116話 皆で海水浴へ
ヴォールスさんのお店で夕食を食べた後、宿へと帰宅して明日からの予定に備えてゆっくりと体を休めた私達は翌日近くの食堂で朝食を済ませたら昨日の砂浜へ海水浴をしに向かった
通常であれば海水浴シーズンにはまだ早い時期だが、この海底都市は気温が高めで安定しているのでいつでも海に入れることができると宿の従業員から聞かされたので、この日は満場一致で海水浴に決まった
海辺へ向かっている途中、街中を1人で歩くチェルシーさんと出くわしたので声をかけた
「チェルシーさんおはようございます」
「あっ皆さんおはようございます。今日はどこに行かれるんですか?」
「これから皆で海水浴でもしようと思いまして。そうだ、もしよければチェルシーさんも一緒にどうですか?」
「えっ、お邪魔しちゃっていいんですか?ちょうど今日何しようかと考えていたところだったのでお言葉に甘えてお供させてもらいます!」
そうしてメンバーのチェルシーさんも加わり私達は7人で海辺へとやって来た。白い砂浜にコバルトブルーの綺麗な海
以前フィオナとフレイヤの3人で川で遊んだことはあるが、海で泳ぐのは何気にこれが初めてだ
「よおし!遊ぶぞー!」
フレイヤの声と同時に皆が服に手をかけ脱ぎ始める。到着したらすぐ入れるよう宿で服の下に水着を着ておく用意周到ぶり
日差しはないので必要ないが、雰囲気としてパラソルも立てておく
まだ水着を着ていないチェルシーさんは私と体型が似ていたのでフィオナが用意しておいてくれた予備を貸してあげ、更衣室へと消えてから10分程で戻ってきた
そこで初めて気がついたのだが、チェルシーさんの背中には控えめな背びれが生えていた
「お待たせしましたー、水着借りちゃってすみません。これ可愛いですねぇ♪」
「いえ、ってチェルシーさんその背びれ。チェルシーさんも魚人だったんですね」
「ん?あぁ、言ってませんでしたね。私人間と魚人の血が混ざった混血児だったんですよ。だから見た目も普通の人とかわらないし背びれもこの通り中途半端に生えてるんです」
人間と魚人の間で子供が生まれるなんて珍しい。魚人の遺伝子は魚類とあまり変わらないから人間との間に子供が生まれる事は滅多に起こらないのだが、稀にチェルシーさんのような混血児が産まれてくる事もある。その場合私生活に支障はきたさないが、魚人のように海の中を自由に泳いだり呼吸をする事は不可能
魚人という部類にはなっているが体の一部に少し魚人の特徴が出るだけでほぼ人間と同じ見た目になる為、今回のように水着になったり自分で明かしたりしない限り周りに気づかれることは殆どない
「なんだか羽が生えてるみたいで可愛いなぁ」
「ふふっ、ありがとうね。さっ!早く行こ!」
チェルシーさんが1番に海へ飛び込み、それに続く形で私達も海へと走る。ラミアスは今まで泳いだ事がないので浮き輪を持たせてそれを私が引いていくことに
私とラミアスの2人は私の足がつく場所までで泳ぎの練習。残りの面子は更に深い場所まで泳いでいった
「いいなぁー。我ももっと深いところまで行ってみたかったぞ」
「ちゃんと泳げるようになったらね。その為に今日は頑張って練習しよう」
ラミアスの手を引きながらバタ足と息継ぎの練習を始める。慣れてきたら一瞬だけ手を離して自力で泳がせるを繰り返していった
元々お風呂で泳ぐ真似をしていたこともあって上達は早かった。ずっと練習だけでは集中力が切れてしまうので、私とラミアスは一度パラソルの場所で休憩をすることにした
そのタイミングで深い場所まで潜りに行っていたメンバーも戻ってくる
売店で軽食を購入して海を眺めながら食べていると、私達の場所から少し離れたところでイルカの背中に鞍のような物を着けて人を乗せているのが見えた
「チェルシーさん、あれはなんですか?」
「あぁ、あれはロデオドルフィンですね。背中に乗ることができて海中を泳いでくれるんですよ。結構激しめでアトラクション感覚で楽しめて人気なんです乗ってみますか?」
「乗ってみたい!」
いの一番にラミアスが手を挙げる。ずっと練習をしていたから他の遊びもしたいのだろう
万が一落ちてしまった時の為に体を浮かせる装備を身につけさせておけばいいか
ロデオドルフィン1頭に対して乗れるのは2人まで。待機している場所に行くとちょうど人数分が縄に繋がれていて直ぐに乗ることができた
私とラミアスが一緒に乗り、振り落とされないよう鞍の前に付けられているハンドルをしっかりと握る
海の中にも潜る為、呼吸ができるよう顔の周りに膜を張って係員が柱に縛っていた縄を解いて準備が整う
「よろしくなー」
「キュイキュイキュイ♪」
「振り落とされないようしっかりハンドルを掴んでいて下さいねー。それでは行きますよー!」
係員が首に提げていた笛を吹いてロデオドルフィン達に合図を送ると一斉に海へと飛び込んだ
さっきまでいた場所から一瞬で離れ海中を凄い勢いで泳ぐ。右へ左へと海の中を縦横無尽に泳ぎ回り、時折潜水して底に着くとそこから急浮上して空高くジャンプをする
そんな激しい動きが数分繰り返された後、腕に限界がきたラミアスがハンドルを手放して海へと放り出されたので私も続いてラミアスの元へと泳いでいった
「大丈夫?ラミアス」
「ははははっ!楽しいなぁ!もう1回やろう!」
「キューイ♪」
私達が乗っていたロデオドルフィンが背中を向けて乗るように促してくる
それから5回程連続で乗り続け、ラミアスがようやく満足したところでロデオドルフィンに別れを告げた
その後は砂浜で二手に分かれてボールを使った遊びをしたり砂で城を作ったりと海での遊びを満喫していたらあっという間に時間は過ぎていき、気づけば辺りは暗くなり始めていた
「そろそろ帰ろうか」
「ベタベタになったから早くお風呂に入りたいですねぇ」
「・・・ん?ねぇ、あれはなんだろ」
セレーネが何かを見つけたのか海の方をじっと見つめる
それに釣られて私達も見渡すが特に何も見当たらない
「何もないぞ。気のせいじゃないか?」
「いや、確かに何かが光ったんだよ・・・あっホラ!」
セレーネの指差す方に目を凝らすと確かに何かがチラチラと光っている。その光は段々と増えていき、やがて海を覆い尽くす程の量となった
7色に輝くその光はまるで踊っているようにも見てとれる
「これは虹色海ホタルですね。ちょうど交尾の時期であれは求愛行動なんですよ。こんなに多いのは初めて見ますけど」
この時期でしか見られない光景か。帰り際にいいものを見ることができたな
私達は暫くその光景を観賞して満足した後、シャワールームで軽く汚れを落としてから宿へと帰宅した
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