122話 人質
連れ去られたラミアスを追いかける為、チェルシーさんに協力してもらい潜水艇で後を追っている。姿を消しながら移動をしているせいで具体的な居場所は掴めないが、進行方向は分かるのでなんとか追うことが出来ている
しかし魚人の逃げる速度の方が速い為、こちらとの距離を徐々に離していく。このままでは索敵範囲から出てしまう
「ねぇ、もっと速度は出せないのかい?段々と距離を離されていってるみたいだよ!」
「すみませんこれが最高速度です〜!」
「ここをこうすればもっと速くなるんじゃないのか!ふんっ!」
「あぁ!それは燃料タンクを開けるボタンです!動かなくなっちゃいますよ〜!」
3人が言い争っている間にもどんどん距離は離されていき、やがてラミアスと魚人は索敵範囲から出てしまった
こうなっては最早何処にいるか分からない。海の中を移動し始めてから間もなく10分が経過する
呼吸が出来ず今頃・・・・いや、今そんな事を考えてもどうしようもない。今はラミアスを救出する為に一刻も早く追跡を開始しなくては
私は昂る気持ちを抑えつつ妖精の囁きを使用してラミアスの元へと急いだ
「おい、起きろ」
「ん・・・がはっ!かはっかはっ!どこだここは?おい!この縄を解け!」
「起きて早々うるせぇ奴だな」
意識を取り戻したラミアス。飲み込んでしまった海水を吐き出しながら辺りを確認しようとすると自身の手足が縛られていることに気づき、脱出を試みようと必死に暴れる
縄は頑丈に結ばれていてラミアス力ではちょっとやそっとじゃ切れない。それでも必死に抵抗を続ける
「この!ほーどーけー!」
「攫う時も殴りまくってきたしとんだじゃじゃ馬を連れてきちまったようだな。まぁちょうどいいや、俺の取引相手にお前みたいな強気な子供を調教するのが大好きな変態おやじがいてな。捕まえた魚共の代わりにお前を売り飛ばしてやるから覚悟しておけよ」
「くっ・・・!すぐ私の仲間が来てお前なんかボコボコにしちゃうんだからな!」
「おーおー怖えなー」
強気な態度を見せて平気な様子を見せているラミアスだったが、内心は怯えていて体の震えを抑えるのに精一杯だった
それでもなんとかエレナ達が助けに来ることを信じて出来るだけここにいる時間を引き伸ばそうと必死に頭を働かせる
すると海面から突然勢いよく現れる者がやって来た。エレナ達かと期待を膨らませたが、ラミアスが望んでいた人物とは違っていた
「よぉ、待たせたな」
「遅せぇぞ。先に待ってるって約束だっただろうが」
「そっちの手下共が捕まったのが悪いんだろうが。お陰でこっちはいつもより警戒をしなくちゃいけないハメになったんだからな」
やって来たのはエレナ達ではなく魚人の取引相手のようだ。ラミアスを見るとその魚人は舌舐めずりをしながら近寄ってくる
「で?こいつが取引のブツか・・・・へぇ、中々いいじゃないか」
「だろ。気が強いがそういうの好きだろ?あんたんとこの主人はよ」
「あぁ、うちの主人が喜びそうな人間だ。これなら高値で取引してもよさそうだな」
ラミアスの目の前で金銭のやり取りが始まる。あれが終わったら連れ去られてしまう
どうにかしようと先程から策を考えているが、この状況ではどうにもできない。必死に体を動かし続けて縄が緩まないかと試すがやはりビクともしない
そうしている間に取引が済んだようで魚人がラミアスの元にやってきた。魚人がラミアスに手を出そうとしたその時、再び海面から姿を現した
「ラミアス!大丈夫!?」
「え、エレナ!」
「早いなもう来たのか」
「おいっ!なんだこいつは!このガキの仲間か?聞いてないぞ!」
動揺する取引相手を横目にラミアスに手を出そうとしている魚人の方を見る。良かった・・・特に外傷もないし元気そうだ
ここに来るまでの道のりは潜水艇で進むことはできず、一本道が長く続いていたので私だけ先にやってきた。前回と同じ魔法をフレイヤとラミアスにかけて外で見張りをしてもらっている
「早くラミアスを早く解放しろ」
「おいおい、そんな強気なこと言っていいのか?こっちには人質がいるんだぞ」
「いいのか?ラミアスを傷つけたら取引が不成立になるぞ」
「ここで捕まったら取引もクソもないからな。少しでも変な事をしたら・・・分かってるな?」
ラミアスと少しでも距離が離れていたらなんとかなったのだが、あの距離では魔法を放って当たるまでの間にラミアスが先にやられてしまう
我ながら得意気にやってきた癖に無様なものだ。私は鞘から手を離して刀を地面に置き、相手の言う通りに従った
「へへっそうだ、それでいい」
「おい、抵抗しないなら俺が貰っていっていいか。こいつは俺好みの女だ。こういう綺麗な顔立ちをした女をいたぶるのが大好きなんだ」
「お前の趣味は知ったこっちゃないが・・・・好きにしろ」
もう1人の魚人がこちらに近づいてくる。その後ろでは抵抗するなと言わんばかりにラミアスを人質にしている魚人の姿。私は為す術なくその場で立ち尽くす
近寄ってきた魚人は私の顔をジロジロと見た後、思い切り殴りかかってきた。それにより口の中が切れて血が流れ出る
しかしそれはまだ序の口にすぎなかった。そこから私は何度も何度も殴られ、気づけば視界が赤く染まってしまった
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