120話 囚われた子達の解放
退路を塞がれた私達は魚人達に包囲され戦闘を繰り広げることとなった
入口からやって来た魚人の相手をフィオナに任せ、人数が多い方を私が担当する
相手の出方を窺っていると、タコの姿をした魚人がこちらに向かって墨を吐いてきた
周囲が一瞬で黒に染まり視界が阻害される。こちらから相手の様子を確認出来ないようにして複数で一方的に攻撃するつもりか
それに対抗してこちらも敵の位置を把握できるよう魔法をかける
上下左右に敵が散らばった状態で左から鋭く放たれる銛の突きが来る。それを躱そうとするが、地上と違い思うような動きが取れないせいで避けきれず僅かに傷を負い血が流れる
流れ出る血が海中に混じる。すると姿は確認出来ないが前方にいる魚人の気配が変わっていくのを感じ取った
「うっ・・・!ゔゔゔゔゔ!」
力が増大していくのを感じる。奴等の中にサメの魚人が1人いたな
サメ型の魚人な微量な血の量でも匂いを嗅ぐと興奮して力が増す。面倒だな
しかしそちらばかりに意識を配るわけにもいかない。背後を取られないようにしようと壁側の方へ移動を試みようとすると、そうはさせまいと無数の棘が飛んできた
体に棘を生やしていた魚人の攻撃か。自分の棘を飛ばしてくるとは
魔物と戦っているような感覚だがこいつ等はしっかりと連携をとって攻撃を仕掛けてくる
棘の遠距離攻撃と銛を持つ魚人の攻撃に気を取られていると、サメ型の魚人の力を込めた拳がこちら目掛けて飛んできた。それを間一髪のところでなんとか躱すと魚人の拳はそのまま壁に直撃した
壁一面に亀裂が入り洞窟内が揺れる。あれをまともに食らったらひとたまりもない
距離を取りたくても移動速度は圧倒的にあちらが上で防戦一方といった展開となっていた
「へっ、所詮は人間だな。まともに攻撃が避けらてないじゃねぇか。水中で俺達魚人に勝てるわけがないんだ」
「おい、俺のこの強化状態が持続しているうちにさっさと仕留めるぞ」
「あぁ分かってる。あっちは思いの外苦戦しているようだな。みっともねぇ」
フィオナの方に目を配ると善戦して持ち堪えてくれていた。素早さで勝てないならと魔法で防御を厚くし、魔法を連発して相手に攻撃の隙を与えないようにしている。魔力量が多いフィオナだから出来る戦い方だな
さて、こいつ等の発言はムカつくが事実その通りなわけで、今の状態ではこいつ等に反撃する事も出来ない
けどもう少しだ。もう少し時間を稼げれば奴等と同じ様に動ける
そう考えていると突然目の前が霞み始めた。これは・・・毒か
最初の掠った攻撃、いやあのタコの魚人が吐いた墨に混ざっていたのか。何の違和感もなかったし遅効性の毒だった為に気づくのが遅れてしまった
幸い動きを鈍らせる程度の弱い毒だったのですぐさま魔法で解毒をする
「ちっ、治されたか。まぁいい、全員で攻めて確実に仕留めるぞ!」
リーダー格と思われる魚人の掛け声で残りの魚人が攻撃を仕掛けてくる
今までよりも一層激しい攻撃の連続。一息入れる暇もなくその攻撃をギリギリのところで避ける
しかしそれも最初だけで徐々に魚人達の攻撃は刀で受ける必要もなくなり、余裕で躱せるようになっていった
違和感を覚え始めた魚人達はムキになり始め、攻撃が単調になり始めていた
「なんだこいつ!急に動きが良くなったぞ!」
「ん?おい!あいつの手足を見てみろ!」
気づいたか。そう、今の私には魚人と同じヒレがついている
トレースアビリティ。接触した相手の能力を一時的に自身のものにする魔法
近接タイプの2人が攻撃をしてきた際に避けるのと同時にコッソリ触らせてもらった
これのお陰により私の手足にヒレが生えて水中でも自由に身動きがとれるようになった
魚人と同程度とまではいかないが、これなら奴等に遅れをとることはない
「あいつ魚人だったのか!?」
「落ち着け!数ではこっちが有利なんだ。冷静に対処すればどうってこたねぇ行くぞ!」
タコの魚人が再び墨を吐く。しかし自由に身動きがとれるようになった今の状態であればそれはもう通用しない
更に水中でも踏ん張りが利くようになった為、刀を振るう威力も段違いだ
吐かれた墨を素早く躱し、始めに銛を持っている魚人を狙った。突き刺そうとしてきた銛を刀で受け流し、胴部分に攻撃を打ち込む
それを魚人に間一髪のところで避けられてしまう。浅い傷がついただけで致命傷にはならなかった
やはりまだ感覚が掴めていないかと考えていると、傷をつけた魚人の様子が変わっていき頭を抱え始めた
「あ、ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!」
「お、おい!どうした!」
「お前一体何をした!」
突然発狂しだした魚人の1人を見てたじろぐ他の魚人達。そして発狂が終わると傷を負った魚人はその場でブツブツと何かを呟くだけで動かなくなってしまった
私にもよく分からないがもしかしてこの刀の能力か?切りつけた相手を精神異常状態にするのか
怨念としてとり憑いていた女性は成仏させたけど能力だけは刀に残ったままになったようだ
聞いていた精神支配とは違うけどあの程度の傷であれ程狂ってしまうとは・・・人に向けて使うのは控えた方が良さそうだ
仲間がどのような方法で廃人とされてしまったのか分からない残りの魚人達は途端に尻込みしてしまい、先程までの勢いは完全に失われてしまった
その機を逃さず1人また1人と戦闘不能にしていき、結果的に憲兵団が来る前に魚人達を制圧する事に成功した
勝ち目がないと判断して逃走を図ろうとした残りの魚人達もフィオナの魔法によって沈められた
「お疲れ様でした~終わってみたら呆気なかったですね」
「そうだね。・・・・ん?なんだか人数が足りないな」
倒した魚人を見るとそこにいるのは全員で7人。始めは8人いたはずなのに1人足りない
多分戦闘に参加しないで様子を見ていたリーダーと思われる魚人だ。もしかして逃げられたか?
海の中にも擬態をして身を隠す生物がいるようだからもしかしたらそれの類かもしれない。この辺りからはもう気配を感じないから別のルートを使って逃げたのだろう
追って捕らえたいところだが、今はこの檻に閉じ込められている子達を解放してあげなくては
その後憲兵団を連れてきてくれたチェルシーさん達と合流し、捕らえた魚人達を引き渡した
捕まっていた海洋生物の子供達も憲兵団が預かる事となり、責任を持って元の場所に返すと約束をし私達は都市へと帰還
色々とトラブルに見舞われた1日だったが、結果捕らえられていた子達を救う事が出来て本当に良かった
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