23 ボクなら大丈夫だよ。
今日の朝は暖かかった。
雨は上がっているが、地面も空気も湿っていた。
いつもの丸太ベンチも、ほんのりと湿っているので、立ったまま景色を眺める。
近くに二つの気配が現れた。
向こうにも用事があるだろうし、現れるまで何日でも通おうと思っていたが、初日に来てもらえたのは、ありがたい。
「お前さんも律儀じゃの」
「全部知ってるとは思うが確認もあるし、何より謝る事だらけで、これを済まさないと俺の気が収まらないからな。秋月様もお越し下さり、ありがとうございます」
「あらあら栄太さん。そんなに畏まらなくてもいいのですよ。気軽に霧香と呼んでくださいね」
ふんわりとした雰囲気の若い女性は、この秋月神社の主神、秋月様。
神軒町を含む、かつて秋月と呼ばれたこの一帯を治める土地神だ。
秋月霧香と名乗って、よく街中の雰囲気を楽しんでいるらしい。
そして、小柄な老人は、雫奈が静熊神社に改名する前の神社、豊矛神社の祭神だった豊矛様だ。今はここ、秋月神社で祀られている。
神軒豊と名乗って、霧香さんの付き人をしているらしい。
普段から住民と交流しているようだが、それでも、こうして俺と会ってくれるのは、特別なことだと思う。
「まずは、静熊神社の祭神が三柱となったことを報告させて頂く。とはいえ、これは爺さんも望んだことだと推測しているが、その件でひとつ謝罪させて頂きたい」
まずは、深々と頭を下げて謝罪する。
あんたの娘を犬にした……なんて事は、さすがに言いづらい。
なので、本人を呼ぶことにした。
「鈴音、こっちに来れるか」
その声に応えて、目の前にキラキラした粒子が溢れ出す。
その粒子が集束すると、シェットランド・シープドッグが現れた。
「待ってたよ、ご主人様。秋月様、豊矛様、おはようございます」
犬が人間の言葉を話し、きちんとお座りをして頭を下げる。
なんとも奇妙な光景だが、話すより見せるのが手っ取り早い。
「すまない爺さん。すでに知っているとは思うが、あんたの娘を名乗る神が、犬の姿で過ごすことになった」
豊矛様は、真顔になって鈴音を見つめる。
そりゃまあ、自分の娘が犬になって、人間の男をご主人様なんて呼んでたら、あまりいい気はしないだろう……と普通は思う。
でもまあ、これは爺さんのせいでもある……と思う。だから、激怒される状況ではないと信じたい。
推測だらけなのは仕方がない。それを確かめるのも、今日の目的のひとつだ。
「どう、豊矛様。かわいいでしょ?」
豊矛様は、鈴音に近付くと……
おもむろに抱き上げ、相好を崩して可愛がり始める。
「おー、よしよし。さすがワシの娘じゃ、可愛いのう。どうじゃ、ご主人様は優しくしてくれているか」
「うん、とっても優しいし、ボクの為に、いろいろ頑張ってくれてるよ」
「そうか、よかったのぅ。よしよしよし……」
思わず茫然としてしまったが、どうやら怒られずに済みそうだ。
しかも、その横で……
「爺や、ずるいですよ。私にも撫でさせてくださいな」
霧香さんの言葉を聞いて、鈴音が嬉しそうに、おねだりをする。
「いいよ、秋月様も、触って、触って♪」
鈴音が尻尾を振って喜んでいる。
まあ、なんか複雑な気分だが、受け入れられたのなら、それでいい。
あと何だったか、他にも謝ることがあったんだが……
「そうだった。この前、文献がどうのって聞いた気がするが、その件でも謝罪……というか、相談させて頂きたい。三柱の姿なんだが……」
