104話 抽選
「どうぞ、こちら抽選券でーす」
買い物をしているとお店の人から1枚の券をお釣りと一緒に受け取った
レジティアでは今抽選会なる催しが開催されており、お店で一定の金額以上を購入すると抽選に必要な券が1枚入手でき、それを3枚集めると1回抽選を行えるらしい
景品の中には豪華な物まで用意されているようで、皆豪華景品を当てようと普段より多く買い物をしている
かくいう私達も今日まで全員が参加出来るようコツコツと買い物をしては券を集め、今日貰った券の分でようやく全員1回参加できるだけの券が集まった
抽選会が行われている広場へと行き、どの景品が残っているの確認する。開催から数日が経過しているのでめぼしい景品は既に幾つか無くなっていたが、1等の景品はまだ残っていた
1等景品は旅行券。最近は何処かに出掛けたりとかもなかったので当てたいところだが、こればっかりは運に身を任せる他ない
「じゃあまずは私からいきますね!」
1番手を名乗り出たのはフィオナ。箱を回して中に入っている玉を出し、その出た玉の色によって貰える景品が決まる
念を込めながらフィオナが出したのは白い玉。白い玉は参加賞のハンカチだ
これはこれで実用性はあるがやはりやるからには大物を狙っていきたい
しかし2番目にシエル、3番目に私が挑戦してみるも結果はフィオナと同じで上位の景品にすら掠りもしなかった
そして4人目、フレイヤの順番が回ってきた
「おい、これは本当に1等が入っているんだろうな」
「失礼ですね。ちゃんと入っていますよ」
「ではご主人様。私が1等を出してみせましょう!ぬおー!」
そう言って意気込んだフレイヤは取っ手を持つなり凄まじい速度で箱を回し始めた
早く回せば1等が出るわけではないが、一心不乱で回し続けるフレイヤに今更言ったところで無意味なので大人しく見守っておく
高速で回しているせいか肝心の玉が中々出てこず、ようやく
出てきたと思ったら弾丸のような勢いで玉が発射され、天幕の中を跳弾した玉は最終的にフレイヤのおでこに直撃して戻ってきた
「はい、白玉ですねぇ。こちら参加賞です。あと危ないので回しすぎないようにお願いしますね」
「あぅ・・・」
あれだけやっておいて結局白玉・・・残るはセレーネとラミアスの2人か。今のところ全員参加賞で当たる気配が全くしないが果たして2人はどうだろう
「仕方ない。ここはボクに任せておきなよ」
自信満々なセレーネは私に向かって小さく笑みを浮かべ、抽選を行いに前へ出た
嫌な予感がしつつも箱を回す様子を見守っていると、セレーネの気配が変わっていくのを感じた
なんとセレーネは皆にバレないようこっそりと女神の力を使い1等を無理矢理出そうとしているようだ。この女神、卑怯である
「これがボクの力だー!」
気迫溢れるその様子は本当に1等が出るのでは思う程で、自然と周りの期待が高まっていた
しかし現実はそんな甘くはなく、セレーネが出した玉は緑。参加賞の1つ上のなんだかよく分からない赤ちゃん向けのおもちゃを引き当てた
「そ、そんな・・・」
セレーネの力は発揮されることなく、ガックリと膝をついて項垂れる。ズルしてまで1等を当てようとした罰だな
けどまぁおもちゃだったらヒナタにプレゼントすればいいし役には立つな
「最後は我だな。景品とかよりこれを回しみたかったんだ」
最後の頼みはラミアス。1等はほぼ諦めている
何でもいいから上位の景品が出ることを祈りながらゆっくりと回転される箱を見つめる
数回程回った後に玉がゆっくりと顔を出し、キラリと輝く
落ちた玉を皆で見つめるとそれは金色に輝く玉だった。その瞬間係の人が広場一帯に響くような大きさでベルを鳴らしだした
「お、大当たり~!おめでとうございます!1等の旅行券が出ました~!」
係の人の声が木霊し、後ろにいた他の抽選に参加しようとしていた人達が肩を落とす
最後の最後でラミアスが大当たりを引き当ててくれたことでこちらは大盛り上がり
きっと欲を出して当てにいった私達より純粋な気持ちで回したラミアスの元にやってきてくれたんだろうな
「やったねシエル、大当たりだよ!」
「なんだ1番いいのがあたったのか!?やたー!」
「皆で旅行ですよー!楽しみですねぇ♪それで旅先は何処って書いてありますかラミアスちゃん」
「えっと、海底都市シーアトラって書いてあるぞ」
海底都市?聞いた事がないな。海の底に人が住めるような場所があるとでもいうのだろうか
でもこうして景品として出される位なんだからきっといい所なんだろう。初めて行く場所は胸が高鳴るな
こうしてシエルのお陰で皆で旅行に行くことが決まり私達は各々準備を始めていった
出発は3日後。それまでに暫く休むことをリヴィアさんに連絡し、実家の方には暫く出掛ける為ヒナタのお守りが出来なくなることを伝えた
実家には以前リザさんから貰ったアイテムを似せて作った連絡可能なアイテムを渡しておいた
そのアイテムについているボタンを押せば私に通知を知らせるアラームが鳴る仕組みになっているので、いざという時に駆けつけることができる
そうして旅行の準備を着々と済ましていき、いよいよ旅行当日を迎えた
「さぁ行こうか。海底都市シーアトラへ」
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