114話 海底都市の光景
海底都市シーアトラ。広さでいえばレジティアと同程度の規模で、辺りにはキラキラと輝く珊瑚礁が街灯の役割を担っている
都市の周りには私達に使われている膜と同じものが張られており、二重構造になっていた。海底だというのに中にはビーチのような砂浜も存在していて海水浴を楽しんでいる人達もいた
ここまで連れてきてくれたウミ君が膜へとそのまま突っ込んでいくと膜が開き、海岸に着くと開かれた膜はまた元に戻っていった
砂浜に到着した私達はそこでウミ君の背中から降り、全員が降りた事を確認するとウミ君はヒレをこちらに向かって振りながら別れを告げ、自分の住処である海へと帰って行った
「では今日から皆さんが泊まる場所へこれからご案内しますね」
都市に入る為の審査を済ませた後、チェルシーさんの案内で都市の中へと進んでいく。都市の中には私達の他にも地上から来たであろう観光客がいたが、殆どはこの海底都市に住んでいる魚人が多く行き交っていた
魚人はここに来るまでに出会ったマーメイドと違って人間と魚が混ざり合ったような姿をしている
そしてマーメイドは海辺でしか生活ができないが、魚人には脚があるので陸の上でも問題なく生活する事が可能なのだ
魚人という一括りにはされているが、魚人の中にも様々な種がいてその数は数十種族にも渡る
それぞれがその魚の特性を持っていて、生活に役立てていたりもするのだ
人通りが多い場所を抜けて奥へと進んでいくとやがて店が連なっている商店街のような場所へとやって来た
そこでは港では見かけない深海ならではの食材やここでしか売られてないような土産品が豊富に並べられていて、先程よりもたくさんの人で賑わっていた
この人混みを掻き分けながら一軒一軒じっくり見ていたらあっという間に時間が過ぎてしまいそうだ。そんな道を暫く歩いていると、フィオナが道の角に構えていた菓子店を見つけ、ショーケースに飾られていたケーキに注目していた
そこの菓子店はただ普通に作っているのではなく、菓子で生き物を表現するという創作菓子店のようだった
「澄んだ海のように透明で綺麗な色をしてますねぇ。中には船に乗っている時に見たクジラさんが入ってて凝ってますねぇ」
「おぉ美味しそうだな!我も食べたいぞ!」
「ボクはこっちのウミ君のような亀のやつにしようかな」
見るだけのつもりがいつの間にか買う流れになってしまい、買ってという熱い眼差しに負けて食後のデザート用として仕方なく人数分購入することにした
それぞれ食べたい物を決めて店の前でお会計をしていると、突然私達の周りが影に飲まれて暗くなった。後ろを振り返ってみるとそこには私の身長の倍はある大柄なタコの姿をした男性がいて、こちらの視線に気がついた男性は近くにいるにも関わらず大声を張り上げて案内役を務めてもらっているチェルシーさんの名を呼んだ
「おうチェルシーじゃないか!今日は見かけないと思ったら陸に客を迎えに行ってたのか。いつもの用意しておくか?」
「どうもヴォールスさん。こちらのお客さんを案内し終わったら寄らせてもらいますね」
「分かった!後ろのお嬢さん方も良ければうちの店に来てくれよな!味にはそこそこ自信があるしサービスしてやるからよ。それじゃあまた後でな!」
そう言うとヴォールスさんはお店で購入したと思われる大型の魚を8本の腕を使って自分のお店へと持って帰って行った。なんだか色々と大きい人だったな・・・
「今のヴォールスさんはこのシーアトラの中でも腕利きの料理人なんですよ。あの8本の腕を使って何種類もの料理を一遍に作っちゃうから提供も早いし味も格別なのでオススメです!」
ここで暮らしているチェルシーさんが言うのだから間違いないのだろう
今日から泊まる宿は宿泊のみで料理等の提供がないらしく、どの道お店を決めなくちゃいけなかったら探す手間が省けたな
ヴォールスさんのお店までの道のりを紙に書いてもらっている最中、シエルは珍しく何かを考え込むような仕草をしていた
「シエルどうかした?」
「私も腕を8本にした方がいいのかと考えていました。そうすればより効率的に家事をすることが可能になりますし」
「いや、それはビジュアル的にまずいからシエルはそのままでいいよ・・・」
「そうですか・・・」
そう言うとシエルはどこか残念そうな顔を一瞬だけしてまたいつもの表情へと戻った。もしかしてあの8本腕に惹かれたのか・・・?
商店街を抜けるとようやく私達が利用する宿泊施設がある場所に辿り着いた。宿も今までのものと一風変わっていて、魚やイソギンチャクの形を模した宿が建ち並んでいた
個性的な宿が数ある中、私達がこれから使う宿は一体どんなのだろうか
色んな形を予想しながらチェルシーさんについていくとやがて一軒の宿の前で足が止まった
「こちらが皆さんが利用する宿になります!」
「ここが私達の宿・・・?」
「おっきいー!」
私達に用意された宿はここに来る途中で目にした巨大な神殿だった。個性の強い宿に気がいって存在に気づかなった
というかここは本当に宿なのか?私の中の神殿は神様が祀られているようなイメージだったからてっきり観光スポットか何かと・・・・しかしチェルシーさんは神殿の中へと迷わず入っていった。多少の戸惑いはあったもののその場で立ち尽くしているわけにもいかないので、私達はチェルシーさんの後を追うことにした
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