そう言いながら、ケータイの画面を見せる。
秋津静奈姫、秋津結茅姫、秋津狛音姫のカラーイラストだ。
「ほう、よくできておるの」
「まあ、可愛らしいですね」
概ね好評そうで、その点は良かったが、文献と摺り合わせる必要がある。
「多少の違いはあるが、これが向こうでの三人の姿だ。三姉妹とかいう設定も含めて、あまり文献とかけ離れてたら不味いかと思ったんだが。特に、長女のシズナヒメが一番幼く見えることとか、金髪だったりピンク髪だったりとか、何か問題があれば、イメージを修正する必要があるので、意見を聞かせてほしい」
「それほど気にする必要はありませんよ。文献なんて割といい加減なのですから。別のモノと取り違えられたり、姿絵もただの想像だったりするのですよ」
秋月様が言えば説得力が違うが……
「まあ完璧に同じにする必要はないが、三姉妹が土地神として静熊神社に祀られている正当性、なんてものがあると心強いんだが」
「三姉妹で済めばいいがの。今後も増えたら、どうするのじゃ?」
「……怖い事を言わないでくれ。さすがにもう増えないと思ってるんだが。まあ増えても、別の枠組みを考えればいい。別に兄弟姉妹である必要もないからな」
「ふぉっほ、そうじゃのぅ。何か手を打っておくとしようかの」
「ありがとうございます」
よほど気に入ったのか、そんなやりとりしている最中も、鈴音のことを可愛がっている。
鈴音もご満悦だが、ここまで来たんだから、一応アレも披露しておこう。
「鈴音。人型も見てもらえ」
「そうだね、ご主人様」
地面に降りた鈴音がキラキラ粒子を使って変身する。
よかった。ちゃんと服を着ている。……けど、なんで犬耳と犬尻尾を付けた?
素足にスニーカーもどうかと思うが、それは鈴音っぽい感じがする。
「どうかな。変じゃないかな」
自分の状態をチェックしている鈴音に、霧香さんの目が輝いた。
ガバッと抱き付く。
「かっ、可愛いのです。すっごく、可愛いのですよ。やっぱり、目の前で見ると違うのです。ねぇ、栄太さん。この子、私に下さい。一生大事にしますから」
「ほほっ、これはまた、文献を作り直さねばいけませぬな。秋月様」
どうやら秋月様は、獣人属性がツボらしい。
そのうち雫奈や優佳にも、獣人コスプレをさせるのも楽しそうだ。
もちろん、秋月様に喜んで頂けるように……だ。
「喜んでもらえて良かったな、鈴音」
「うん、みんなが笑顔でボクも嬉しい♪」
なんとなく大丈夫だとは思っていたが、これでやっと安心ができる。
そういえば、どうしても聞きたかったことを思い出した。
だが、先にこの話だ。
「爺さん、この子の名前、俺が付けさせてもらったが、本当に良かったのか? それに、爺さんの名前も勝手に拝借したんだが」
「な~に、構わんよ。ワシより立派な名じゃが、良い名じゃと思うぞ」
「まあ、爺さんの娘だからな。立派な神様になってくれると信じてるぞ」
「うん、任せて。立派な神様になる」
霧香さんに頬擦りされながらも、鈴音が元気に答える。
「ところで爺さん、鈴音に俺の事をご主人様って呼ばせているのは、どういうつもりだ。できれば、改めるように言ってもらいたいんだが。俺が言っても、全く効果が無いからな」
「栄太をご主人様のように慕えと言っただけなんじゃがの。でも、別に悪い気はしとらんじゃろ?」
「他人に聞かれなきゃ別に構わんし、犬の姿ならあまり違和感を感じなくなった。だが、人の姿で、他人がいる前で言われるのは、変に目立って困るんだが。この前も美晴に、犯罪者呼ばわりされたし」
