117話 海底火山探検
海底都市シーアトラに来て3日目。この日は都市から離れた場所にあるという海底火山の探検をする事となった
都市から海底火山までの距離はおよそ100km。ウミ君に乗っていた時と違い、日帰りで往復をしなくてはならないので今回はウミ君より更に速い速度を出す乗り物を利用して向かうこととなる
私達はチェルシーさんに準備があるからと昨日遊んだ海岸で待っているよう言われたので迎えに来るのを待っていた
「遅いですねぇチェルシーさん」
「ここに来る時といい毎度待たせてくれるな。準備にいつまでかかるんだ」
「まぁ時間はあるし気長に待とうよ」
前回に似たような問答を繰り返しつつ、砂浜で遊びながら暫く時間を潰していると数名の魚人のグループが私達の横を通り過ぎて海の中へと潜っていき、そのまま外へと出ていった
網を持っていたから漁でもするんだろうか。そんな事を考えているとどこからか声が聞こえてきた
「・・・・さーん」
「ん?チェルシーさんの声?」
耳を澄ますとそれはチェルシーさんの声。しかし周囲を見渡すも姿は見当たらない
気のせいかと思っていると今度はハッキリと私達を呼ぶ声が聞こえてきた
「みなさーん!お待たせしましたー!」
声が聞こえてきたのは海の方から。姿を現したチェルシーさんが乗ってきたのは巨大な金属の塊の船にも似たような形状をした乗り物で、その上からこちらに向かって手を降っていた。これを用意してくるのに時間がかかったようだ
海岸に到着すると前方の扉が開きチェルシーさんに中に入るよう言われたので、言われるがままに中へと進んでいく
塊の中には座席が置かれており、外の様子を窺えるよう小窓がいくつか取り付けられていた
先頭の方には先程乗り物の上にいたチェルシーさんがハンドルを握りながら私達を待ち構えていた
「なんですかこの乗り物は?もしかしてこの乗り物で水中を移動するんですか?」
「そうです!これで海底火山までの道のりを快適に移動することができるんですよ。私も最近使い方を教えてもらって乗り始めたんですが潜水艇という乗り物らしいです」
これも帝国で見た自動車と一緒で新たな技術を用いて作られて物か。操縦の仕方さえ学べば誰でも航行可能というのなら人間にとっては実に便利な乗り物だな
全員が乗り終わり扉が閉まると潜水艇はけたたましい音をあげて動き出し、都市の外へと移動を始めた
一定の深さまで潜水し都市を覆う膜を抜け出すと速度は一気に上昇しだす
ウミ君の時は海の中を優雅に泳いでいる感じでゆっくりと楽しむ事ができたが、この潜水艇は目的地へ素早く辿り着く事を目的とした乗り物。小窓を覗くと次々と景色が変わっていくのが分かる
私達がやってきたルートには周囲を照らしていた発光石は都市周辺にしか見当たらなかったが、現在私達が進んでいる方角にはたくさんの発光石が散らばっていた
「この辺りには光る石がたくさんありますけど何か理由でもあるんですか?」
「あの石は火山から発生する地熱エネルギーを吸収して発光しているんですよ。なので火山付近にたくさんできるんです」
なるほどそんな仕組みになっているのか。じゃあそこから掘り出そうものならエネルギーの供給が途絶えてただの石になってしまうということか
可能なら幾つか貰えないかと思ってたけど難しそうだ
潜水艇で移動する事2、3時間。発光石を辿るように都市から移動してきた私達は乗っている間泳いでいる深海魚を眺めたり、チェルシーさんが操縦する様子を観察したりと時間を潰していた
するとずっと道を照らしてくれていた発光石が周囲から少しずつ減っていっているのが周辺の暗さの感じで見てとれた
その状態のまま更に進んでいくと段々と明るさを取り戻していったが、先程までの発光石が照らすような白光ではなく辺り一帯が赤一色で照らされている。その理由はチェルシーさんの言葉で明らかとなった
「皆さん下を見てみて下さい」
先頭の方に来るよう手招きされ下の方を覗くとそこには海の中にも関わらず赤く輝く花が生えていて、それが周囲を埋め尽くすように咲いていた。発光石の数が減っていたのはこれが理由だったようだ
「あれは火花という花です。この花も地熱エネルギーの影響で咲く花で火山地帯の近くに生息してるんですよ。これだけ咲いているということは目的地はもうすぐです」
チェルシーさんの言う通り火花の花畑を抜け、立ちはだかる岩場を躱して抜けるとそこには海中で真っ赤な溶岩を吹き出し続ける火山が聳え立っていた
「うわぁ凄いですね。ここからでも熱気が伝わってきます」
「なんだか故郷を思い出すなぁ」
フレイヤは火山地帯で育ったから新鮮な気持ちでというより懐かしさを感じながらその光景を眺めていた
これだけ近づいていると海中の温度も高くなってるから結構暑い。しかしそれを察してチェルシーさんがすぐさま空調をいい塩梅に調節してくれたので中はすぐ快適な空間となった。室温の変化も可能とは本当に便利だな
暫く火山活動を観察していると流れ出てくる溶岩が変な動きをし始めた。その様子を窺っているとそこから巨大な生物が突然姿を現した
全長20mはゆうに超えている魚は他の魚類と違い固まった溶岩が体を覆うようにこびりついている
あの生物は以前本で見た事がある。名前は確か・・・・
「あれはラヴァロドンです。火山地帯を縄張りにしててこちらからちょっかいを出さない限り襲ってくることはありません」
「本当・・・?なんだか凄い怒っているように見えるけど・・・」
セレーネの言う通り、ラヴァロドンはこちらを睨みつけるような目線を送っていて今にも飛びかかってきそうな雰囲気を放っていた
嫌な予感がしたのでチェルシーさんにこの場を離れようと提案しようとするがその前にラヴァロドンが先に行動を起こし、一度溶岩の中へと潜った後こちら目掛けて凄まじい形相で突進を仕掛けてきた
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