112話 再会
「ここがエレナさん達が暮らしている国の王都・・・こんな綺麗な場所にユリ姉さんはいるかもしれないんですね」
「まだユリさんとは断定できませんけどね。こっちです」
転移門を潜って王都へとやってきた私とツバキさんはユリウスさんがいる王城へと足を向けた
初めて見る景色にツバキさんは時折足を緩めそうになるが、ユリウスさんに早く会いたいという気持ちが勝り前へと進む
街中は深夜近くという事もあり人通りは少ないが、酒場はまだ明るく賑わっていて夜はこれからといった感じだ
王城へと続く最短の道を進んでいくとやがて門が見えてくる
そこには門番が2人立っていて、その2人は私達が近づいて来るのを確認すると立ち止まるよう促し、ここに来た目的を問いただしてきた
「こんな夜中に何用だ。ここから城内に続く道は通す事はできないぞ」
「夜分遅くにすみません。セフィリア王女の護衛を務めるユリウスという方との面会をお願いしたいのですが・・・エレナと伝えれば分かってもらえるかと思います」
「エレナ・・・何処かで聞いた名だな。ん?その剣は・・・」
門番が私の腰に身に付けている聖剣に視線を向けると2人でコソコソと話し始め、1人が城内へと続く道へと消えていった
どうやらこちらの要望が通ったようだ。もう1人の門番に連れられ私達は門番達が休憩や仮眠等に使う待機所へとやってきた
「こちらで暫くお待ち下さい。許可を頂く為お時間を頂きます」
「ありがとうございます」
「うぅ、なんだか緊張してきました。勢いでここまで来てしまいましたが、もし違う人だったらどうしましょう。仮にユリ姉さんだったとしてももう10年以上も前の話なので私の事忘れらててもおかしくないですよね」
会わせるとは言ったものの私自身もユリウスさんとは数回しか会った事がないので、そういった昔の話は聞いた事がないからなんとも言えない。雇っているセフィリアなら何か知っているんだろうな
不安な想いを抱えつつユリウスさんがやって来るのを待つこと数十分、先程の門番が戻ってきた
そしてその後ろにはユリウスさんの姿があった
するとツバキさんはここまできて怖気づいたのか、私の後ろに身を隠して様子を窺うような形でユリウスさんを見つめていた
私達の元まで案内してくれた門番が一礼して去っていくと、先にユリウスさんが声をかけてきた
「すみません着替えをしていたので遅れてしまいました。エレナさんからこちらにやって来るとは珍しいですね。この時間ですと流石に城内へご案内する事ができませんのでこちらで失礼します」
「とんでもない。夜遅くにも関わらずご足労頂きありがとうございます」
「セフィリア様もちょうど眠りについたところでしたので構いませんよ。タイミングが良くて助かりました。理由を知ったら絶対ついてこようとしてたでしょうから」
「助かります・・・」
ここにセフィリアが乱入してきたら話が進まなくなりそうだからな。ある意味この時間帯に来て正解だったのかも
「それで話というのはなんでしょうか?」
「本題の前に質問なんですが、ユリウスさんのご出身を聞いても?」
「出身ですか?私はオストシア大陸の出で東にある小さな村の出身ですけど・・・もしかして後ろにいる方と何か関係があるんですか?」
「はい、今日お呼びしたのはユリウスさんにお会いしたいという方を連れてきたんです」
不安がるツバキさんの為に代わりに聞いてみたが、これはもう確定だろう
ユリウスさんが私の後ろに視線を向けると、今まで私の背中にずっと隠れていたツバキさんがひょっこりと顔を出し、恐る恐る口を開く
「あの、私の事覚えてますか?」
「・・・?失礼ですが何処かでお会いした事ありましたか?」
「小さい頃よくおままごとをしてもらったりお花の冠の作り方を教えてもらったツバキです。ユリ姉さん」
小さい頃の思い出と共に名を名乗ると、ユリウスさんは目の前の人物が誰なのか分かったようで表情は変わらずとも目を見開いて驚いた様子を見せていた
「ツバキ・・・あのツバキなのですか?」
「やっぱり・・・本当にユリ姉さんだった!」
ユリウスさんが自分の知っているユリだということが判明すると、ツバキさんはユリウスさんの元へと駆け寄って抱きついた
それから2人はこれまでの経緯と過去の話に花を咲かせた
ユリウスさんはなんと村を出る為に周りの目を盗んでは船造りに励み、村を出る当日はその船で海に出た
通常であれば私達の様に客船を利用するのが一般的だが、その分費用が嵩む。当時出来るだけ負担を減らしたかったユリウスさんは自力でこのエイリアス大陸を目指す事を決めたのだ
客船で10日はかかるのだから自作の船では大陸に移るだけでも奇跡に近いものだが、ユリウスさんはそれをやってのけた
その後大陸各地を転々と旅し、ある時賞金が出る剣術大会でお金稼ぎをしていたところをたまたま公務で王都を出ていたセフィリアの目に留まり、護衛役として雇われることとなったという
名前は周りに馴染ませる為にその時に変えたそうだ
ユリウスさんも久々の同郷と話すことができたからか、昔の話を楽しそうに語っていた
しかしそんな時間はあっという間に時間は過ぎていき、お別れの時間がやってきた
「それではそろそろ戻らなくてはいけないのでこの辺りで失礼しますね。ツバキ、近いうちに手紙を送ります。エレナさんもわざわざありがとうございました」
「絶対だよユリ姉さん!私も手紙送るから!」
私達はユリウスさんが見えなくなるまで見送り、その後王都を出て皆が待っている港町へと戻った
ツバキさんには深々とお辞儀しながらお礼を言われた
お節介かなとも思ったがいい結果となって良かった
明日はいよいよ海底都市に向かう日だ。さっさと寝て明日に備えるとしよう
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※少しだけ加筆修正しました




