107話 オストシア大陸到着
クラーケンに襲われるというトラブルが発生したものの、なんとか乗り切ることができたその後は特に何も起こることなくオストシア大陸の港に到着した
あの一件の後ラミアスにどうしてあんな事をしたのかと聞いてみたが、「よく分からないけどあぁすれば言うことを聞くと思った」といった曖昧な回答で自分でもよく分かっていないといった様子だった
もしかしてあれはラミアスに隠されていた能力だったのだろうか。クラーケンに言うことを聞かせる程の能力だとしたら相当なものだが、魔王にそんな能力はなかった
とするとやはり母親の方が持っていた能力となるが、あれだけの魔物を従えるような力があったとしたら昔あった魔物の軍勢もラミアスの母親が引き起こしたものだったとしても不思議ではない
ラミアス自身がまだその能力を理解していないのならちゃんと見守ってあげなくては
最初の頃ならともかく今のラミアスなら悪い事に使ったりする様な真似はしないだろう
とりあえずその話は後々解決していくとして、今はこの旅行を楽しまなくては
船を降りて港町へとやってきた私達はここで乗り物を乗り換える
その乗り物が到着するまでの数日間ここに滞在することになるので、地図を見ながら予約が取れている宿へと向かった
「ふぅ・・・やっと船から降りれましたぁ」
「港町だけあって随分と賑わっていますね」
ここには商いの為に様々な場所から船がやってくるようで、レジティアと比べて人族だけでなく亜人も多く行き交っている
家の作りも私達の所と違って柱が主流となって作られていて、どこか温かみを感じる
「あっ!ご主人様!あそこに何やら行列ができていますよ!」
フレイヤが指差す方には出店があり、たくさんの人で賑わっていた
何のお店かと覗いてみると、棒に雲のように白いのを丸くしたものが売られていた
買っていった人達の様子を見るにあの食べ物は甘いお菓子のようだ
容器に砂糖の粒を入れて熱して溶かしたものを回転させると、容器に開けてある小さな穴から溶けた砂糖の粒が糸のようになって出てくる仕組みになっていて、それを棒で上手く絡め取るとあの様に雲みたいなお菓子が出来上がるということか
白の他にも青、黄、桃色など目でも楽しめるよう工夫されている。初めて見るお菓子に興味を持った私達は列に並んでそれを購入し、分け合って食べてみた
「わっ!口の中に入れた瞬間に溶けてなくなっちゃいましたよ!」
「ふわふわで甘くて美味しいなぁ♪」
船では殆ど甘味にありつく事が出来なかったから皆美味しそうに雲を口に入れていた
雲を食べながら港町を軽く散策し、私達は地図に示されている宿へと到着した
扉を開けると従業員らしき人がすぐに駆け寄ってきて出迎えてくれたので、旅行券を見せて案内をしてもらった
部屋に入ると床が他の所と違って何やら草のようなものを編んで作られていて、なんだか落ち着くような新鮮な匂いが部屋を包んでいる
外には露天風呂があり、いつでも入れるよう湯が張られていたので荷物を置いて早速入る事にした
船では軽く体を洗う程度しかできず我慢していたので、久しぶりのお風呂は格別なものだった
乳白色で少しとろみのある湯は肌をすべすべにしてくれてなんだかスイムのスライム風呂を思い出すな
「いやぁサッパリしましたぁ♪。お部屋に用意されていたこの浴衣というのも可愛いですねぇ」
着替えは各々用意していたが、宿にも事前に用意されていた可愛らしい浴衣とかいう服が置かれていて、従業員の人も同じようなのを着ていたので郷に入っては郷に従え、見よう見まねで着てみることにした
確かに可愛いのは可愛いしゆったりと着れていいものだが、下着の上にこの薄着1枚だけというのはなんとも落ち着かないな
露天風呂を堪能して部屋で夜風に当たり、火照った体を冷ましてながら一段落ついていると従業員の方が襖を叩いて入ってきた
「失礼します。お食事の準備が出来ましたので運びにあがりました」
夕食の準備が整ったという事で従業員が運んできてくれた料理が私達の前に次々並べられていく
その中の1つに明らかに火が通されていない、生の魚が切り身となっただけの物が置かれていて目を疑った
自分で焼いたりするタイプの料理なのかと探し回るがそういった道具は見つからないので、従業員に尋ねてみた
「えっとすみません、これって生ですよね?どうやって食べるものなんですか?」
「これはそのまま食べるものなんですよ。私達の方では新鮮な魚はお刺身にして頂くんです。美味しいので騙されたと思ってそちらの醤油とわさびをつけてお召し上がりください」
なんと・・・魚をそのまま生で食べる文化があるなんて
お腹とか壊したりしないだろうかと思いながらも従業員の人が満面の笑みで勧めてくるのもあり覚悟を決め、隣に置いてあった黒いソースと緑の山になったわさびというものをつけ魚につけ、恐る恐る口の中へと入れた
新鮮な生魚は私が想像していたような生臭さは全くなく、わさびの辛さがツンと鼻を刺激してきたがそれがまた癖となる
塩辛さのある醤油と共に良質な脂が口の中に広がってとても美味しかった
港町で獲れた新鮮な魚だからこその美味さということか。一緒に出されたお酒ともよく合う
その他にも海の幸を小麦の粉を水で溶きくっつけて揚げた天麩羅なるものや、先程の醤油と砂糖、酒等を使って作られた煮付け等私達の国では見かけない料理を堪能させてもらった
お腹が膨れると眠気が襲ってきた。長旅の疲れもあったのでその日は早めに就寝し、明日改めて港町を見て回ることにした
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