表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/19

お呼び出し

 翌朝、執事のモートン様が、私を呼びだした。


「昨日はご苦労だった。ダグが感謝していた」

 僕は無言で一礼。謝意を示す。



「日本へ行け」

 いきなりの言葉。

「はい」

 とは言え、僕には選択の余地などない。迷う必要はなかった。

 ワイルドバンチのためなら、いつ、いかなる時でも命を捨てる覚悟で行動する。

 僕の魂レベルに刻まれた命令だ。



 ただ、疑問は感じる。なぜ日本へ。

「ミシェル様がお前を必要としている」

 僕の胸の内を読んだように、モートン様が言った。

 ミシェル様。

 ジョージ様の次男。

 今は日本で新しい市場の開拓を行っていると伺っていた。



「戦う兵士が欲しいと仰せだ。ただし、銃は使えない」

 銃なしが条件、となれば僕が選ばれることには納得がいく。

 ふと、モートン様が郷愁に満ちた表情を見せた。

「父親が生きていれば、あの男にまかせた仕事だ」

 僕の父さん。

 僕がワイルドバンチに身を寄せるきっかけとなった張本人。

 そう言えば、モートン様は、父の戦友と聞いている。

 銃なしの条件だったら、本来は父さん、もしくは姉さんの仕事だった。

 生きていれば。

 ならばなおさら、これは僕の仕事だ。


 三年前。

 父さんと姉さんは、南米の組織との戦争で死んだ。

 今でも覚えているのは、怪我をして立てなくなった僕を置いていく時の笑顔。

「無駄死にはするな。全力で戦えなくなったら、後ろへ退がるのは当たり前だ。なあに、元気な俺たちにまかせておけ」

 姉さんも一緒に笑っていた。

「さあ、雲雀。行くか」

「うん。じゃあ、燕、行ってくるよ」


「はい。父と姉の代わりは、私が務めます」

 僕にできるのは、その務めを果たすことのみ。

「頼む。負けるとしても、不名誉な負けだけは許されない。いいな」

「信頼、必ずお応えします。そして、ワイルドバンチの名誉を汚すことはありません」


 一礼。


 チケットと指示書が差し出された。

「身なりも整えていけ。ウォーリックにも伝えてある」

「はい」

 もう一度、一礼して受け取った。


 僕はそのままモートン様のお部屋を出て、自室へと戻る。

 レザーのトランクに生活品一通りと、愛用の刀を用意する。


 部屋を見回す。

 ひょっとすると、ここには、もう二度と帰ってこれないかもしれない。

 調度品と呼べるほどのものもない部屋。


 ベッドと鏡台。ゲーム用のPCとデスクと椅子。

 唯一の飾りはPCのモニターの前に立つ、黄色い鳥のぬいぐるみ。

 僕はそのぬいぐるみに声をかける。

「留守番、よろしくね。ラッピー」


 僕は屋敷を後にした。

ラッピー、可愛いですよね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