1018_「死んだふり」は地域によって違いがある #生物
「偉大な功績から王族以外で国葬が執り行われた数少ない人物であるイギリスの自然科学者チャールズ・ダーウィンは『昆虫でさえ、怒りや恐れ、嫉妬、愛をその鳴き声で表現するものである』と言ってます。昆虫にだって言いたいことはあるんですよ」
「やっほー、人生を変える知識を教える世界一の美女サクラです! 今回は『「死んだふり」は地域によって違いがある』です。よろしく」
「読者様は死んだふりをしたことがありますか?」
「死んだふりと言えば、熊です。熊に遭遇した時は死んだふりをするといい、なんて言われたりします」
「まあ、実際には熊の目の前で死んだふりをするのは愚策です。熊と出会ったら熊の目を見て、後ずさりするのが正しい行動です」
「ちなみに、背中を向けて逃げるのもNGです」
「さて、死んだふりですが、実は人間以外もすることを知っていますか?」
「専門的には、擬死やタナトーシスと呼びます」
「たとえば、オポッサムやヨーロッパアマツバメ、カエル、ヘビなどが死んだふりをします」
「そして、虫も死んだふりをします」
「たとえば、キシダグモは交尾のために死んだふりをします。メスがオスを補食するクモでして、オスはメスをおびき寄せるために餌を用意します」
「オスは用意した餌にひっついて死んだふりをします。メスが餌に寄ってきた所で交尾を試します。成功したら子孫を残し、失敗したら食べられます」
「他に、ルリボシヤンマのメスは交尾から逃れるために死んだふりをします」
「色々とある虫の死んだふりですが、実は面白いことが判明しました。実は、地域によって、死んだふりのやり方が異なるのです」
「今回は虫の死んだふりの地域ごとの特色についてお話しします」
「参考文献は岡山大学の研究となります」
「死んだふりというのは捕食者に対する防御システムとして知られています」
「研究者は地理的な要因によって、死んだふりが変化するのか調べました」
「2016年~2021年にかけて日本全国38ヶ所からコクヌストモドキの死んだふりを観察しました」
「そして、各地の死んだふりの違いを調べました」
「ちなみに、調べた場所はコイン精米機です。精米機がある部屋の床や壁には昆虫が多く生息しています。なので、研究者は全国のコイン精米機を巡って、サンプルを集めました」
「はてさて読者様、コクヌストモドキの死んだふりは地域によってどのような違いがあったのでしょうか?」
「手足の伸ばしかたが違ったのでしょうか?」
「手足を上に伸ばしたり、横に伸ばすなどの違いが見られたのでしょうか?」
「心拍数でしょうか?」
「捕食者に見つかった際、できる限り存在感を消すために鼓動を遅くするなど、生理的な反応に違いがあったのでしょうか?」
「向きでしょうか?」
「仰向け、うつ伏せ、横向きなど、地域によって倒れる方向が違っていたのでしょうか?」
「はたして、死んだふりは地域によって、どのような違いがあったのでしょうか?」
「日本各地のコクヌストモドキの死んだふりを調べた結果、地域によって死んだふりのーー」
「時間が異なっていました!」
「研究者は死んだふりをしている時間をストップウォッチで計測しました」
「その結果、地域によって時間が異なることが明らかとなりました」
「具体的には、緯度が高くなると死んだふりの時間が長くなっていました」
「死んだふりの平均時間は115秒。長い個体だと1時間以上も死んだふりを続けていました」
「さらに、緯度は時間だけでなく頻度にも関係していました」
「緯度が高くなるほど、死んだふりを行う頻度も増えていました」
「どうやら緯度が高くなるほど、死んだふりを積極的に行うようです」
「どうして緯度が高くなると死んだふりが好きになるのでしょうか?」
「それは、捕食者の密度です」
「緯度が高くなると捕食者の数が減ります。しかし、それぞれの個体のサイズが大きくなります」
「そのため、被捕食者は戦略を変える必要があります。それが、死んだふりの時間と頻度だったのです」
「また、低緯度地域では待ち伏せ型の捕食者が多く、高緯度地域では活発に狩りをする捕食者が多いとされています」
「捕食者に狙われる可能性が高いので、緯度が高いと死んだふりが増えるのだと考えられます」
「読者様も死んだふりを見かけた際は、スマホを取り出して時間を計測してみてはいかがでしょうか?」
「虫以外の死んだふりも地域によって異なるかもしれません。是非、観察してみてください」
「それでは今回のまとめです」
「研究者は日本各地のコクヌストモドキの死んだふりを観察したよ」
「すると、緯度が高いほど死んだふりの時間が延びて、頻度が増えることが判明したよ」
「地域によって死んだふりの戦略が違うみたい。郷に入っては郷に従う、だね」
「ちなみに、今回の研究では死んだふりをする時間にオスとメスは関係ありませんでした」
「しかし、頻度に関してはメスよりオスのほうが回数が多かったみたいです」
「詳しい理由は不明ですが、面白い結果ですね」
「とにもかくにも、虫の死んだふりは地域によって時間と頻度が異なるということです」
「言うなれば、地域に合った戦略が生き残る秘訣、ってことです。虫にとっての金科玉条なんでしょう」
「地域の特色を無視して、身勝手に振る舞っていたら、補食されます。気を付けましょう」
「ということで、今回は『「死んだふり」は地域によって違いがある』でした。人生変わりそうですか?」
「ありがとうございました。高評価、コメント、リクエスト待ってます」
「次回の『コーヒーが糖尿病のリスクを下げるらしい』で、会いましょう! バイバイ」