その美晴は、結局、全てをイリュージョンだと思ったようだ。
俺は内緒話をしていて知らなかったが、お守りから犬が出てきた時、美晴は「本物の鈴音が出て来た」と大はしゃぎだったらしい。
結局、犬は俺からのプレゼントで、それを模してお守りを作ったって話に落ち着いた。犬は神社で飼うと伝えてある。
どうやら美晴は、犬もお守りもよほど気に入ったようで、鈴音の代わりにお守りに話しかけたりしているらしい。
「まあ、そうじゃの……。ちょっと鈴音や、よいか? 栄太はお前のご主人様じゃが、どうも照れ屋での、ご主人様って呼ばれるのが苦手らしい。じゃから、別の呼び方をしてやってくれんか」
「えー、ご主人様なのに、ご主人様って呼んじゃダメなの?」
何度も俺が、そう言ってたんだが……
「う~ん、じゃあ……、シズ姉、ユカ姉、ミハ姉だから……エイ兄は、どうかな?」
邪気の全くない、澄み渡ったような目で、期待を込めて見つめられたら、反論などできようはずがない。……いや、反論する気はないが。
「よし、それで頼む」
なんだかよく分からないが、鈴音は大喜びだ。
とりあえず、今日の用事は全部終わった……と思う。
それに、結構長居をさせて貰った。
鈴音を残して先に戻ってもいいかと思い始めた頃……
何かの異変を感じ取ったようだ。……鈴音が。
「ご主……エイ兄、行かなきゃ」
秋月様と豊矛様も何かを感じ取ったようで、笑顔のままうなずいている。
どうしたものかと迷ったが、鈴音が早く行こうと催促してくる。
「それじゃ、霧香さん、爺さん、失礼します。今日はありがとうございました」
「またいつでも、遊びに来てくださいね」
多分、霧香さんの言葉は、鈴音に向けられたものだろう。
「栄太よ、お主は人じゃからの。決して、無理するでないぞ」
「はい。それでは失礼します」
俺は、二人に頭を下げると、鈴音のあとを追いかけた。
アパートとは逆の方へと走る鈴音を追いかける。
「ちょっと待て、鈴音。どこへ行く気だ」
「もうちょっと、池で溺れてる」
こんな所に池なんてあったか? ……と思いつつも追いかける。
確かに池はあった。
それも、そこそこ大きな池だ。
池の周りをブロックで固められているが、あまり整備がされていないのか、泥だか苔だが、なんだかよく分からないもので汚れている。
たぶん、滑って足場にはならなそうだ。
たしかに、何かが溺れていた。
だが、人間にしてはサイズが小さい。
水藻か何かに絡まれているのか、暴れているが、姿がよく確認できない。
「鈴音、ちょっと待て」
ひと呼吸遅かった。
鈴音が飛び込んだ。
確か、ため池に落ちたら危険だと聞いたことがある。
詳しい事は思い出せないが、一度入ると、なかなか出られないとか。
何か使えそうなものがないか探してみる。
ロープでもあればいいのだが……
やばい、どうする?
雫奈か優佳を呼ぼうか……
だが呼んでどうする?
頭の中でグルグル思考が回転しているが、ほとんど空転しているようだ。
俺が飛び込むのは絶対にダメだ。
どうしようかと悩んでいると……
「エイ兄、受け取って!」
鈴音の声に我を取り戻して視線を向けると、何かをこちらに投げて来た。
バスケットボールほどあるだろうか。
飛距離は十分で、難なくキャッチできた。
どうやら犬のようだ。子犬だろうか。
いや、それよりも、鈴音はどうやって戻るつもりだ?
