113話 海底都市シーアトラ
ユリウスさんとツバキさんが再会を果たした翌日、私達一行は今海底都市シーアトラへと向かう乗り物がやって来る港にいる
しかし朝宿でツバキさん等従業員に見送られてからこの場でずっと待機しているが、予定の時間になってもそれらしき姿が見えないでいる
「おかしいな。教えてもらった時間だともう到着しているはずなんだけど」
「周りにもそれらしいのはいませんしまだ来ていないんですかね?」
「まさか忘れられたとか・・・」
「そんなぁ!海の中に行ってみたいぞ!」
すっぽかされてしまったのでないだろうかと話をしている間も姿が現れることなく1時間が経過しようとし、こちらも痺れが切れそうになったその時、海が突然揺れ始めたと思ったら前方の海面が盛り上がりだした
そして水しぶきと共に山のような何かが目の前に現れ、その上に乗っていた人物がこちらに向かって降りてきた
「皆さんお待たせしましたー!お迎えにあがりました!この度海底都市シーアトラまでの案内役を任されましたチェルシーと言います!」
「どうも初めて。随分遅かったですけど何かあったんですか?」
「遅れてしまってすみません~。ウミ君の寄り道が多くて予定到着時間が大幅にズレてしまいました」
「ウミ君って・・・もしかしてこれが海底都市に向かう乗り物ってことかい?」
チェルシーさんが言うウミ君とは目の前にいる巨大な亀の事を指しているようだ
どうやらこのウミ君に乗って海底都市へと向かうらしい
甲羅の上の方を見るとそこには座席が取り付けられている。あそこが私達の座る場所なのだろう
「あの、これって大丈夫なんですか?海の中に入ったら濡れちゃいますし何より呼吸とか続かないと思うんですが・・・」
「ご安心下さい。海中を進む際は特殊な膜をコーティングします。水圧にも耐えられて呼吸が出来るようになっていますので問題ありません!。さっどうぞ!」
自信満々に促してくるチェルシーさんは私達の元に亀へと繋がる橋を用意し、座席へと案内された
「皆さん全員乗りましたねぇ。それじゃ出発進行~!」
チェルシーさんの声とともに座席全体を覆う程の巨大な膜が発生し、ウミ君がゆっくりと海の中へ沈んでいく
始めは少し警戒しいざとなったら魔法でどうにかしようと思ったが、チェルシーさんの言う通り膜の中は呼吸が可能となっており服も濡れることなく海中を移動できていた
今日は風が穏やかなこともあって海の中は濁りがなくとても澄んでいて、多種類の魚が周囲を回遊している様は私達を歓迎している様にも見えた。最初は亀に移動を任せるのはどうなのかと思ったが、ゆったりと海流に逆らうことなく泳いでくれているお陰で大きな揺れが起きることなく快適に過ごす事ができている
暫く海中散策を楽しんだ後、本格的に海底都市へと向かう旅始まり少しずつ海の底へと沈んでいった。今朝は出発が早かったのでツバキさん達が用意してくれたお弁当を海の景色を眺めながら頂いた
ウミ君に乗り海中を移動する事数十分が経過しようとしたところで、周囲が段々と暗くなってきた。最初は陽の光のお陰で明るて綺麗な光景だったが、光が届かない場所まで来ると打って変わって不気味さを感じる
「真っ暗で何も見えなくなっちゃったねぇ」
「なんだか怖くなってきたぞ・・・」
「大丈夫ですよー!もうすぐ私達の仲間がやって来ますので。あっちょうど来たみたいですね!」
チェルシーさんが向ける視線の先に目を向けると、暗い海の中で謎の発光体を発見した。それは1つまた1つと増えていき、やがてその光は1本の線のようになっていった
光の元が眼前まで来て確認してみると、その正体は虹色クラゲという七色の光を発光させる海の生物だった
この虹色クラゲの群れによる発光はどうやら海底都市へ続く道のりを照らしてくれる案内役を担っているようで、そのお陰で周囲が見渡せる程明るくなり、様々な色の光がイルミネーションの様に輝く光景を見て不安がっていたラミアスの気持ちも落ち着きを取り戻した
それから更に数時間、私達はクラゲに誘導されながら随分と海深くまでやってきた。ここまでの深さになってくると生態系も変わるようで、普段見かけないような魚をよく見かけるようになった
すると先程まで道標となってくれていた虹色クラゲの数が減っていき、それと比例して徐々に辺りが明るくなってきていた
周りには強烈な光を放つ石がそこらじゅうに落ちていた。私達はもう海の底までやって来たみたいだ
「ここまで来たら海底都市まではもうすぐですよー」
「ん?・・・あっ、見て下さい!あれってもしかしてマーメイドじゃないですか?私生で見るの初めてです!」
フィオナが興奮気味に指差す方向には下半身が魚、上半身が女性のマーメイドという種族が海を優雅に泳いでいた
マーメイドは海の中でしか生活が出来ない為、滅多にお目にかかれない種族。その美貌は息を飲む美しさで楽しそうに海を泳いでいる姿は一枚の名画の様であった
マーメイドがこちらに気づくと笑顔で手を振ってきてこちらに近づいてきた
「地上の皆さんいらっしゃい。海底都市シーアトラをゆっくりと満喫していってね。私はお仕事だから失礼するわね」
こちらに簡単な挨拶だけ済ませるとマーメイドは一瞬で遠くの方へと姿を消した。美貌だけでなく声も透き通るような耳に心地いい声で危うく心が奪われそうになるところだった
それは私だけでなく皆も同様で、特にフィオナは完全にメロメロになっていた
女性でこれなら男性だったら皆イチコロだろう
「とても綺麗な方でしたねぇ・・・そういえば仕事と言ってましたが何をされてるんでしょう」
「彼女達はこの辺りを巡回して異常がないか警備をしてくれているんです。彼女達の泳ぐ速度はこの海の中で1番ですから何かあったらすぐ知らせてくれるんですよ」
確かにあの速度ならどんなに遠くで異常が起きたとしてもひとっ飛びで知らせてくれそうだ
私も魔法を使えばあれくらいの速度は出せるだろうか。今度試しにやってみよう
マーメイドと出会ってから更に小一時間程経過したところでチェルシーが声をあげる
岩と岩の間から見える視線の先には巨大な神殿のようなのが見えてきた
「見えてきました!あれが海底都市シーアトラです!」
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