご無事で本当に良かったです・・・」
ラミアスに抱きつくシエルの目からは涙が流れている。それはシエルが初めて見せた涙だった
今まで多少表情が変わることはあってもここまで感情を表に出したのは見たことがない。私達は驚きのあまり開いた口が塞がらなかった
でも考えてみればそうなるのも不思議ではないか。最近こそセレーネが居着くようになって3人で自宅にいることもあったが、それまでは基本学校から帰ってきたラミアスと家の事をしてくれているシエルが一緒にいる時間がこの中で1番長かったし、何かあった時も2人で待ってもらっていたりする事も多かった
純真なラミアスとそういった時間を過ごしてきた事によって少しずつ感情が芽生えていき、今回の事がきっかけで爆発したように思える
それから都市へと帰るまでの間シエルはラミアスの事を離すことはなくラミアスが頭を撫でて落ち着かせるという逆の立場になっていたが、落ち着きを取り戻すとまたいつもの表情へと戻った。目や鼻から流れるものが流れて顔が凄いことになっていたが
こうしてなんとか無事に帰ってくる事が出来た私達は都市へと帰還した。まぁ今回の私は本当に何しに行ったんだって話だったわけだけだが・・・・
都市に到着した後は憲兵団に事情を説明して洞窟に残っているであろう魚人2人を捕まえに行ってもらった
氷漬けにされた魚人の方はそのままだったが、もう片方は意識を取り戻していたらしい
けど壁に強く叩きつけられたせいで全身の骨にヒビが入っていたようで身動きが取れずその場で倒れ込んでいたそうだ
これで密猟を行っていたリーダーも確保。取引を行っていた相手も捕まえる事ができたから芋づる式に関わっている者達の存在が明らかになるのもそう遠くないうちにその連中達と捕まることだろう
「ふぅ、この前の時といい散々な目にあったね」
「でもあいつら全員捕まったんですしこれでもう安心ですね」
「そうだね。はぁ、一息ついたら何だかお腹空いちゃったね」
都市に到着した頃には時刻は正午を少し過ぎていた。ちょうどいい時間帯だったしラミアスの体調も問題はないようだったので、私達はヴォールスさんのお店へ昼食を食べる事に行った
初日の夜に行った時もほぼ満席だったが、お昼もかなりの混み具合
けど今日は大丈夫。前日に予約をしていたのでスムーズに席に着くことができた
ランチセットと本日のオススメという一品を注文し、料理が到着すると皆一斉に食べ始めた
「さぁ食べるぞ~!」
「いただきまー・・・ん?どうしたのラミアス」
「い、いや!なんでもないぞ!いただきまーす!」
少し様子のおかしかったラミアス。やはり体調が良くないのかと思ったが、料理をモリモリと食べているからそれは杞憂のようだ
気の所為だろうと思い私も傷は回復したものの血を流しすぎていた為栄養をとりたかったので昼食に集中した
ヴォールスさんの料理を十分に堪能してお腹を満たした後はまだ行っていない箇所を散策しに向かった。その間ラミアスの様子を窺っていたが、やはりどこか元気がなかった
海竜に乗っている時はあんなに目をキラキラと輝かせていたのにどうしたんだろうか
その日の夜、ベッドに入って眠りにつこうとしている私の隣にラミアスがやってきた思ったら服をギュッと掴んで離してくれなかった
「どうしたの?ずっと様子がおかしかったみたいだけど」
「えと・・・今日はごめんなさい。我のせいであんなにボコボコにやられて・・・・」
ラミアスが気にしていたのは私が傷を負わされていたことについてだったようだ
海竜の時はなんとかテンションを誤魔化していたようだが、その事が結構ショックだったらしく思いつめていたのか
「あれはあいつ等が悪いだけだから別にラミアスのせいじゃないし気にしなくていいよ」
「でも我が捕まらなかったらあんな事にならなかったわけだし・・・・我がもっと強かったら迷惑をかけなくて済むのに」
ん〜ラミアスはまだ子供なんだからそんな事気にする必要ないんだけどなぁ。そう話しても本人は納得しなさそうだなぁ
「じゃあさ、帰ったら練習しよっか。ラミアスの今日見せてくれたあの能力を鍛えてみよう」
「あの能力ってクラーケンを呼んだやつのことか?」
「そう、それを使いこなせるようになれば今日みたいな奴らなんて屁でもない位強くなれると思うよ」
「本当か!なら帰ったら早速特訓をしよう!」
先程まで弱気な表情をしていたラミアスはすっかりいなくなった。やはり元気な笑顔を見せてくれるラミアスが1番だ
その夜はそのまま一緒に寝ていよいよ海底都市での最終日を迎えた。お昼まで都市に滞在した後私達は再び迎えにやってきたウミ君の背中に乗り、日が暮れる頃には港に到着した
そこでチェルシーさんとお別れをした。海底都市にいる間殆ど一緒にいたから別れるのは少し寂しい
また必ず遊びに来る約束をするとチェルシーさんとウミ君は海の中へと消えていった
港に着いた後はツバキさんが働いてる宿で1泊した。そこでの挨拶も済ませた翌日、迎えにやって来た客船に乗って私達の家があるエイリアス大陸へと航行を開始した
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