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1376_後戻りしたほうが早いと理解しても後戻りを選ぶことは心理的に難しい #決断

「スイスへの旅行中に第一次世界大戦が勃発したフランスの作家ロマン・ロランは『人生は往復切符を発行してはいません。ひとたび出立したら再び帰ってきません』と言ってます。猪突猛進、まっすぐ進むのみ」


「やっほー、知識は人生を楽しませてくれるもの。世界一の美女サクラです! 今回は『後戻りしたほうが早いと理解しても後戻りを選ぶことは心理的に難しい』です。よろしくね」


「読者様は、後戻りできますか?」


「たとえば、目的地に向かっている時、ルート選択をミスしていることに気づきます。このままのルートで行くと30分で目的地に到着する。しかし、少し引き返してルートを変えると20分で目的地に到着する。そんな時、引き返す選択を選べますか?」


「また、資料を途中まで作成していたけど、別のアプリを利用して一から作り直したほうが早く資料を作れる。そんな時、途中まで作った資料を破棄して、新しい資料を作ることができますか?」


「こういった後戻りが有益パターンはいくつもあります。しかし、実際に後戻りする人は少ないのではないでしょうか?」


「では、どうして後戻りしたほうが早いと理解してもいても、後戻りを選択できないのでしょうか?」


「今回は後戻りできない心理を解説したいと思います」


「参考文献はアメリカのカリフォルニア大学バークレー校の研究となります」


「研究者は後戻りについて調べるため四つの研究を行いました」


「一つ目の研究では、コンピューター上の地図を歩いてもらいました。参加者は途中まで歩いた時、別のルートが提案されます。半数は別のルートを通ると早く目的地に着きますと、もう半数は少し戻って別のルートに行くと早く着きます、と説明されます」


「二つ目の研究では、特定の文字から始まる単語を書く、というタスクに挑戦してもらいました。この実験でも半数の参加者は、途中までタスクをこなした後、別のタスクのほうが早く終わるので別のタスクをしてくださいと提案します。もう一方は、今までのタスクを破棄してより簡単なタスクをやり直してくださいと提案されました」


「三つ目の研究と四つ目の研究は二つ目の研究を発展させたものになります。途中までタスクをやらせて、別のタスクに切り替えさせるというものです」


「合計で2524人が実験に参加しました。そして、どうして後戻りできないのか調べたのです」


「さて読者様、どうして人は後戻りという合理的な選択肢を取れないのでしょうか?」


「後戻りしたほうが早いと理解していても、後戻りすることを選べないのでしょうか?」


「面倒だからでしょうか?」


「やり直すとなるとまた一から考え直さないといけません。新しく考えるのが面倒なので、後戻りしたくないのでしょうか?」


「保証がないからでしょうか?」


「いくら、後戻りしたほうが早いと言われても、そこには証拠がありません。せっかく後戻りしたのに時間がかかった、そんな嫌な予測をしてしまうので、後戻りしないのでしょうか?」


「それとも反省が苦手だったのでしょうか?」


「後戻りするというのは、過去を振り返るのと同義です。それは反省でもあります。反省したくないから、後戻りしたくないのでしょうか?」


「はたして、後戻りしたほうが早いと分かっていても後戻りできない理由とは何だったのでしょうか?」


「2500人以上を対象に後戻りについて調べた結果、後戻りができない理由はーー」


「進捗のリセットと間違いの受け入れです!」


「まず前提として、参加者の多くは後戻りすることに抵抗や忌避感を覚えていました」


「同じタスクでも、新しいタスクに切り替えてくださいと告げる場合と、新しいタスクをするので今のタスクを破棄してやり直してくださいと告げるので、後者のほうが圧倒的に忌避感を抱いていました」


「目的に向かって歩く場合でも同じです。途中で別の近道ルートが提案されても、後戻りする必要がある場合は、多くの人が近道を選びませんでした。多くの人が遠回りルートを歩き続けます」


「ですので、人は根本的に後戻りすることが嫌なのだと分かります」


「で、研究者はその理由を調べました。その結果が進捗のリセットと間違いの受け入れです」


「後戻りするということは、進んだ分を戻すということです。せっかくの努力が無駄になる、と考えてしまうので頭で理解していても後戻りに抵抗を感じるのです」


「それが自分のミスではないとしても、努力が消えるのは耐え難い苦痛です」


「後戻りを選択するには、自分の今までの選択が間違っていたと受け入れる必要があります。間違いというのは恥であり、無力に苛まれます。自身を失ったり絶望感に打ちひしがれてしまうので、無意識に後戻りするという選択肢を取れなくなるのです」


「後戻りするには、色々と心理的なハードルを乗り越えないといけないのです。努力を無駄にする覚悟と恥を受け入れる度量

の二つが必要です。ですから、人は易々と後戻りすることを選べないのです」


「読者様も後戻りしたほうが早いと理解していても、そのまま突き進んだ経験が一度や二度あることでしょう。少し時間はかかるけど、目的地に着くことは変わらない。そんな風に思っていたと思います」


「しかし、「進む」か「戻る」か、その選択は単純な二者択一の問題ではないみたいです」


「読者様は後戻りできますか? ちなみに私はできません。猪突猛進ってことです」


「ということで今回のまとめです」


「研究者はどうして人は後戻りを選べないのか実験で調べてくれたよ。四つの実験を行って2500人以上を調査したよ」


「すると、後戻りできない理由は、進捗のリセットと間違いの受け入れだったよ」


「努力を無駄にしたくない思いと後戻りしたら自分の選択が間違いだったと受け入れることになるから、人は後戻りできないみたい」


「後戻りするには、心理的に高いハードルを乗り越えないといけないみたいだよ」


「今までの研究では途中まで行った後に、やめるかどうかの判断をするというものが大半でした。ですが今回の研究は後戻りについて調べた研究となります」


「途中でやめることについてはサンクコストや現状維持バイアスで説明できますが、途中で後戻りすることについては説明できませんでした。そういった意味でも有意義な研究と言えるでしょう」


「とにもかくにも、人は後戻りすることに心理的な抵抗があるということです」


「今回は『後戻りしたほうが早いと理解しても後戻りを選ぶことは心理的に難しい』でした。知識を集めるのは面白い」


「ありがとうございました。次は『筋トレと運動、どっちを先にやったほうが痩せるのか?』です! バイバイ」

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