「どう、エイ兄。この子、大丈夫そう?」
すぐ近くで、鈴音の声がした。
……なるほど。例のキラキラで跳んだんだろう。
「ったく、鈴音。お前が溺れたらどうしようかって、焦ったぞ」
「ボクなら大丈夫だよ。心配させて、ゴメン……」
「別に怒っているわけじゃないぞ。お前自身が絶対に大丈夫だっていうなら、何も問題はない。それに、命を救ったんだからよくやった」
優しく頭を撫でてやる。
やっぱりと言うか、頭も身体も服も、全く濡れていないようだ。
本当に良かった。
冷静に考えれば、そんなに焦る必要はなかった。
こいつらが、そんなヘマをするはずがないし、そう簡単にくたばったりしない。
未だに俺は、姿に惑わされて、本質を理解できていないようだ。
とにかく、子犬を抱きかかえたまま、ため池から遠ざかる。
フェンスは道路に面したほうだけで、俺たちが来た裏側には無かった。
少し広めの農道に出ると、子犬の状態を確かめる。
さっきから動いているので、生きているのは間違いないが、どうだろうか。
「生きてるってことは分かるんだが、大丈夫かどうかは俺には分からんな……。鈴音、分かるか?」
「ちょっと見てみるね」
そうだ。見るという手段があった。
俺は農道に座り込むと、落とさないように子犬を足の間に乗せ、視界を切り替えて観察する。
やはり、人間以外だと魂が見えないようだ。
ならばと、この子犬の魂だけ、見えるようにと調整……つまり、思い込む。
どうやら成功したようだ。子犬の魂が現れた。
数値は五十八とやや黒に寄っているようだが、ケガレや呪いはないようだ。
視界を戻す。
「どうだ鈴音。何かわかりそうか?」
「う~ん、寒いみたい。あと、お腹が空いてるのかな。怪我や病気はないみたい」
俺は、地蔵の掃除用に持ち歩いている布と、着ていたシャツを提供して、子犬の身体を拭いてやる。
汚れた布をビニール袋に放り込み、子犬を俺のシャツで包んで、そっとカバンの中へ入れる。口は半分ほど開いて、抱きかかえるようにして、秋月神社の方へと向かう。
その近くなら店も多いし、ペットショップもあるだろう。時間が早いので、開いているか分からないが、最後の砦のコンビニもある。
「鈴音、買い物は出来るか?」
「うん、もちろん。……お金はないけど」
「金なら俺が出す。この子が食べても平気なものとか分かるか? できれば、温かい飲み物もあればいいんだが……」
「任せて」
いきなり走り出そうとする鈴音を引き留める。
「待て、慌てるな。まだ店が開いてるかも分からん」
「売ってる場所も、値段も分かるよ」
やはり見た目で惑わされているようだ。
これでも鈴音は土地神だ。
精霊に聞くなり、何かよく分からない手段で、調べられるのだろう。
言われた金額より多めに渡す。
「じゃあ、エイ兄は、秋月神社で待っててね」
「おう、頼んだ」
まあ、俺が買いに行っても良かったのだが、おそらくかなりドブの匂いが染み付いていると思う。
子犬をキャッチした時に、かなり飛沫を浴びた。
そんな奴が入店したら、店も迷惑するだろう。
鈴音に買い物ができるか不安だったが、結果的に俺が行くよりも良い物を揃えてきそうな気がする。
なんせ、何の知識も無い俺が行っても、細かくジャンル分けされたペットフードから、的確なものを選ぶのは至難の業だろう。
どうやら、鈴音はまだのようだ。
代わりに、爺さんが出迎えてくれた。
やっぱり、この爺さん、動物好きのようだ。
「スマンな、爺さん。また厄介になる」
「な~に、構わんよ。娘の頼みとあらば、何事よりも優先させるのが親の役目じゃろ。どれ、ワシに見せてみよ」
鞄の中から、シャツに包れた子犬を取り出す。
「鈴音の見立てでは、寒さと飢えがあるそうだ。湯の出るシャワーでもあればいいんだが……」
「そうじゃな。ついでに栄太も身体を洗うがよい。さすがに、そのまま帰すわけにもいかぬからな」
「今、鈴音に子犬のメシを買いに行かせてるんだが?」
「それも全部、ワシに任せるがよい。な~に、悪いようにはせんよ」
なんだか分からないまま、建物の中に通され、浴場にまで来てしまった。
