105話 船旅に現れた怪物
海底都市シーアトラへと向かう為、私達はレジティアから少し移動した場所にある運河へと向かった
その運河は海まで繋がっているのでそこから客船を利用して海へと出て、一度オストシア大陸という別大陸へと渡る
私達がいるエイリアス大陸の西にある大陸というのは知識としては頭に入っていたが、私自身も別の大陸に移るのは初めての事なのでどういう場所なのか非常に気になるところ
船旅を楽しみつつオストシア大陸の港に到着した後は乗り物を変えて海底都市へと向かう手筈になっている。それがどういった乗り物かは旅行券と一緒に入っていたパンフレットには記載されていなかったが、それに乗るには準備が必要らしく数日程港に滞在しなくていけないそうだ
せっかくだからその数日の間を利用して港の観光をするとしよう。港にも観光客向けに色々とお店があるようだし丁度いいだろう
オストシア大陸の港に到着するまで船で10日間。そこから海底都市までは半日程でいける距離らしい
準備期間も含めると大体2週間程度といったところか。久々の長旅になりそうだ
船が停泊している運河に到着し、乗組員に抽選で手に入れた券を見せると当選者用に用意されていた部屋へと案内してくれた
基本船旅は相部屋で過ごすというのがお決まりだが、私達が案内された部屋は個室。豪華という程ではないが他のお客に気を遣うことなく船旅を楽しむことができるのは大きな利点だ
流石にベッドは人数分とはいかなかったが、大きめの作りで3台もあったので1台に2人で寝れば問題ない
部屋に荷物を置いて暫く寛いでいると、船が汽笛を鳴らして動き始めたので甲板へ行ってみることにした
「ん~!風が気持ちいいね」
絶好の船旅日和だ。ここから海へ出る頃には陽が沈み始めていい感じに境界線に沈んでいく陽を見ることが出来るだろう
心地よい風に当たって気分がいい私とは正反対に、隣には甲板で辛そうにしゃがみ込むフィオナがいた。どうやら船の揺れで酔ってしまったそうだ
「ゔっ!ぎぼちわるい・・・・」
「大丈夫?まだ出港したばかりだしまだそんな揺れてないのに」
「初めての船で慣れなくて・・・・」
これから海に出たらもっと揺れることがあるだろうから今から船酔いをしているようじゃ先が思いやられるな
吐かれたらこちらも困ってしまうし本当にやばそうだったら早めに船酔いに効く魔法でもかけてあげよう
その後船は順調に進んでいって予定通り夕方には海に出ることができ、本格的な航海が始まった
夕飯は夜の海を眺めながらのビュッフェ形式で各々好きなように食事をした
食事をしていると珍しい光景にもお目にかかれた。ユーフォリアホエールという白い体をした海の生物で、普段は深い場所に生息していて中々姿を現さないのだが、出会うと幸福を呼ぶと船乗りから言われている
船と同じ位の大きさで一見危険そうに見えるが、非常に温厚な性格でこちらに害を与えるような行為は決してしてこない
初日からいいものを見れてこの先の船旅もきっと心配する事はないだろう
それから数日の間何事もなく航海を楽しむことが出来たが、ある日の夕暮れ時に私達が目指す航路の先の雲行きが怪しくなっていくのを確認した
甲板に出てその様子を見ていると、乗組員の1人が声をかけてきた
「これから天候が荒れて波が高くなりそうなのでお部屋にお戻り下さい」
「分かりました」
指示に従い私達は部屋へと戻って少し早かったが夕食の時間にし、早々にベッドに入って荒波をやり過ごそうと思った
先程まで快晴で穏やかな波だった海は段々と荒れていき、空も厚い雲で暗くなり始めて波が雨が降り出した
徐々に雨脚が強くなっていき、視界も悪くなり外の様子が見れない状態が続く。いつこの雨雲を抜けるだろうとぼんやりとしながらベッドで寛いでいると、船内が何やら慌ただしくなっていることに気づいた
何事かと部屋を出てみると乗組員達が行ったり来たりとひっきりなしに動いていて、只事でないと思い通りすがった乗組員に話を伺った
「あの、すみません。何かあったんですか?」
「それが分からないんです。順調に航行していたのですが突然船が進まなくなってしまって。この辺りで座礁するような場所はないんですが・・・・今原因を確認しているところですのでお部屋で待機していて下さい」
そう言って自分の持ち場へと駆け出す乗組員を見送ったが何やら胸騒ぎがしたので、待機するよう言われたが私も甲板に出て様子を確認しに走った
外は雨も強く月明かりもないので闇に満ちていて視界が悪い状態が続いている
航路を確認する為に魔法で数箇所は照らされているが光が弱い。これでは全体の状況がよく確認できないので私が周囲一帯を視認出来るよう光の魔法で明かりを灯した
これで船周辺の異常にいち早く気づけることができる
船が止まった原因を探ろうと甲板の端の方まで行って状態を見る
乗組員と共に一通り見て回って見たが特に破損した場所もなければ座礁している様子もない。あと考えられるのは故障か・・・
「うわぁ!」
乗組員の1人が突然叫んだと思ったら甲板で尻もちをついて怯えていた
一体何を目にしたのかと近づいていき、乗組員が指差す海を覗き込むと大きな触手のようなものが海面から姿を現していた
それを皮切りに他の場所から新たに触手が現れる。しかも1本や2本だけでなく、無数の触手が船を囲むように次々と現れ始めた
それを見た1人の乗組員が声を上げた
「ク、クラーケンだ!クラーケンが現れたぞ!」
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