102話 一年の変化
レジティアにやって来て今日で一年が経過した
去年の今頃は1人でこの街にやって来て冒険者の試験を受けに行ったっけな
思えばあの時行ったギルドマスターとの模擬試合から私の生活は徐々に変わり始めていったんだよな
最近は顔を出していないが、この辺りに生息しているレベルの魔物や害獣なら他の冒険者でもどうととでもなるし近隣の町や村も平穏そのもので依頼事態が少ない状態だ
日中試しにギルドの様子を見に行ってみたが人は少なかった。依頼が貼り出される掲示板の前も普段は人で溢れかえっているが今日は数人程しかいないようだ
そういえばフィオナを初めて見たのもここだったな。採集をしている私についてきて魔法が使えずに試験に落ちたところを助けてあげたところからなし崩し的に一緒に生活する事になったんだっけ
更に前世からの仲間でもあったフレイヤとの再開を果たして今の家を建てることになった
そこからシスカ、セフィリアやリザさんにスイム。その他にも色んな出会いもあって家にはシエルやラミアスも加わったんだよな
新年には可愛い妹も産まれて正に濃厚な出来事の連続だった
夜を照らす月を眺め、この1年の思い出に耽けりながら1人酒を楽しむ
月明かりが部屋を照らし、壁に立て掛けておいた聖剣が光り目に留まった
「そういえばこの剣とも長い付き合いだなぁ」
思えば前世の時間を入れたらこの聖剣との付き合いが一番長いかもしれない
この剣を手にしたのは14歳の頃で、それから10年以上共にした戦友のような腐れ縁とも言えるような存在
王都で私の元にやって来た時は驚いたが、なんだかんだしっくりくるものがある
まぁ今は父の剣を使うことが殆どでいざという時以外抜くことはないが
そんな事を考えながら聖剣を見つめていると、月明かりに照らされていた聖剣が突然光りだした
「な、なんだ!?」
月明かりで照らされていた部屋が昼間のように明るくなり、暫くして光が消えてゆっくりと目を開けると私の前には全裸の美少女が立っていた
少女は自分の体を確認するように手を開いたり握ったりを繰り返し、一通り確かめ終わると少女は口を開いた
「キタキター!セレーネちゃん。完!全!復!活!なーっはっはっは!」
恥部を隠そうともせず堂々と仁王立ちの状態で高らかに笑う少女。私より背は低いが色々育っているので恐らくは成人しているだろう
突然現れた少女に唖然として見ていると今度は自分の胸を触り始める
「んー♪久しぶりの生身の体はやっぱり最高だねぇ!」
「あ、あの君は誰?一体どこから入ってきたの・・・・」
「えー!?ちょっとちょっと~ボクの事忘れたの?貴女とずっと一緒に居たじゃない。ゆ・う・しゃ・さ・ま♪」
そう言いながら少女は自分と聖剣を交互に指差しながら自分が何者か明かしてきた
最初どういう意味だったのか理解できなかったが、少女から放たれている気配を察知して少女と同じ行動を取りながら確認した
「つまり・・・君は聖剣・・・ってこと?」
「せいか~い!もう遅すぎるよぉ!それとボクにはセレーネっていう名前があるんだから君呼ばわりはやめて欲しいな!」
「あっごめん。えと、セレーネ。詳しく話を聞かせてもらいたいんだけど」
「おけ~♪」
聖剣から突如現れた少女、セレーネから色々と説明をしてもらった
聞いていくうちに分かった事はこのセレーネの正体がなんと女神だったということ。元々聖剣は始め何の変哲もないただの剣だったのだが、魔王が誕生したことで人間側が対抗出来るようにと選ばれたセレーネが剣と同化して聖剣となったのだ
元の姿に戻ることが出来たのは私から出ている女神の加護の力とやらのお陰で、私から女神の加護の力を少しずつ分けて貰っていたそうだ
聖剣を使う時にもその加護の力が必要となるので、いざという時の事を考えて少しずつ貰っていたから本来ならもっと時間がかかる予定だったが、先日使用した神聖魔法のお陰で元に戻る分が溜まったという
軽いノリでセレーネからそう説明を受けた
「でもまだ信じられないな・・・・長年使ってきたあの聖剣がまさかこんな女の子だったなんて」
「あっ、まだ疑ってる感じ~?ボク知ってるんだからね。エイクが初めて戦場に出た時、敵の大軍にビビってお漏らししたの」
「ちょっ!?なんでそんな事知ってるの!」
「剣と同化しててもそういうのは分かるんだよ。他にもあんな事やこんな事まで知ってるんだから」
それから聞いてもいないのに私しか知り得ないはずの過去の恥ずかしい出来事を順位形式でペラペラと喋りだし、私が信じると言うまでその話は延々と続けられた
間違いない。この少女は私がずっと振るっていたあの聖剣だ
「それで?これからどうするの?というかまたあの剣を聖剣に戻す事は出来るんだよね?」
「ボクがまた同化すれば戻るよ~。前より力がついたみたいだし出入りも自由にできちゃう!でも、うーん・・・せっかく元の姿に戻ったことだし暫くはこの姿でいさせてもらうよ!」
元の姿に戻れたのなら神様達がいる場所に戻れば?というよう事を柔らかい表現で提案してみたが、つまらないからやだ!の一言で却下された
聖剣の中で外界の様子を覗いていたら俗世に興味が湧いたそうだ
長い間力を貸してくれていたという恩義はあるので暫くは面倒を見ることにした。皆にはどう説明しようか
いずれにせよ今第一にしなくてはならないことがある。それは・・・
「とりあえず服を着ようか・・・・」
読んでいただきありがとうございました!
「よかった」「続きが気になる」など思っていただけたら幸いです
少しでも気に入ってくれた方ブクマ、評価、感想等々頂けると大変励みになります
次話投稿時間はTwitterの方で告知させて頂きます。よろしくお願いします!