寮のような場所だろうか、四、五人は一緒に入れそうだ。
今は木製の湯船は空だが、シャワーが使えるだけでもありがたい。
身体や髪を洗って、しっかりと臭いを落とし、さっぱりして脱衣所に戻る。
驚いたことに、俺の服が置いてあった。
汚れやシミがなく、洗濯したてのように綺麗な状態だった。
もちろん、ドブ臭もない。それどころか、なんだかいい香りがしている。
カバンもそうだが、子犬を拭いた時に使った布まで綺麗になっていた。
当然、人の手によるものではないだろう。だが、ありがたい。
浴場を出ると、鈴音と爺さんのいる方へと向かう。
一緒にいるのは、たぶん子犬だろう。
建物は、お客用だろうか、それとも寮なのだろうか。いまいち判別できないまま、玄関で靴を履いて外へ出る。
「爺さん、ありがとう。さっぱりしたよ」
「それはよかった。ほれ、こやつもこの通り元気じゃ」
「見違えるように綺麗になったな」
すごい勢いで、ガツガツ食べている。
「よっぽど腹が減ってたんだな。……もう大丈夫そうな。お手柄だったな、鈴音」
頭を撫でてやると、嬉しそうに目を細める。
……って、そういえば。
「まさか鈴音。その姿で店に行ったのか?」
「うん、そうだよ。なんかね、可愛いからってオマケしてくれた」
「そりゃ良かったが、出来れば他人が見ている前では、耳と尻尾は外そうな」
「えー、ダメなの?」
ダメってことはないが、目立ち過ぎたらロクなことがない。
……というのは俺の勝手な妄想か。
それが原因で、変なことに巻き込まれたら可哀想だが、その程度のことなら、自力でなんとかするだろう。
答えに窮していると、爺さんが助け舟を出してくれた。
「鈴音よ。それは皆に喜んでもらうために付けておるのじゃろ?」
「うん、みんな笑顔になるよ」
「じゃが、毎日付けて、それが当たり前になったらどうじゃ。皆が喜んでくれると思うか?」
「う~ん、どうかな。みんな飽きちゃう?」
「飽きる? ……そうじゃな。新鮮味が無くなれば興味を持たなくなるやも知れん。だからじゃ、それはここぞという時に付けて、皆を楽しませればいい。ワシの言ってる事、分かるか?」
「うん、分かった。ここぞって時だね」
「じゃがまあ、ワシらや栄太たちがいる時は、付けていても構わんじゃろ。それに、秋月様がいる時は、付けて見せてやってくれ」
「はーい」
いい返事だ。
それに、鈴音に納得させてしまった。
さすが爺さんだ、とても俺には真似ができそうにない。
「なあ爺さん、その子犬、どうする? 元気になったなら、元の場所に戻してきてもいいが……」
「どうやら、野良のようじゃし、まあ、後の事はワシに任せておけ」
「ああ、じゃあ……頼みます」
さてと、思わぬ時間を食ってしまったが……
「俺はそろそろ戻るが、鈴音はどうする?」
「う~ん、ボクもエイ兄と一緒に帰るね。みんなが心配するからね」
「まあ、その時は、俺が散歩に連れて行ったことにすればいい」
子犬が飲んでいるのは水のようだ。
美味しそうにバシャバシャ飲んでいる。
「じゃあ爺さん、失礼するよ。今日はいろいろ助かった」
「構わんよ。これもまた運命じゃからの」
お辞儀をして、別れを告げる。
歩き始めると、犬の姿になった鈴音が横に並んできた。
そういえば、散歩にしてもリードが無いと怪しまれそうだ。
……なんてことを思っていると、鈴音が口に加えたものを渡してきた。
「ゴメン、エイ兄。渡すの忘れてた」
紙袋を開けてみると、中には新しいリードと首輪、それにお釣りが入っていた。
「あれっぽっちのお金で、こんなに買えんだろ。どうしたんだ?」
「うん。首輪とリードは、豊矛様からのプレゼントだって」
「そうか。お礼を言いそびれたな」
「ボクがちゃんと言ったから大丈夫」
出てきたのは、シンプルだがワンポイントが可愛い首輪と、リードだった。
早速付けてやったが、鈴音の為に作られたのかと思うほど似合っている。
「ホントに爺さん、娘の事もだが、動物の事も好きなんだな……」
そんなことを思いながら、鈴音と一緒に静熊神社へと向かった。




