103話 女神の夜襲
突如として現れた聖剣に宿りし女神セレーネ
力が戻り人の姿になることができるようになったセレーネは今まで見てきた人間の世界を直に楽しみたいということで家に滞在することとなった
翌朝起きてきた皆にセレーネを紹介する事になったのだが、昨夜の出来事をありのまま話しても信じてもらえるとは思わなかったので、私の遠い親戚という設定で半ば無理矢理説得してもらった
「というわけでお世話になるよ。皆これからよろしくね♪」
「気さくな方ですねぇ。よろしくお願いします」
「セレーネ様。早速朝食を召し上がりますか?」
「おぉ!是非頼むよ!」
聖剣の中で散々見てきた料理を初めて食べるセレーネはシエルが出した朝食を慣れないスプーンでゆっくりと口に運んだ
すると一口食べた途端目から大粒の涙を流し始め、それからもの凄い勢いで料理を流し込んでいった
余程気に入ったのか幾度もおかわりを繰り返し、見ているこちらがお腹一杯になる位の量を平らげた
神様の世界にはやはり食事という概念ないんだろうか。初めて味というものを知ったのなら感動するのも無理はない
食事を堪能した後は街の様子を見に出かけた。ちょうどセレーネに合う服がなかったのでお店に入って好きなのを選ばせた
意図してそういった服を選んだのか分からないが、セレーネが持ってきたのは下着が見えそうな程短いスカートに始まり際どい服装のものばかり
これで街中を歩いたら露出狂と思われてしまうので、お店の人に適当に数着見繕ってもらい店を出た
休憩中に露店のお菓子に興味を持ったようなので買い与えると初めて食べる甘い食べ物にセレーネは無我夢中になり、あまりに美味しそうに食べるものだから私の分も分けてあげた
「お気に召しましたか女神様?」
「いやぁ、散々見てきたつもりだったけどやっぱり自分で体験するのは全然違うねぇ♪特に食べ物がこんなに美味しいとは!もうずっとここで暮らそうかなぁ」
お菓子のカスを口の周りにつけながらそう話すセレーネからは最早女神の欠片も感じられなかった
昨日から見てきたが女神だっていうのにルキナス様にあった神々しさや気品といったものがこのセレーネからは全く感じられない
長い事聖剣と同化していたせいでそういうのが何処かにいってしまったんだろうか
いい意味で言えば親しみやすそうではあるが
「なんていうかセレーネってルキナス様と随分雰囲気が違うんだね。女神様ってもっと自然と謙っちゃうようなオーラを放ってると思ってたから」
「失敬だね。ボクだってやろうと思えばルキちゃんの様にできるさ」
「ルキちゃん・・・・今更だけどセレーネの事も女神様として扱った方がいいのかな?」
「本当に今更だね。堅苦しいのは苦手だしボクは君達のお世話になる身だからね。気を遣わず他の者と同じように接してもらって構わないよ」
一緒に暮らすのならそっちの方が気が楽で助かる
せっかく家にいても気が休まらないんじゃ帰る意味が無いからな
服を購入して家路についた後はセレーネに部屋を与えた。以前スイムが使っていた部屋で空き部屋だったが、いつでも使えるようシエルが常に綺麗に整えてくれていたので買ってきた服を収納するだけで済んだ
それからセレーネは人間の世界で色々な事を体験し、あっという間に人間の生活に順応していった
流石女神だけあって能力は高いので教えれば教えるだけどんどん吸収していった
その中でも特に食べる事が好きで料理への関心が強く、最近ではシエルに料理を教わりながら自分で作ってみたりして私達に振舞ってくれたりもしている
そんな生活が数週間程続いたとある日の深夜、いつものようにベッドで寝ていると下半身に何かが乗るような感覚で目が覚め、暗い部屋を寝ぼけ眼を凝らすとそこには別の部屋で寝ているはずのセレーネが上に跨っていた。しかも何故かまた全裸
「何やってるのセレーネ。まだ夜は冷えるんだから服着なよ」
「どうせ服はすぐ脱ぐんだから必要ないよ」
言ってる事の意味が分からずどういう事か問おうとすると、彼女はおもむろに私の寝間着のボタンに手をかけて1つずつ外し始めた
彼女が何をしようとしているのか察しがついた私は慌てて止めようとするが、抑える力が異様に強い。伊達に女神ではないということか!
「ちょっと!どういうつもり!?」
「いやぁ、この体になって色んな体験をしてきたけどまだやってない事があったと思ってね」
「それは私じゃなきゃダメなんですかね・・・・」
「ボクだって誰でもいい訳じゃないよ。それに君だってそこまで嫌って程じゃないだろ?夜な夜な1人で虚しく慰めるより2人でした方がきっと楽しいよ」
そんなところまで見られていたのか・・・・死ぬほど恥ずかしいけど今はそれどころではない。ケイティの時と違って今度は本当に貞操の危機だ
早くどうにか脱出しないと。こんなところ他の誰かに見られでもしたら・・・・
「んぅ~・・・おしっこ・・・ん、間違えた?」
・・・・よりにもよってこのタイミングで一番見せたくない相手がきたー!
こんな現場をラミアスに見せるわけにはいかない
私は気づかれる前に上に跨っているセレーネを渾身の力を込めて思い切り外へと投げ飛ばした
「こらー!女神を投げ飛ばすなんてバチあたりめー!」
「人の貞操を奪おうとする変態女神なんて消えてしまえ」
全く油断も隙もあったもんじゃないな
目一杯投げ飛ばしたから何処まで行ったか分からないけど衛兵に捕まる前に拾って来なくては
「今何か飛んでいかなかったか?」
「気の所為だよ~。それよりトイレに行きたかったんでしょ?ついて行ってあげるから行こう」
ラミアスが寝ぼけていて本当に良かった
もし今度襲ってきたその時は聖剣から二度と出てこれないよう封印してやろう
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